この本を読め!
-四間飛車定跡書総合ガイド

東大将棋四間飛車道場第13巻藤井システム
著者:所司和晴
出版:毎日コミュニケーションズ
発行:03/10
価格: \ 1260
対象棋力:初段前後-有段者
評価:

メインは△4三銀型藤井システム。
藤井システムの定跡書は最近出ていなかったので最強藤井システム・四間飛車を指しこなす本3の後を埋めた本と言える。
島ノートや最前線物語などは出ているが定跡書とはちょっと呼びがたい感じで
あまり細かいところには触れなかったので初めて学ぶ人にはそれだけではわからない変化満載だったかと思う。
この本はオーソドックスな変化も並べてあるのでその意味で勉強になると思う。
ただ、藤井さんが本を出すまでのつなぎといった感有り。
これは振り飛車党だからという色目もあるのだろうとは思う。
別に所司先生をけなしたいわけでは全然ないんですが、
本家がそのうち本を出すだろうからそれを待つのも一興ということです。
まあ、藤井システム使いなら当然読むべきです。
次巻以降で、急戦をにおわせて振り飛車の玉が動いてから穴熊を目指す指し方と
振り飛車の玉が不安定なうちに急戦を仕掛ける指し方を解説するようです。
これも期待できそうですね。
東大将棋が良くない理由をいま思いつく限りで並べてみる。
解説が平板なのは本線を感覚的に理解するという点ではっきり劣る。
解説の推敲が足りないことに起因するのだろうと思う。
あまり意味のない文章が密度を薄めている。(例:第1図は後手が△3二銀と上がった局面)
1ページで解説を纏めるという形式に囚われて文字をどう収めるかという苦心が見て取れる。
もっと書くべき所ではおざなりな解説で1ページになんとか収めて、
必要のないところでは意味のない文章を入れてレイアウトを綺麗にしようという心算が見え見え。
現状では解説は1ページ完結を無視した方が楽に良いものが出来る気がする。
また1ページごとの小題はまったく使えない。
段組は理解しにくい文章をさらに理解しにくくしている印象さえある。
図はいっぱいあればいいという単純思考なのだろうが、
この本を並べずに通読できる人がいったい読者の何割いると思っているのだろうか。
手の意味の解説がほとんどなくても棋譜・盤面があれば理解できるならその人はすぐプロになれるとさえ思う。
示す盤ももっと選んで欲しい。1手しか進まない変化図はただの無駄である。
本筋と変化という言葉が使われるがどういう意味合いなのか今ひとつわからない。
局面や手順の選び方纏め方は巧いと思う割りに解説が拙いので全体として評価が大きく下がってしまうと思う。
その解説を自分の棋力で(本当の意味で)補える人にしか受け入れられないのだろう。
あと、どちらにも肩入れしないという事にこだわりすぎて、
居飛車としてどう感じてどう手をつなげていくか、
振り飛車としてどう感覚的に判断すべき局面かということが全くないので
実際読みを入れる時にどういう気持ちで指せばいいか手掛かりが無いのがもったいない。
居飛車党の人が書いた本は居飛車よりだが、それは居飛車の人がその局面・手順でどんな印象をもつかということがわかると
振り飛車としても読みやすいし、より深い理解が出来ると思うわけです。
あと、チャートはやっぱり欲しかったなと付け加えておきます。
ちょっと好き放題書いてみたが、このシリーズは決して悪いところばかりではないことは勿論認識しています。
定跡の整理などの面で非常に大きな役割を果たしたと思うなどと書いて悪印象回避を図ろうとする辺り、ずるいのでしょうね。
なにかご教示またご叱正など頂ければ幸いです。

藤井猛九段が開発した藤井システムの登場で、居飛車穴熊に苦戦していた四間飛車側は息を吹き返した。居玉のまま飛車角銀桂香をフル活用して居飛車穴熊本陣に攻め込む積極的な手法だ。今度は居飛車側が駒組みに工夫を求められている。本書には居飛車穴熊と藤井システムの攻防が収められている。本書を読まずに四間飛車は語れない。

第一章 藤井システムの駒組み
     第一節 藤井システムの駒組み
第二章 8八玉型VS藤井システム
     第一節 ▲7八金の変化
     第二節 ▲9八香の変化
第三章 7八玉・6七金型VS藤井システム
     第一節 ▲5五歩の変化
     第二節 ▲8六角の変化
第四章 7八玉・5八金型VS藤井システム
     第一節 ▲5五歩の変化
     第二節 ▲3六歩の変化
第五章 7七角早上がりVS藤井システム
     第一節 △9五歩の変化
     第二節 △7四歩に▲6六歩の変化
     第三節 △7四歩に▲8六角の変化
第六章 5二金型藤井システム
     第一節 ▲6七金の変化
     第二節 ▲9八香の変化