四間飛車はアマプロ問わず多くの人が最も注目している戦法ではないだろうか。
振り飛車の中で最もバランスが良いと言われ、振り飛車党のほとんどの人が愛用している。
必然的に居飛車党が最も多く盤を挟むのが四間飛車ということになる。
プロ棋界では全対局数の二割から二割五分は四間飛車である。
この数字は少ないように思うかもしれないが、ここ10年ほどを見通してみると相居飛車でもっとも多く採用される矢倉や横歩取り△8五飛戦法と並ぶ。
現在では△8五飛戦法の優秀性に押されて矢倉はほとんど指されなくなったため、この2つの戦法が将棋界を席巻しているのである。
アマ棋界でも四間飛車の人気は絶大である。
しっかりした定跡書が比較的手に入りやすいためか四間飛車の使い手は多い。
プロでは四間飛車党の使い手は居飛車に比べると少数派であるにも関わらず、上述の採用率なのである。
四間飛車の将棋が多いのは必然と言える。
アマの将棋の5割は四間飛車と囁かれるほどである。
四間飛車はなぜこうも愛されるのだろうか。
まず駒組みの簡明さが挙げられるだろう。
角道を止め、飛車を振り、しかる後に玉を美濃囲いに組む。
居飛車がどんな作戦で来ようが基本的にこのパターンは変わらない。
次にその攻撃力が挙げられる。
飛角の配置を見れば分かるように▲6五歩(△4五歩)で二つの大駒が同時に牙をむくことが出来る。
▲6六歩(△4四歩)は爪を隠した状態と言えよう。
居飛車の逡巡や緩手に対し激しく速攻を仕掛けることが可能である。
また守備力の高さが挙げられる。
短手数で組める上に堅いという美濃囲いの味は非常に魅力的である。
互角で捌きあえればよしという指針は簡明で、狙いやすいと言える。
また囲いの進展性に優れることも見逃せない。
居飛車が不用意に持久戦を狙ってきても進展性で優るため平凡な駒組みで作戦勝ちしやすいのである。
また美濃囲いの美しさに魅せられる人も多いと思う。
やはり美しい囲いは堅いものだ。
そして攻守のバランスの良さが挙げられる。
一般に三間飛車は守備力の高さを活かした捌き重視、
向かい飛車は飛先を逆襲する積極的な攻撃重視、
中飛車は陣の厚み重視と言える。
対して四間飛車は居飛車の動きに応じて捌き、押さえ込み、或いは強攻と変化の幅が広い。
これは守りを固めてはいるが、その底流に激しい攻撃力を秘めているからである。
攻めも守りも自在に変化できる。居飛車の指し手に応じて自在に立ち回れる。
そのことが四間飛車に幅と奥行きを作り出しているのである。
上述のように今なおプロ間では四間飛車が指され続けている。
それはこれだけ多く指されても未だに結論が出ていないということであり、
四間飛車の奥深さを端的に示している。
現代四間飛車では藤井システム居玉急戦という革新的な戦術が四間飛車の選択肢に加わり、
四間飛車はより深淵なものになった。
|