少子化は教育対策

     

2006.6.11  


少子化が止まらない。
この傾向は、政府が男女共同参画社会なるものを立ち上げてから、ますます激しくなっているのではないか。

いかなる社会も男女の社会的分業の概念を持たない社会はない。
ところが、日本の男女共同参画社会だけは、この分業の概念を明確に示したことがない。

女性は、産んで、かつ働くことを要請されている。
もともとこのことがそう簡単に実現できるわけはないのである。
それがそう簡単に実現されるものではないから、多くの社会が男女の分業を自然発生させてきたのである。
そのことが文明が進んだからといって、そう簡単に変わるわけはない。

バカなことをいうようだが、本当にこれを実現させるためには男も女も子供を産めるようにならなければならない。
女と同じ生理的機能が男に備わらなければならない。
それが究極の解決法である。

労働力不足の解決のため、女性の労働力を市場に刈りだそうとするから、働くことを優先した女性は、子供を産めなくなる。
子供よりも仕事を優先する女性が増えていけば、当然出生率は低下する。
私には簡単なことのように思える。

育児を女にばかり任せないで、男も手伝え。
それをいうなら男に女と同じ生理的機能を与えなければ、子供がかわいそうである。
生理的にもまた精神的にもである。

育児というのは非常に母性的・具体的なものである。
それに対して職場というのは非常に父性的・抽象的なものである。
この両者のあいだの精神構造を、どのように社会構造に結びつけて整理するか。
そのようなことまで政府は考えているのか。

もし考えていないとしたら、それは現実に生きる1人1人に下駄を預けているということであり、現実に生きる人々は自分の生理と社会政策とのあいだで自己を引き裂かれ、不安定な日々を送るしかない。

もともとこの発想は社会的に非常に恵まれた女性たちのあいだでひろまった。
女性大学教授とか、女性政治家とか、女性作家とか、女性評論家とか、そのように自分の職業と育児を両立しえた、一部の社会的に恵まれた女性たちのあいだにひろまったものであり、彼女たちの社会的地位の向上をはかるために出てきたものである。
そして夫婦別姓論と歩調を合わせて出てきたものである。
今、男女共同参画社会を担当している猪口邦子大臣が、もと大学教授だったことを考えてみるとそのイメージが良くつかめると思う。
彼女がいかにピントがづれてるか。

彼女たちのように恵まれたステイタスの人々はよいが、
多くの女性は働くか、産むかの二者択一を迫られているのであり、そこで多くの女性が働く方を選択している、ということなのである。

男も育児を手伝え、というのなら、
男性社員すべてに育児休暇を取らせることができるほどの体力のある会社が、どれほどあるかということを考えてみなければならない。

1.女性は結婚よりも仕事を優先せざるをえなくなっている。
2.女性は結婚しても育児よりも仕事を優先せざるをえなくなっている。
3.そんなきついなかで、子供は産めない。

それが少子化の実態なのである。



もともと日本の初等教育の水準の高さは、
母親の子供に対する教育力の高さに依存していた。

いわゆる日本の母のイメージは、日本の教育を根底で支えているものであった。
しかしそれは縁の下の力持ちであり、今までそのことをことさらに取り上げる人もいなかった。
取り上げる人がいなくても、そのことは日本人の常識としてだれもが分かっていたことだからである。
しかし、いつの間にかそのことに気づかない人たちがでてきた。

特に優しい母のイメージによってではなく、厳しい父のイメージによって育てられてきた一部のエリート女性たちには、そのことはなかなか分からないらしい。

母親が子供の教育にたずさわらないことが、どれだけ大きな教育的損失をもたらすのか、またそのことによってどれだけ大きな社会的損失がもたらされるのか、そのことを今一度考える必要がある。

今の少子化現象は、一種の庶民の防衛反応である。
今の状態で子供を産んでも、まともに育てられないことを庶民は肌で感じている。
これ以上子供を産めば、子供への教育は行き届かず、子供への責任を放棄して、子供を劣悪な教育環境の中に放り出すことになる。(教育環境というのは、家庭教育を含めてである)。

だから考えようによっては、今の少子化現象は、子供の教育環境をこれ以上落とさないための、せめてもの救いなのかもしれないのである。

考えてもみて欲しい。
学級崩壊や、校内暴力、青少年の凶悪化、これほど誰もが知ってる社会現象が起こるなかで、これ以上子供の教育環境が劣化すれば、日本の教育環境は地に落ちることになる。



誤解のないようにいっておくが、
私は子供を産まない方が良いなどといっているのではなく、
今の社会状況、特に男女共同参画社会の推進下では、家庭の育児環境は低下せざるをえず、
女性たちはそのことを敏感に感じ取っているということを、いいたいだけである。




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