タイトル

うつぼ先生

作 者

Rionさん

うつぼ

鉛筆

プレゼント

山道

花畑


やえはお部屋の窓からお外をながめてた。
むかいのおうちのミミちゃんちのお庭がみえる。
今年も又赤いユリのお花さいてるんだ。ミミちゃんのママは
去年お星様になっちゃったけど、お花は又咲くんだな、すごいな、お花って。

ミミちゃんはやえより2つ年下で、おなじピアノ教室にかよってる。
あるいて30分もかかる先生のおうち。やえはあんまりピアノすきじゃなくて
いつもうつぼ先生におこられてる。どうして
うつぼ先生っていうのって
教室の田中くんにきいた。先生にきこえるからって、
鉛筆で、ノートにさかなだよって。
パパから誕生日の
プレゼントの百科事典でお魚、しらべたんだ。
そしたら、やえ笑っちゃったよ。先生のおこったお顔にそっくりなんだ。
いつもおこられてばかりで、やえ、あんまり先生のことすきじゃないんだ。

今日はピアノの日。ミミちゃんといつもいっしょにいく。
30分っていっても長いんだ、これが。テレビでみた、はじめての
おつかい、みたい。ミミちゃんはしっかりしてるから。やえはたすかるよ。
神社の裏の細い
山道をずっとのぼっていく先生のいえ。
半分くらいのぼったとき、ききーって車が止まる音。
やえはびっくりして後ろをみた。また、おおきな音をたてていなくなった。
よくみると子犬ちゃんがひかれてる!
あわててちかよると、はあはあ息して足からたくさん、血がでてる。ミミちゃんないちゃった。
ミミちゃん、先生のとこいってて。やえ、びょういんつれていくから。
だっこする手も足もがたがたふるえてる。でも、やえがしっかりしなきゃ。

どうぶつ病院までどのくらいだろう、しんじゃうのかな、
茶色のちいさな子犬さん、がんばって。しんじゃだめだよ。

ぷぷって車の音。あ、うつぼ先生!のって、早く。やえはあわてて車にのった。

子犬ちゃんが手術してる時、先生は何度もやえにいった。大丈夫だから。
やえはまだ、がたがた体がふるえてた。

ドアがあいて、どうぶつの先生が子犬を抱っこしてでてきた。
きりきずだけだから、あんせいにね。
やえは体がふっとかるくなって、でもいきなり涙がたくさんでてきて
うまれてはじめてたくさん泣いた。うつぼ先生が、うちでかおうかなっていった。

次のピアノの日、子犬ちゃんが心配で早くいった。ミミちゃんも。
先生の大事にしてる裏庭の
花畑でとびはねてるわんちゃん!
元気になったんだね。あれ?先生、お花だめになるよ、いいの??
お花はねっこがいきてれば又きれいに咲いてくれるから。
そっか。

やえは少し先生がすきになった。でも、おこんないでね。