藍田弥哉樹劇場 -その1-
『戦え!旅行企画部!!』
ここは某所、私立白玉学園高等学校。
何処にでもありそうなこの女子校の中で、今、大変なことが起ころうとしていた—。
狭い部室内に、ところ狭しと積み上げられた雑誌、その真ん中にぽつねんと一人陣取り、
海苔醤油せんべいをボリボリかじりながら、漫画雑誌を読んでいるノーテンキな奴、桜田
希里。
肩まで伸ばした髪を無造作にばらしている。
彼女の肩書きは、『旅行企画部・部長』である。
旅行企画部とは、その名の通り、旅行の企画をする部活動だ。しかし企画はしても別に
行くワケではない。
ただ単に旅行のプランを立てて楽しむだけ、というあるイミ、とっても空しい活動内
容で、ある。
しかしこの桜田がそんな事をマジメに(?)行うワケがない。
今日もいつも通り、週刊誌を読みふけっていたのだが—
「部長っっっっ!大変ですぅぅぅっっっ!」
耳をつんざくような大声と大音響と共に部室に駆け込んできたのは、一年の細田良。あ
ごのラインでバラバラに切った髪を振り乱し、その表情には鬼気迫るものがあった。
あまりの声の大きさに、桜田は思わず吹き出しそうになる。
「なっ・なんなんだよ!藪から棒にっっ!」
怒鳴りつける桜田をものともせず、細田は続けた。
「ウチの部費と部室がなくなっちゃいますっっっ!」
・・・・・・・・・・・。
「・・・は?」
何言ってんだ細田、桜田の顔はそう言っていた。
「・・・今、部長会で、突然あの会長の下僕A・・・じゃなかった・書記の財前陽子が来てこ
んなモノをっっ・・・!」
泣き崩れる細田の手には『新・生徒会規約』と書かれた分厚い冊子があった。
桜田は細田の手からそれをひったくり次々にページをめくっていった。
「ああああっっっっっ!こっ・これわっっっっっ!」
不意に桜田の手が止まった。
”第十二条:部活動は部員5名以上、顧問一人以上がそろって成立とし、それ以下の人
数での活動に置いては部として承認されず、同好会扱いとし、援助金は出ないものとし、
また部室の使用も認められない。
「・・・うちって・・・部員、ウチらだけ・・・だったよ、・・・ねえ」
「・・・私の記憶違いでないならば、私達だけです」
一言。
「・・・うちって顧問、いたっけ?」
「見たことありますか?」
なぜこんなに冷静でいられるのか・・・・・!!
「ほぉーそぉーだぁーっっ!何か考えろぉっっっ!」
はっ。
桜田は直感した。
—ま・まさか藤川・・・あのことで・・・?
「部長!自分だって何が考えてくださいよ!何考えてんですか?」
突然黙り込んだ桜田に、怪訝な顔で細田が問いかける。
「どぉなさるおつもりですかぁ?」
半分諦め入った顔で細田がげんなりとする。
「知らん」
どきっぱり。
「・・・んな無責任な・・・」
あまつさえ部長会に代理を行かせるような無責任女である。元々責任なんか感じていな
い上に、とくにこの部がなくなって困るワケでは・・・・・。
続きは次週ってことで・・・・ぐはあっ(吐血) by 管理人
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