再び廻る時へ



2003/8/14
 By ぴーこ




命を奪うものは、偶然の重なりであり、必然の定。



そして ……  一発の銃弾。




「ニコラス!!」



鮮やか過ぎる緋色の飛沫を上げながら崩折れる身体。
咄嗟に受け止めた身体からは、既に生命の気配が薄れ始めていた。
「ははっ……しくじってもうた……」
「おいっ!待っていろ、直に医者を」
ウルフウッドは自分を抱え上げてようとした腕を押し止める。
「むだ……や」
お前も分かっとるやろ。
押し止める腕さえ、伝わる温かい流れとは逆に体温を失っていく。
「それを決めるのは、お前では無い」
言葉では否定しても、現実の前にナウヴズは一歩も動けずにいた。
「……なぁ、ナイブズ」
「それ以上、喋るな」
止血の為に胸に当てられた布がみるみる赤く染まっていく。止まる様子を見せないその赤い流れを、ナイブズは心無しか青い顔をしながら、それでも表面上冷静な瞳で見つめていた。
焦燥を面に出す事が出来ない、まだ感情を他人に伝える事に不馴れなその仕種にウルフウッドは小さく笑った。

「……ええよ」
「何がだ」
「……ワイはようけい殺し過ぎた……やから、最後もこんなもんやろ……」


(覚悟しとったわ。
 せやから、おどれは気にせんでええ)


何かを残せるような行いなど、一つも出来なかった。ただ、命の炎を欺瞞に満ちた考えで奪っただけ。
だから、この命が終わる時は闇の底を這い回るような、そんな最低の死に方しか出来ないと思っていたし、それで良いと納得していた。



(上等やな、こないな優しい場所で終われるなんぞ)



目の前の景色が色を失い、徐々に暗くなる。
赤い流れは、急速に体温を奪って行く。


現実が……遠くなる。




……ニコラス、目を開けろ!!……




最早聞き取れない程遠い声。
全ての感覚は、ナイブズの腕の温もりに収束してゆく。
焦燥を募らせるこの腕を宥めるにも、残酷な現実を納得させるにも。
時間が絶対的に足りない。



  (せやから、聞いときたいねん)



ウルフウッドは、動かぬ身体に息を吸い込む。






「おどれは、どうする……?」






再び人間を憎悪し、今度こそ一掃するか。
それとも人間を信じ、他の道を選択するか。





力を失い滑り落ちる腕。


「ニコラス〜〜!!」








……なぁ、おどれはどうする?……








***



バンッ


「ナイブズ!!ウルフウッドが!?」
予告も無く突然轟音と共に開かれた扉。
祭壇に安置された棺桶が目に入る。
「……本当なの?」
「……あぁ」
見開かれる碧の瞳。
ヴァッシュはナイブズに混乱した面持ちで歩み寄るった。
「そんなっ、だってあのウルフウッドなんだよ!?」
「やつも人間だ」
「そうだけどっ、でもっ、だって!!」
「騒ぐな。……何時か来る時が今だっただけだ」
残酷な現実を突き付けるナイブズの言葉に一瞬息をつまらせたが、それ以上の言葉も無くただ息を吐き出す為に小さく呟くしか出来なかった。
「そんな……」
ヴァッシュは今まで意識的に近寄らずにいた棺桶にゆっくりと足を向けた。


