幌より雄冬岳まで


 増毛山道の浜益側の入り口は幌村の幌稲荷神社のすぐ右脇から登り始めている。この付近にはまだ微かに道跡らしき踏み跡が残っているが、1キロほども登るともう身の丈を越す熊笹に覆われていて道は消えている。幌からの道は緩やかな広い尾根を、通称大阪山とよばれている533・3メ−トルのピ−クを越えて浜益御殿(1038・6メ−トル)に至り、一度898メ−トルのだだっ広い鞍部へ下り、雄冬岳の南東斜面を巻き、武好橋へと続いている。大阪山付近一帯は開墾地化されており、またこの辺は山菜のとれる地帯でもあるので、増毛山道がそのまま林道として利用されている部分もある。


雄冬岳から増毛方面を望む。中央の山腹に、微かに
   増毛山道の道跡が見える。


幌側の入り口。幌稲荷神社。
道は鳥居の右側からついている。
  しかし大阪山から上は部分的に道はかすかに残っていてもほとんどが消えている。浜益御殿山頂付近に僅かに道形が残っているが、ここから雄冬岳までの道は又深い熊笹に覆われている。
  明治39年6月から同40年6月にかけて、この増毛山道沿いに17箇所、当時の陸軍参謀本部陸地測量部の手で一等水準点の選定が行われ埋石された記録がある。その「点の記」によると、No8462と記された浜益御殿山頂直下の一等水準点1037・8150メ−トルは、通称牛石(ベコイシ)と呼ばれた大きな石の脇に埋石され、この水準点は現存する北海道の水準点としてはいまだに最高地点としての水準点として記録されている。(因みに一番低い水準点は野付郡別海村走古丹伏古遠太に明治36年に埋石された一等水準点No7619で、高さは0.9944米である。)
  
 この記録の情報を得て私たちは国土地理院、札幌三角点の会の皆さんの協力で平成7年5月14日、遂にこの北海道最高地点の一等水準点を約80年ぶりに探し当てた。 
 これは、かって伊藤秀五郎氏が記した「北海道で一番高いところを通っていた山道の一つである増毛山道」を最も象徴する一等水準点の発見であった。
 平成4年10月22日、岩尾の増毛寄りにある歩古丹(アユミコタン)と別苅間のトンネル工事が完成し、長年冬季間不通であった国道231号が貫通した。
今では幌、別苅間は車で約20分の距離である。しかし伊藤秀五郎氏の文にあった「北海道では一番高い千米以上の唯一の峠」がいまや荒れるに任されている姿を見たとき、もう一度この増毛山道に光を当ててみたい、と思う日々である。                  (完)
 
 


幌稲荷神社付近の山道跡


水準点として北海道最高地点を探し当てた

 
戻る
戻る