アイススケート17年のTIPS

更新 2015.5.17

前書き

折角スケートリンクに来たのに、全く楽しめない人が居る。
特に、明らかに靴がぐにゃっとしていて滑る事が出来ない状態でも放置される。
貸し靴にダメージを与える様な悪い履き方をしてもリンクの人から注意も指導も無い。
それが不条理に思えて、解決する手段などを考えるようになった。
しかし、悪い状況があってもそれを直せるだけの指導力がないと直せない難しさがあり
放置されるのも仕方がない現状も分かってきた。
例えば、足首ぐにゃぐにゃ問題は、大抵靴の大きさや紐の締め方が原因という事で片付けられて
しまうのだけど、これも調べてみると幾つかのタイプや原因があるため、
似た様な状況で特定の対応をしても直る場合と直らない場合が出て来る。
リンクのスケート指導者は、教室が有料ということから、習う意志がないレジャー客に
対して指導する事もなく、当然利益や実績につながる生徒の指導に忙しくて、
初心者の足首問題などにどういう原因があるかとか時間をかけて調べる筈も無い。
しかも、出来ない人を指導するのは、指導力がないと見られやすいので、
自分がコーチだったら敬遠するかもなあ・・・。
また、フィギュアスケートのインストラクターは、無料指導禁止という方針があるらしい。
まあ、色々考える事はあるが、一人でも多くの人にスケートを楽しんでもらいたい
という思いもあり、アマチュアの立場で出来る事を探ってきた。
一つの事を長く続けると、時間が解決してくれることも多い。
自分が工夫して解決した事もある。
それで、ここにそれをここに綴ろう思った次第だ。
ただし、これは個人研究なので、まだまだ原因追及が甘い部分とか、間違った見解を
含んでいる可能性がある。
特に、ここに書いている事は、一般のスケート教室で教えられている事とは
違った考え方なので、その辺りを考慮して読んで頂きたい。
他人が書いたものを鵜呑みにするのではなくて、参考にして自分で検証して
自分のものにしてゆく人向けの記事だと言える。
プロの指導者が、別の視点からアイス・スケートを考察したものとして参考にして
もらえると嬉しいが、そこまでの内容になっているかどうか。

足首問題その(1) 〜足首グラグラな人〜

道路などを普通に歩くとき足首が脱力状態で歩いているようだ。
靴の摩擦があるから、足首脱力状態でも問題なく歩けるのだ。
無意識でやっている事だから、直すのが難しい場合がある。
まず、意識的に固定するようにして、意識しなくても出来るようにする。
リンクから出て、数分のゴム床足踏み(歩行)をお勧めする。
感覚が掴める人は数分の足踏みでグラグラしなくなるようだ。

足首問題その(2) 〜足首が傾く人〜

   

よく、刃の上に乗っていないと言われる状態。
色々な原因が考えられる。
・貸し靴のブレード取り付け位置が悪い、ブレードが曲がっている。
・貸し靴が変形している。
・借りた靴が適切なサイズより大きい
・靴ひもの締め方が緩い
・道路などを普通に歩くとき靴の縁で踏ん張る(縁に体重をかける)癖がある。
・イン・サイド・エッジに乗ると安定すると感じてわざとそうする人。
原因が靴にある場合は、区別をつけるのが難しいが、原因を特定する必要がある。
すぐに判断出来なければ、消去法でつきとめる。
意図的に足首を傾けている人の場合は、足首を真っすぐ固定するように指示する。
スケートを続けようという人は、これらの問題を避けるためにも、
自分の靴を買う事だ。良い靴を買えば、快適さは格段に違う違う。

ブレード平行で普通に立つと

こんな感じ。
   

手すりから離れられない人

立ち方が分からないレベル。
刃がつるつるしてどうやっても安定しない。
小さい子供や運動神経がないと言われる人は、
体の動かし方として系統立てた動作が出来ていなかったり、
外力を受け流してバランスを取っている様な感じで
関節を固めて姿勢を作るというような動作が思った通りに出来ない事がある。
また、恐怖心から体を硬直させて、適切な姿勢を作れない人もある。
恐怖心がある場合は、かなり厄介。
全身の複数の関節を動かして一連のバランスが取れた動作をするので、
支えてもらい、リラックスしながら基本的な動きを学ぶしかないだろう。
どうやっても時間がかかると思う。

横滑りする場合

あるリンクで靴のメンテナンスが駄目で、貸し靴が横滑りする
状態になっていた。スケート靴の刃を研がないと駄目な状態。
しっかり体重を乗せると何とかなるけれど、ちょっと油断すると
横滑りして転びそうになるとか、うまく氷が押せないとか。
こういう状態で教えると、運動能力が高い人程、何かおかしな事になりやすい。

