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(2003.11.12)
ソレを拾ったのは、いつもの気紛れだった。 大抵、仕事が上手くいかなくてイライラした時には、俺は散々飲んだくれて喚いて、周囲に迷惑をかけて、体中のもの全部絞り出して、電柱にパンチして、勝手にknockoutされて、いつの間にか朝になってて、何故かいつもちゃんとベットに寝ていて、そして何かを拾ってきている。 それはある時は工事中の看板だったり、居酒屋の提灯だったり、女物の下着だったり、サトちゃんだったりするわけだが。 「おはようございます。」 「・・・イキモノ?」 びっくりした。目の前には人間のオスが居て、挨拶をしたのだ。今まで色んなモノを拾ってきたが、そう言えば動いている生モノを拾ったのは初めてだった。 目の前にいる彼は、俺の言葉の意味が分からないという風に首を傾げて、俺の顔をじっと見た。俺もじっと見る。 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 どうしたもんか。 そう思ったら、彼の方から口を開いた。 「あの・・・。」 「何?」 「お腹減ってませんか?」 とたんに、俺の腹が盛大な音を立てて鳴った。俺は食欲と性欲と睡欲には、正直な男だ。 「なんか、ハチくんって野生動物みたい。本能で生きてるっていうか。」 そりゃケダモノだろ!と自分でツッコミを入れようとしていた所にそう言われて、ガクッと身体が落ちた。俺のそんな行動にも動じずに、彼はにっこり笑って食事にしようと言う。 勝手知らない人んちのキッチンに立って、彼は手早く朝食の用意をした。あまりに手際が良かったので、一瞬、別れた女どもの顔を思い浮かべたが、どれも気が強く、キッチンでメシを作ってくれるような殊勝な女は浮かんでこなかった。
「そうなの?」
「知ってんの?(俺が拾ってきたって)」 |
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