「答えはNOだ!」
俺がその場にいたら、そう叫んでいたかもしれない。
小野伸二は、浦和レッズと第1回目の契約更改交渉を終えた後の記者会見で「今、僕が海外に行って通用すると思いますか」と、記者団に向かって質問したと言う。
全くナンセンスである。
今の日本の新聞記者連中に尋ねたところで、的を得た答えが返ってくるとは考えられないし、そもそもそんな質問をするような迷った状況で海外クラブチームに行ったとしても、通用などするはずがない。
この時点で(1999年12月9日)、浦和レッズの元に届いていた海外からのオファーは、イタリア・セリエAのボローニャ、ローマ、フランスのモナコ、イングランドのアーセナル、オランダのアヤックスの5チームであり、いずれも欧州各国の一流クラブチームである。一流チームであるがゆえに「小野を戦力補強と考えているのではなく、宣伝効果と考えているのではないか」と受けとめたのかもしれない。
しかし世界のサッカー事情がヨーロッパを中心に進んでいるということを考れば、例え出場機会が少なくても、現地でサッカー漬けになって生活するだけで、サッカーに対する考え方からして大きな成長を遂げられるのではないだろうか。
そして注目したいのが、「チームからの正式なオファーはアヤックスだけ」という記者会見での説明。そのアヤックスも条件提示はなく、練習参加の要請だったとのこと。
レッズ側はこのオファーを「練習生扱いとは過小評価された」と判断したのではないだろうか。
そうだとれば、それは大きな間違いだと言える。
アヤックスというチームは今でこそ、1995年のヨーロッパチャンピオンズリーグに優勝した当時ほどの破壊力を持ち合わせていない。
それでもアヤックスには、「アヤックスでサッカーをやりたい」という若い入団希望者が後を断たない。
実を言うと、昨今のアヤックスの低迷は、チームが育て上げた選手を他国の所謂「金余りチーム」に引き抜かれるということが繰り返されるため、戦力が低下したことが理由である。
つまりはアヤックスというチームは、若手育成に最も定評のあるチームなのだ。
当のチーム側は、育て上げた選手を他国のチームに引き抜かれてしまうということを、少しも嘆いていない。「アヤックスでサッカーを学んでステップアップしたい」という若手が大勢入団することを至極の喜びとし、育成に力を注いでいる。
小野はまだ未熟である。
ならば自分のプレーが通用する場所を求めるのではなく、さらに学べば良いではないか。
名波浩は「自分に足りないものはイタリアにある」と言った。
伸二に足りないものはオランダにある。伸二、アヤックスへ行け。

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