ヘルメットが必要な人

人は、危険を感じると本能的に体を反らす反射動作に入る。
スケートでは、これがとても危険なので、練習しながら
この反射動作が起きないように訓練する必要がある。
この反射が取れないうちは、ヘルメットをかぶった方が良いだろう。
ヘルメットは重いと感じる人は、毛糸の帽子をかぶると良いだろう。
危ない時程、股関節を深く曲げる(しゃがむ)ように練習するのが良い。

第二の足首問題

第一の足首問題は、前から見た時横に傾いたり、足首がグラグラする
問題だったが、足首に関してはもう一つ重要なポイントがある。
横から見た時足首が鋭角に曲げられていることが
アイススケートをする上で非常に重要なのだ。

   

頭を打つ様な転倒の防止という意味でも重要な事だと思う。
初心者がぎこちなかったり、危なっかしい時足首を横から見ると
大体直角から鈍角になっている。
足首を深く曲げるように勧めて、「恐くなくなった」、「安定した」
と言ってくれた人もかなりの人数居る。
既に、十分に曲げている人には関係ないが、通常の歩行では、
足首を90度以上曲げる必要がないため曲げない人、
曲げる事が出来ない人も案外多いようだ。
運動能力が高い人程、深く曲げているように思う。
足首をあまり曲げたことがない人は、お尻が踵につくまで
しゃがむように指示すると、後ろにひっくり返るので出来ないと言う。

   

しかし、足首を十分に曲げると出来る。

   

この足首問題も、良い滑走姿勢の一部であり、この部分だけ
注意しても仕方がないのだが、分かりやすいチェックポイントの一つだ。
足をV字に構えて、少ししゃがんだとき、お尻の真下に踵が来るように
踵を後ろに押し込むようにすると、足首を深く曲げられる。
この問題は、新しい靴を買った時に遭遇する問題でもある。
新品の革靴は、足首を曲げにくい事が多いので、こんなものかと
思っていると大間違いということがある。
靴によっては、足首を曲げやすくするため靴ひもを通す穴と穴の
間をV字に切り欠いたものがある。
足首が曲げにくいスケート靴は、良いスケート靴とは言えない。

足をV字に構える理由

   

・「気をつけ」の正しい姿勢もこれと同じ。骨格上の理由があると思われる。
 踵で背骨を支え、足の前側で股関節を支える
・V字型に構えないと(両足平行では)エッジで進行方向と逆方向に氷をうまく押せない。
・前進滑走は、斜めに進む事を考えると予め進む方向に
 つま先を向けておくという合理性がある。
・ブレードを垂直に立てる事に役立つ。
・両足立ちの姿勢だが、実は、片足滑走するのに適した姿勢でもある。

足をV字に構えると・・・

体の仕組みで、自然と手のひらが上を向いてこんな格好になる。
   

これは簡単に直せるので直しておこう。
   

横から見るとこんな感じだ。
   

重心は踵乗りか、前乗りか

一般論は、前進は踵側、バックは前と言われている。
これは経験則的に初心者に教えるとき、進みやすさの点でそういう傾向があるのだ。
ところが、アイス・スケートで大切なのは、社交ダンスなどで
言われるボール(ball)という位置に体重を乗せる事だ。
これは、一般論に反しているようだが、前進でも前乗りということだ。
フィギュアスケートでの乗り位置も、このボール位置とされている。
このポイントをスウィート・スポットと呼ぶ人もある。
ボールとは、足指の根元の部分で、踵乗りに比べると、体重に加えて
踵の関節のバネで氷を押さえる事が出来るためより強く氷が押せる分
バランスも取りやすい。
ボール位置で体重を支えるためには、ある程度足の裏の筋肉を
鍛えておく必要があるため初心者には難しい場合があるかも。

普通の人が考える踵乗りと前乗り

大体、こんな感じだろう。
踵乗りは良いとして、前乗りは、何となく体を前に倒して前乗り。
   
しかし、これは本当の前乗りではないのだ。
こんなことをしていると、フィギュア靴の場合、トウビックを
引っ掛けて転ぶ事になる。

正しい前乗りはこれ

最初の靴を買った時、
踵にある重心を前の方に持って来れたら滑らかに滑れるのに
と思っていたが、どうやってもそれが出来なかった。
靴が固くて足首が曲げられなかったことが原因だった。
しかし、靴が柔らかくなるとともに、知らない間に
次の様な感じで体重を乗せるようになっていた。
   

