92.ヤジロベエの思想  

2003.8.10
   

(掲示板からの抜粋です)

私は社会自体が冷静に考える力を失っているのではないかと思うのです。

小泉純一郎という大衆政治家が一国の首相になってからこの傾向はますます激しくなったように思います。竹中平蔵の起用に際してもそうです。信憑性が確かめられてもいない経済学説にのって、盲目的にそれを実行していく。それが恐いのです。

私は人間の世の中というのはもうちょっと複雑だと思うのです。いろんなものの錯綜する人間の世の中を一つの論理で切ってしまおうとするものがイデオロギーというものですが、このイデオロギーというものに私は飽き飽きしています。

世の中はそんな単純なものなのでしょうか。

しかも困ったことに世の中を単純にしかとらえきれない者の論理が、論理としては一番強いという逆説が今、表面化しているのです。これは危ないことです。

天の邪鬼というものがあります。必ず人と反対のことをするひねくれ者のことだととらえられていますが、私はそうではないと思います。私はそれをバランス感覚だととらえています。

世の中全体が右の方へ傾けば、無理を承知で一人だけでも左へ行ってバランスを取ろうとする。左へ傾けば、一人だけ右へ行ってバランスを取ろうとする。『ヤジロベエ』のようなものです。

二つのものがバランスを取り合って一つの安定を維持しているという考えは、ヘーゲルの『弁証法』にも通じるものだと思います。日本人は、『弁証法』などという難しい言葉を使わなくとも、それをちゃんと知っていたのだと思います。

今それが崩れているのではないのでしょうか。それが一番恐いことです。




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