あの中に、ウルフウッドが眠っている。


信じられない。あのウルフウッドが命を落とすなんて。生きる事にあんなにも執着していた彼が、こんなにあっさりと命を失ってしまうなんて。


ヴァッシュは恐る恐るといった足取りで柩に近付いていく。
そして、その中で眠るあまりにもきれいなウルフウッドの顔を見た瞬間、ヴァッシュの中で何かが切れた。
力任せに柩の癖を掴んで身を乗り出す。
「ウルフウッド、何ぼさっとそんな所で寝てるんだよ。さっさと起きろよっ、もう昼も回ってもうすぐ夜になるんだぞっ。幾ら寝坊してもナイブズが怒らないって言ったって限度が有るだろう!?俺だって久しぶりに帰って来たんだよ。さっさと起きろ〜〜!!」
激高した感情のままにヴァッシュはウルフウッドのスーツの襟を掴み揺り動かす。 怒ったように頬を赤くし、泣き笑いに近い表情のまま尚も言葉を続ける。
「お前、何やってるんだよ!何で起きないんだよっ!!お前が死ぬだって!?冗談も大概にしろよっ、殺しても死なない奴だろ、今まで死にそうな目に会ったって最後は笑って煙草吹かしていたんだろ!!このテロ牧師っ!!不良牧師っ!!何とか言えよ、言い返せよっ!!ふざけるなっ、ふざけるな〜〜!!!」
感情のままにウルフウッドを詰り、必死に呼び起こそうとするヴァッシュを一つの手が止めた。
「止めろ、ヴァッシュ」
ハッと顔を上げたヴァッシュの視線とナイブズの視線が真正面からぶつかった。


現実を受け止めろ


その時、ぼそりとナイブズが零した言葉は小さすぎてヴァッシュには届かなかった。
「……ナイブズ?」
「お前がいくらそいつを起こそうとしても目覚めはしない。もう返っては来ないし、二度と会う事も無い。そいつは、死んだんだ」
アイスブルーの眸は視線を逸らさずに言葉をつむぐ。
「分かっていた事だろう。お前は一世紀以上も人間どもと関わって来たのだから、こうなることも俺よりずっとよく知っていただろう?ヴァッシュ」





この人間とは異質の生命を持って生まれた時から。
そうと知りながら、人を愛しいと感じてしまった瞬間から。




置いて逝かれる。




そう定められた未来。






「いずれ、こいつは俺達を残して逝く。そんなこと分かっていた事だろう」
「だけどっ、だってあれからまだ半年も経って無いじゃないか。これから、これからだっただろ!!やっと手に入れたのに、やっと幸せに近付いたのに!!」



震えながら柩を叩いていた拳を解き泣き崩れたヴァッシュを見て、ナイブズは「どうして弟のように自分の目からは涙が出ないのだろう?」と、考えていた。



指先が冷たい。
身体から、体温が失われていく気がする。
どうして、こんなにこの灼熱の世界が凍える程寒いと感じるのだろう?


そんな事ばかりが、頭の中を回っていた。




***




あれは、いつもと何ら変わることのない一日。



後方から銃声が響き始めた。
「あっちゃ〜、あかんわ。ナイブズ早よここ離れよ」
ウルフウッドはちらと振り返ると、足早にその場を離れようとする。
「……いいのか?あれを止めなくて」
おもむろに口にされたナイブズの言葉にウルフウッドは目を見張る。
「なんやおどれ、えっらいトンガリに影響されとんのやな」
そう言えば、戦いの終決から約一年程こいつはヴァッシュと世界を流れて生活していた。
その間にあのトンガリズムを感染させられたのだろう。元が同じだけに定着するのも早いらしい。
「しかし……」
「ええねん、ええねん。こないないざこざ日常茶飯事や、いちいち関わっとったらそれこそ命が何ぼ有っても足りへん」
さっ、サクサク行くで。
足を止める仕種も見せずに歩き去ろうとするウルフウッドの背中を、暫くナイブズは見つめていたが何も言わずに続く事を選んだ。