前進は踵乗り、バックは前乗りと言われるが

これは、刃を垂直に立てた、フラットエッジでは差がない。
刃を斜めに倒してエッジで滑走すると刃の曲率に応じてカーブするが
そのとき、真っすぐ進もうとすると進行方向で刃がカーブの内側の氷を
捉えて抵抗要素として働く。



この状態で、エッジが氷と接する前側に重心を置くと
より一層カーブしやすくなり、直進抵抗も大きくなって進まない。
だから、その部分を浮かせる意味で進行方向で後ろ側に
重心を置くと進みやすい。
抵抗を受けるのは、直進しようとする場合であり、刃の倒し方に応じた
方向にカーブする場合はほとんど抵抗を受けない。
初心者のとき、捕らえ所がないツルツルした氷の上で安定しないのが、
少し慣れて来ると歩けるようになってくるのは、この直進抗力を
うまく使うようになるからだと考えられる。

歩けるが滑れない

この状態は、前述の直進抗力を使ってツルっと滑らないようになり、
安定して歩けるようになったが、この抗力を解除出来ず、
滑る事が出来ない状態だと考えられる。
よく「歩くのではなく滑りなさい」という人があるが、
この状態に陥るのを危惧しているのだ。
多くの人は、直進抗力の掛け方も解除の仕方も分からないので
一度この状態になると、ツルっとするのが恐くて無意識に
この姿勢に持って行ってしまい、滑れなくなるのだろう。
ここから抜け出すためには、フラットエッジで片足に体重を
乗せて滑る必要があるだろう。
多くの初心者は、それが恐いので、完全に片足に体重を乗せ切る前に
反対の足で支えて安心したくて乗りかけた体重を戻してしまう。
片足で滑るというのは、比較的難易度が高い訳で、それなりに
姿勢を作らないと、数秒間の片足滑走は出来ない。
正しい姿勢を得た上で、体を進行方向に放り出すように、
片足を信頼して、どこまででも滑ってやろうというくらいの気持ちで
進む必要があるだろう。

初心者にありがちな癖

スケートの癖というよりは、普段の歩き方の癖と言うべきだろう。
前に一歩踏み出して、その足に体を引き寄せて乗せる。
この歩行動作が、スケートを難しくするのだ。
地面を靴で歩くのと違って、摩擦が無いため前に出した足に
体重を乗せようとしても引き寄せられないのだ。
多くの人が、歩き方をベースにスケートの方法を探すのだが
これが進歩を大きく妨げている。
もし、歩行動作を良しとして、何とか滑る事が出来るように
なったとしても、足に体重が乗っている時間が少なすぎて安定しない。
まずは、その場足踏みで体重を足の真上に置く事を練習しないと。
どうしても歩み足をやめられない場合は、足を前に出すより先に
肩を出して歩く事だ。足の上に肩が乗った状態ならば、そこそこ
足の上に体重が乗るので、運動能力があれば動き回れる。
歩み足を直すのには、前進のひょうたんの練習が効果的。

初心者が知っておくべき事

まず、基本進む方向は斜めだと言う事。
ただ、フィギュアスケートは、あまり斜めにならないようにする。
スケートは、自分の体重をよりどころにして進むため
氷を押して自分が進むためにも、片足から片足への
完全な重心移動が重要だ。
もし、足を開いて立ち、その中間に重心を置いたらそれだけで
身動きが取れない状態になっていると言える。
それから、スケートは氷を押して進むのだが、足(下半身)は氷を押して
進める事が出来るが、上半身は、何もしないとその場に取り残されて
後ろに転びそうになってしまう。
動的な前後バランスを習得しないとバランスを取ったまま加速出来ない。
これは、股関節を使って、肩を前に押し出す感じの動作になる。
姿勢は変化しないが、筋力的には、肩を前に押し出す動作になる。

屁っびり腰

自分が初心者の頃は、屁っびり腰を嫌って、腰を前に
押し出す様な姿勢を好んでいた。
ところが、自然にしゃがんだ時、お尻は少し後ろに出っ張るもので
これが即屁っびり腰ではないということが分かった。
腰を前に突き出して股関節を曲げない姿勢は、自分の普段の
立ち姿勢でもあったが、股関節を有効に使えないため、
スケートでは駄目なのだ。
電車の中で、つり革を持たなくてもある程度の急停車などで
立っていられる人は、股関節を曲げた姿勢を保っているようだ。

重心位置を確認する方法

重心はどこに置くのですかと質問する人がいるが、質問する人の多くは
自分の重心がどこにあるのか把握出来ていない。
客観的に見て、ぎこちなさを感じる場合は、足に重心が乗っていないものだ。
本人には分からないが、他人が見ると分かる。
本人が確認するためには、氷を小刻みに踏んでみて、安定感があり
足の裏に荷重を感じる位置を探すしかない。
ただ、誰にでもこれで確認出来るかというと難しいだろう。

