一人ぼっちのバイオリニスト

無伴奏曲の伴奏

いつも一人でした。
ただ、いつも一緒に
このバイオリンが僕の心を歌ってくれていたんだ。

だから寂しくなんかない。
そう思ってた。
一人でも演奏は出来る。
ちょっと格好つけて一人で無伴奏を弾き続けていた日々。

だけど、
ある日突然、君が現れたんだ。

僕が無伴奏をいつものように弾いていると、
突然ピアノの伴奏がつけられた。


それはどれほどの衝撃だった事だろう。
いつも一人だった。
一人でも演奏は出来ると思ってた。
けれど、本当は
寂しかったんだ。
誰かと一緒に演奏したいって思ってた。
誰かと一緒に音楽を分け合いたいって思ってたんだ。
でも、格好悪いからって表には出さなかった。
その僕の心を、ピアノはいとも簡単にすくい上げた。


君となら素直になれる。
音楽に寄り添うように、
素直になれるんだ。

だから、
僕はもう一人じゃなくて、
無伴奏も、無伴奏じゃないんだ。

無伴奏曲に伴奏を…。

君がピアノを弾き始めたのは、
君も同じ事、考えていたからなんだろうな。

でも、それはお互い言わずにいよう。
いつか音楽を通して僕から奏でよう。

一人ぼっちのバイオリニストにサヨナラ出来るようにね。





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