「今夜の晩飯、何や食いたいもんあるかぁ?」
並んで歩き始めたナイブズにウルフウッドは慣れたように声を掛ける。
それもそのはずで、ここ1月程二人は共に暮らしていた。切っ掛けは何だったのか良く分からない。けれど、1年振りに偶然出会ってから間もなくナイブズはヴァッシュと別れ、ウルフウッドの管理する教会に住み着いた。本人曰く、「放浪生活は性に合わん」なのだそうだ。確かに、そうなのかも知れない。
ウルフウッドの方はと言えば、決戦終決の後、以前と同じように巡回牧師を続けていたが、半年前に立ち寄ったこの街で現在の教会の牧師と知り合った。かなり高齢だったのだが不思議とウルフウッドと気が合った。その牧師の最期の願いを断る事も出来ず、そのままこの教会の管理を引き受ける事になった。
「……お前が作るものならなんでもいい」
ナイブズの返答もいつも通り。それでも、以前ではあるはずも無かった全幅の信頼が込められた言葉。
ウルフウッドは居心地悪そうに ポリポリと耳の後ろを掻く。
「おんどれがそないなこと言うと、 なんや熱烈な愛の告白でも聞いとる気ぃになるわ」
ってワイは何言ってるんやろ。話の焦点がちゃうやん。もっとこう、何が食いたいとか入れて欲しいとか、そないなこと言うて欲しいんや〜〜毎回、何作ろうか悩む方の苦労も考えてや。
いっつも何でもええ言いくさりよって。そのくせ、嫌いなもんは容赦なく残すやろ!!食もえらい細いし。
そう言えば、ナイヴズに何や買うて欲しい言われた事なんぞ無かったな。
おどれ欲無さ過ぎや。ついでに食欲も無いんかい。
なんぼ人生の目標がのうなってもうたからやて、そないな無関心はいかんやろ。
もっと、トンガリ見習ろうて好き嫌いせんとガツガツ食うてみい。
などとウルフウッドが動揺を誤魔化すためにいい加減な方向に思考を走らせていると。
「……変わりは無いだろう」
低い声で言われた言葉を上手く掴む事が出来なかった。
「へ?」
ウルフウッドは自分でも間抜けな返事を返したと思ったが、ナイブズはそんな事を気にもしないで今度ははっきりと言い切った。
「変わりは無いと言っている」
「………」
暫く硬直した後、ばっとウルフウッドの頬に血が上がる。

「なっななななっ何言うとるんやっ!ナイブズ!!」
「……なんだ、気付いていなかったのか」
難解な問題に突き当たった時の学者のような表情でそう言いながら考え込むナイヴズ。どうやら、好意の示し方が間違っていたようだと、最近の自分の行動を振り返っているらしい。
ウルフウッドはぶんぶんと腕を振り回してその思考を中断させた。
「やっ、そないなこと言うても、ワイの気のせいやと思っとったし。おどれにそないな感情有るんかも疑問やったし……」
「ひと月もお前だけを側に置いていて、その気が無いと思っていたのか」
「////」
「そこらの虫けらに食指は動かん」
「……えっらい言われようやな」
それでも、ただ一人だけに向けられた好意に悪い気はしない。


(そか、気のせいや無かったんやな)


次第に温かな眼差しを持つようになった眸に、自分の姿が映っている。
その事実が不思議と嬉しかった。



「何をぼさっと突っ立っている。さっさと材料を買って帰るぞ」
先を立って歩き出したナイブズは、どうやら最近親しくなった八百屋に向かって歩みを進めているらしい。
これも良い傾向だとウルフウッドは思う。
向かう先の八百屋の女将は、ナイブズの事をいたく気に入ってくれて息子のように可愛がってくれる。ナイブズも彼女の事を嫌ってはいないようだ。その柔らかな表情がそれを物語っている。
しかも、ナイブズを連れて行く時はおまけの量も少し多めに入れてくれるので生活の上でも大助かりである。
(ほんま、共同生活するんは美形にかぎるで〜〜って)
そんなこと、のほほんと考えている内にナイヴズとウルフウッドとの距離が開いていく。
「ちょいまちっ!ナイブズ。先に行って迷子になったんは誰や!?」
「そんな昔の事は覚えておらんな」
真面目顔を作ったナイブズが本気で誤魔化したのが分かった。
「昔ちゃうで!昨日やっ!!」
その一言でナイブズは更に歩調を上げた。耳もとが少し赤い。
ウルフウッドは小さく笑いながら、小走り気味にナイヴズに近付いていった。




「せやから、待てっ……」





「っ!!」
タンッ






「……や……ばやばやわ……」






「?…何だ」
乾いた音のすぐ後に続いた呟きにも似た言葉。その声が少し掠れ気味になったことに違和感を覚え振り返った視線の先には……心底驚いたように、自分の指を染めるその色を見つめる瞳。
そして、次の瞬間にはバランスを崩した身体。







