駅のトイレ、試練の時
たまにある話。
私は出勤前に朝飯はほとんど食べない。
朝飯を食べて通勤電車に揺られると、必ず腹痛を起こすのだ。
誰もが経験あるんじゃないだろうか、満員電車の中の腹痛は耐え難いものがある。
私の場合、ガマンにガマンをしていると、そのうち貧血に陥る。
腹痛に貧血、この世の地獄である。
しかたなく途中下車し、駅のトイレへフラフラになりながら、やっとたどり着く。
するとトイレは清掃中で入口を閉鎖している。
私はショックでその場にへたり込んでしまう。
だが、だんだん怒りがムクムク湧いてきて
「バカヤロー。何でこんなに人が多い時間帯に掃除してるんだ。てめーの仕事の効率だけ考えてるんじゃねーか。ここは公共の場なんだよ、てめーが独り占めにする権利はなーい。もっと空いてる時間にやれ。それに閉鎖しなくたって掃除はできんだろーが。」
と、わめき散らしたいのだが、私は紳士なのでぐっとこらえる。
こらえられないのが腹の痛み。
ここで少しでも気をゆるめたら、私のダムは決壊し、
罪の無い人々をも巻き込み、
周囲は修羅場と化すだろう。
神は私に試練お与えになった。
私は試されている。ここで耐えなければ男ではない。いや、人間ではない。
ベンチに座り、なんとか貧血だけは治まった。再び地獄の満員電車へ突入する。
民よ、私に触れるな。押すな。
押すなッつーの。
神の恐ろしいたたりが待っておるぞ。
この腹痛というものは周期があり、激痛の時間と治まってる時間が交互にやってくる。
それが、時間が経つごとにだんだん周期が狭まってくる。
似てるものを連想した。
ピポーン ピポーン ピポン ピポンピポンピポンピポンピポピポピポ・・・
そう、ウルトラマンのカラータイマーだ。
ウルトラマン、がんばれー。
もう少しだー。
地球の平和を守りきれー。
そして、なんとかトイレへたどり着く。
目的地が近づいてくると気が緩むのか、今まで耐えていたダムの壁に亀裂が入り、秒読みが始まる。
10・・・9・・・8・・・トイレのドアを開ける。
7・・・6・・・5・・・ベルトを外す。
4・・・3・・・2・・・ズボンを脱ぐ。
1・・・・・パンツに手をかける。
0
ピッ
壁は破れ、怒涛の泥流が流れ出る。
しかし、なんとか民たちを救うことはできたようだ。
私自身は傷を負ってしまったが。
パンツの底に茶色のシミが。
私は名誉の傷を負った戦士。
誇りを持ってコンビニへ行こう。
パンツを買いに。