一般的でない重心論

物理的に、重心というのは、物体の重さの平均的中心位置ということだが
例えば鉄アレイの様な形だと、取っ手の中央に重心があると言えるが
密度的には、重心が丸い部分2つに別れていると考えた方が、
重心密度的に正しいと思われる。



スケートの場合、肩と腰に重心が別れていると考えた方が自然だ。
一般的なフィギュアスケートの教え方では、この2つの重心を一つにまとめるため
腰の真上に肩が乗るような姿勢を取ることが正しいとされているようだ。
自分の経験では、肩と腰の重心を分散させる事によって合理的な動作が
出来ているように思う。例えば、クロスオーバー。
前進に関しては、それ程でもないが、特にバック・クロスは、胸と腰の
重心を分けた姿勢にしないとうまく行かないように思う。

前進のひょうたん

前進のひょうたんは、両足での動作になるので簡単とも言えるが
特殊な動作なので、人によっては、とんでもなく難しく感じるようだ。
ひょうたんが出来ないときの主な原因は、足首の曲げだ。
そう言う意味でも、少ししゃがんでやった方が良い。
前進ひょうたんは、歩み足を直すのにも効果がある。
また、低速滑走の場合は、ひょうたんを閉じる動作で止まる事が出来る。
丸く足を動かせば良いのではなく、氷を押す事が重要。
V字から始めるが、つま先が開きすぎていると氷が押せない。
氷を押して前に進む点では、片足の場合と変わらないため基本練習となる。
前進は、ガニマタで開いて、内股で閉じる。
開く方は簡単だが、閉じる方は難しい。
開く時に氷が押せて速度がつけば、閉じやすくなる。
氷が押せても上半身(肩)が後ろに取り残されて閉じられない事が多い。
胸がつま先の上にかぶさるくらいの姿勢で、足の親指に乗って閉じれば閉じやすい。

乗り位置と重心がずれている場合どうすれば良いか

ブレードが氷と接している真上に重心を乗せるのが理想だが、
この位置がずれているとき、以下のどちらが良いか。
1) 氷と接している足の位置の上に重心を移動する
2) 重心位置の下に氷の接地点が来るように足を動かす
答えは、2。
1だと、重心を動かすので制御も難しく、動かし始めたら慣性が働くので
所定の位置に来る前に止める動作が必要になる。
2だと、足を重心方向に引き寄せるだけであまり反動が起きないので簡単。

乗る足と押す足

片足に乗って、片足で押す。
だから、2本の足の役割を交互に切り替えて動作する。
ある意味正しいのだが、ある意味正しくない。
経験的に、乗る方の足も踏み出して氷に足がついた瞬間から押し始める。
次に乗る足を空中で構えて乗った足で最後まで押し切る感じ。

そこそこ滑れるようになったら

何も教えないと、大抵足は、ハの字に少し開いて、インサイド・エッジで
下図のAのようなストロークで滑るようになる。

  
※この図は、イメージで、実際の滑走跡とは異なる。

Aは、氷をしっかり押せる水色の区間で氷を押していない訳で
氷を押すという点で空振りしている様なものであり、片足から片足への
完全な重心移動も出来ていない状態だ。
そこで、Bのようなストロークを目指す必要がある。
そのためには、踏み出した足は、まずアウトサイド・エッジで氷を捉え
エッジ・チェンジしながら体重を乗せて、更に後ろに押すように練習する。
これが身に付くと、かなりスピードが出せるようになる。

その場足踏みで細かく踏んで1回転(初心者向け練習方法)

足首を曲げて、ボール位置に乗る事を教えた後、その場足踏み
10回くらいで1回転させると、大抵の人は氷の上で案外動ける事に気付く。
前に進む事だけ教えたのでは、バランスを崩したときや回転がかかった時に
対応する方法が分からないが。その場足踏みでゆっくりと1回転すると
それだけで結構複雑なバランスの取り方を習得出来る。

サイド・ステップ(初心者向け練習方法)

片足から片足への完全な体重移動を教えるために考えたもの。
まず、足は、肩幅に平行に構えて立つ。
1)左足を左に一歩開いた位置に降ろす。
2)その左足に乗り上げて完全に片足になる。
3)左足のすぐ右に右足を降ろす。
4)右足を右に一歩開いた位置に降ろす。
5)その右足に乗り上げて完全に片足になる。
6)右足のすぐ左に左足を降ろす。
氷を押す動作を教えるのは、乗る側の姿勢が不確定になりがちなため
難しいのだが、押す方の足に完全に乗って、乗ったまま押せば比較的楽に
氷を押す事を習得出来る。

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