………っ!!!………







*** *** ***




ウルフウッドの胸を貫いた弾丸は、あの時起こっていた日常茶飯事の騒ぎの内の一発の流れ弾だった。以前のウルフウッドならば問題なく避けられるものだった。いや、決戦時に負った深手を抱えていてさえ避けられないものでは無かった。しかし、その弾を避ける訳にはいかなかったのだ。その身体を投げ出しても傷つけたく無い者がその先に居たのだから。結果、ウルフウッドは心臓に繋がる動脈を切り裂かれた。溢れ出す血潮が不吉なまでに鮮やかだったのがそれを象徴していた。



礼拝堂の中でナウブズは未だウルフウッドの棺を見つめていた。
「……何故庇った」
自分なら、あんな小さな弾一発では死に至らない。その事実をウルフウッドも知っていたはずだ。なのにどうして、身体を張ってまで庇わなければいけなかったのか。


元から時間などほとんど残されてはいない自分達だったのに。他の人間よりも何倍も早く時が進んでしまうウルフウッドには、それこそ残された時間自体が他の人間達よりも何倍も短いものだったと言うのに。


「バカなやつだ。愚かなセンチメンタリズムに動かされるなど」
その結果、命を落とした。
「お前の命の代償が人間を殺した罪への断罪なら。何万と殺してきた俺は何故生きている?」
その終り方さえも、誰のせいでも無く全てが自分の行動に準じた結果としてウルフウッドは受け入れていた。
それならばどうして、お前の言う神が存在するのならどうしてこの俺にこそ罰を加えない?どうしてお前は死んで俺は今も生き続けている?お前の死が罪の酬いなのなら、一体どうして……



……いや、神など元から居ないのだ。



この世界は、誰かの意思によって動いている訳では無い。
神が本当に存在しているのなら、人は皆生きる希望さえ失ってしまうのだから。



自分で願う未来にこそ、神は存在する。


だから人は様々な未来を思って祈る。



「だから、何だと言うんだ」
神が居ようと居まいとウルフウッドは命を落とし、 紛れもなく命を奪った者は人間なのだ。
人類存亡の危機を命懸けで阻止しようと奔走し守り切ったウルフウッドを、あっさりと人間は引き裂いた。


胸の中でふいにマグマのような、それでいて冷たく冷えきった感情が渦を巻く。あの時も、咄嗟に全てのものを壊してしまいたい衝動が込み上げた。標本にされたテスラを見た時に感じたものとほとんど変わらない感情の動き。それは、人間に対する強烈な恐怖と嫌悪感。そして、愛しい者を奪った根源を排除しろと狂ったように叫ぶ鼓動。


けれど、たった一つ。
たった一言が、あの瞬間も今もナイヴズの衝動を繋ぎ止めていた。




……おどれは、どうする?……




コンラッドがラストランを前にして、人間(自分達)への許しを請うたのとは明らかに違う言葉。それは、ナイブズに選択を迫っていた。人間の醜さを目の前にして、人間の温かさをその身に感じて、再び訪れた選択の時にお前は何を選ぶのかと。



150年前に起こった出来事と、奇妙に重なる現実。あの時、憎悪に支配された瞳で見た育ての母の理解不可能な行動。
守られた命と、投げ出された命。



あの時と決定的に違っていたものは、自分ただ一人だけを助ける為にその手が差し伸ばされた事。
その存在の全てを掛けて、守られた対象が自分自身であった事。
誰でも無い、数えきれないその他大勢では無い。
自分だけを見つめた瞳。




本当に、何から自分を庇ったつもりだったのか。




ナイブズは変化していない己の腕を静かに見つめていた。



現時点においてA.ARMの使用可能回数は只一度。
それは文字通り、命懸けの稼動となる。
決戦にほぼ全ての動力を投入した身体には余剰な力など残ってはいなかった。だから、この生命の炎全てを掛けなければとても願いを叶える事は出来ない。



