1999-2000セリエA第20節 ASローマ 対 ACヴェネチア 
サッカーのチームにおいて、中心となる選手は必ず存在するようだ。それはキャプテンマークをつけているとか、ベテランであるとか、そういったことではない。単純にそのチームのゲームを作っている選手のことだ。
99年のワールドユース準優勝のU−20日本代表チームなら小野伸二がそうであったし、98年のフランスワールドカップの日本代表チームなら中田英寿がそれであった。
そして中田英寿は、セリエAのACペルージャにおいても中心選手であったことは紛れも無い。
つまり、中田が中心となっていない試合を我々は見たことがないのではなかろうか。
そんな中、イタリア代表のトッティを中心選手とするASローマで、ボランチという難しいポジションを与えられ、今まで免除されることも多かった守備に追われ、攻撃参加もままならないプレーぶりを見ると、中田に物足りなさを感じるのも全くをもって致し方ないことだろう。

中田はこの試合においても、ほとんど攻撃参加をしていなかった。攻守のバランスを保ちながら、相手がいざ攻撃を開始する時の、中盤のボールの出所にプレッシャーをかける動きを心掛けているようだった。それはまさにボランチの役割である。
セルジオ越後氏が日刊スポーツ紙に以下のコメントを残している。

【レフェリーが2人…キレなし中田】

ボールが進む先を予測して移動するレフェリーと、相手のボールの出所をケアし、味方DFからボールが配給される際に中盤でボールを受け攻撃の起点となるボランチと、その動きがダブるのは当然である。セルジオ越後氏はトップ下でゲームメイクをする中田が見たいのであり、ボランチとしての中田は買っていないのであろう。
しかし、類稀なボディーバランスでボールをキープし、そこからスルーパスを繰り出すプレー、後方から走り込んでのシュートや、スピードを活かしたドリブルが得意な中田のプレースタイルはボランチ向きと言える。
さらにこの試合でも多く見せた、相手に強く当たりボールを奪ってしまうプレーや、パスコースを読んでのインターセプトは、ボランチ中田の守備面の特徴でもある。
もう少し、ボランチそのものの役割を考えて中田のプレーを見つめるべきなのではないだろうか。

また、中田にボールが集まらないという声も多いが、この試合においては致し方ない気がした。
ヴェネチアが大きく下がったDFラインを引き、前線からのプレッシャーを全く掛けて来なかったので、ローマのDFは正確なボールを前線に送ることが出来た。つまり、中盤の選手を介する必要なく、前線で動き回りフリーになる選手に正確なボールを配給することができたのだ。
DFラインが引いた相手に対しては、中盤で細かいパスを回すよりも、サイドをえぐった攻撃やロングシュートが効果的なのは常識である。この試合のローマはこの定石をしっかり守ったと言える。
さらに「カフーから中田にボールが出ない」と言っていたテレビ解説者もいたが、カフーは中田にボールをはたいて、ワンツーでボールを受けようとする動きを再三しており、むしろその後ろのザーゴや、逆サイドのカンデラから中田へのボールが少なかった。この辺り、もしかしたらまだ中田は信頼されていないのかもしれない。

予断にはなるけど、カフーはディフェンスしないねぇ。
前半36分にヴェネチアの右サイドの位置、ブリオスキからクロスボールが上がり、裏でフリーになっていたベルグがボレーシュートを打ったシーンがあった。あのマークはカフーがするべき。ゴールには結びつかなかったが1点もののプレーだった。

ついでにフジテレビ「セリエAダイジェスト」での解説者に対して。
トッティが退いた後の後半31分、センターサークル後方でボールを受けた中田は、大きく首を振りながらドリブルでペナルティーエリア付近まで上がって行った。このシーンを見た解説者は、
「これは自分で発想して何かを作っていくと言うよりも、出すところを探してるような感じ」
と言っていた。
ちゃうちゃう^^;
あれは、首を振ることによって、味方FWのマークについた相手DFの意識を逸らそうという、言わばフェイントでしょう。
以前、ヒデが自分のHPで言ってます。

【ヒデから、「Petrachiの結婚式!!」】
(↑「9月18日 第3節 CAGLIALI戦。」の所で書いてます。)

先の解説者は「ローマに在籍してるから迷った」とでも言うんでしょうかねぇ。ペルージャでもやっていたプレーなのに。

最後に、この試合後の中田本人のメールがHPに掲載されたのでリンクしておきますのでご覧あれ。

【ヒデから、「長らくお待たせしました……サッカー編」】

ASローマ移籍後、得点に絡めないでいる中田に対して、「何でもっと攻撃参加しないんだ!」という意見が多いようですが、私はボランチ中田のさらなる成長を期待している。

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