スイスのチューリッヒにあるユング研究所でなされた講義録をまとめたもの。ここでは、世界各地から採られたいくつかのおとぎ話において、「鳥」がどのような役割を果たしているかということが中心に語られている。
扱われているおとぎ話としては、「白い鸚鵡」(スペイン)、「バジャードの浴室」(ペルシア)、「ハッサン・パシャ王子」(トルキスタン)、「花のさえずりをする鳥」(イラン)、「小夜鳴鳥のギザール」(アルバニア)、「ヴェームスの鳥」(オーストリア)、それにこの本ではあまりにも一般に普及している話としてテキストが示されていない「黄金の鳥」(グリム童話)である。いずれもモティーフは共通していて、主人公がいくつかの難事を成し遂げなければならないのだが、そのなかに「美しい鳥を捕らえる」という課題が含まれているということである。この本の特徴は、そういった一つ一つのおとぎ話に表れるモティーフの象徴的な意味について、イメージを膨らませていくのみにとどまらず、大枠では共通しながら差異のあるおとぎ話がいくつもある理由についても考えられている点であろう。
邦訳されたフォン・フランツの単行本のうちでは最も入手困難。