「……俺は死ぬことさえ出来ないのか」



ふいにぽつりと零された呟き。
その声色は硬質で、表情が無い。けれども、ヴァッシュやウルフウッドになら感じ取れたのかも知れない。
周囲を渦巻くように流れた圧倒的な孤独感を。



「……いや、死ねないと言うべきか」



存在の証明。
それは、ウルフウッドが存在していたという証拠。
ウルフウッドが命掛けで守った命。
ウルフウッドが残した唯一つのもの。
今やそれは自分の命であっても、失う事が出来ないものへと変化していた。



ウルフウッドの側で生活を始めた時から。
フィフスムーンの後、拳銃を向むけるウルフウッドを殺さなかった時から。



結果は決まっていたのかも知れない。




「……ニコラス……」

俯いた頬に、黒く染まった髪が影を落とした。
顔を覆った指の間から、その時初めて透明な雫が零れ落ちた。






*** *** ***





あれから、どれほどの時が経ったのか。
あの瞬間から、どれだけの時間が過ぎたのか。
人々はプラントから徐々に自立した生活を送るようになっていた。



「ほんま、けったいな話や」

日が沈み暗闇が支配した礼拝堂に声だけが響き渡る。
「誰だ」
「ワイ、あんたの事知っとるで」
姿を見せたのは、およそ10才前後の小さな影。
内に藍を潜めた底の無い黒い瞳。
懐かしいイントネーション。



「……ニコ…ラ…ス?」


「なんや、兄ちゃんもワイのこと知っとったんやな」


酷く懐かしい顔をして笑う子供。
激しく鼓動を刻む心臓が送りだす血流の音が、周囲の物音を一瞬遠ざける。


「ワイ、自分の頭の方がおかしなっとるんやとずっと思っとった」
子供は安心したように小さく息を付いた。
時折、見た事も無い景色がふいに脳裏を過ぎる。聞いた事も無い昔の話をまるで見た事があるかように話している。そして、会った事も無いはずの人物をずっと目で探している。
誰に話しても信じてもらえない、子供が作り出した絵空事だと笑い飛ばされるだけ。それでも、気付くと視線が彼を探して彼方を彷徨っていた。
焦る心、焦れる身体。



「ワイな、本当はもうすこぉし遅う来るはずやったんや。この身体、成長に合わせて記憶が戻るようなっとるらしくてな。せやから、全部思い出すまで待たなあかんて思っとった。せやけどな、なんや胸の辺りがごっつもやもやするねん。我慢できひんかったから、来てもうたんや」


記憶の欠落部分はまだ多い。今でも思い出しているのは自分を見つめているナイブズとその弟のヴァッシュの事、そして過ごしたつかの間の日々だけだった。忘れたく無いと強く思ったものから記憶は蘇って来ているらしい。それ以上のことは何も分からないのだけれど、それでもナイブズに言いたい言葉だけはたくさんあった。それだけは、ずっと心の中に溢れていた。


今や穏やかな優しさを湛えるようになった眸を覗き込むようにしてニコラスは笑った。
「人間……許したんやな」
せやから、ワイはおどれの元におれる。
おどれが人間許したらんかったら、ワイはもう二度とおどれに会えへんかった。
「人間は、お前を生み出した種族だからな」
「なんや、おどれでも人間愛に目覚めたんか」
「……フン」
ニコラスの言葉を鼻で笑いながらそれでも視線ははずさずに、ナウブズは自らの眸を覗く者へと手を伸ばしていた。
「なぁ、トンガリはあれからどうしとるん?」
「変わらん、たまに戻ってくる以外はアウターを彷徨っている」
ナイブズは抱き上げた体を、同じ目線まで引き上げる。




「……そんな事より」
「せやな」






「遅うなってもうて堪忍や。……ナイブズ」






END.






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コメント:久々です。(っていっつもUPは久々って感じが……)
   しかも、また浮気して別ジャンルですし。
   闇末も書いてはいるんです。
   (場面飛び々だからUPにこぎつけないんです)
   ま、気にせず、長い目で見てください。

    感想など送ってもらえると嬉しいです。