目覚め ”涼介編”


涼介と啓介の間に前には感じられなかった緊張感が漂うようになった。

気がつくと、涼介は啓介の視線を感じた。

”・・見られている・・・”

弟に見られたくらいで、気にしてどうする、

そう割り切れたらいいのに。

それさえも、もうできない。


少しずつ、何かが狂っていく。



「涼介、最近家に帰ってないんじゃないか?」
同じ研究室の仲間が声をかけた。

「いや、まだ調べたいことが残っているからな・・」

言葉を濁すものの、本当は帰るのが恐い。

仲間が次々に自宅へ帰る際に、涼介に声をかけては帰っていった。
何日も続いた研究が一段落したため、皆くたくたで、
一様に疲れた顔をしていた。

もちろん、涼介も疲れていた、が。
(家に帰るよりマシだ・・・)

涼介はため息をつくと、長いまつげを伏せた。


「涼介。お前、どのくらい大学にいるんだ?」
心配した史浩が様子を見に来ていた。

「さあな・・・」

無精ひげを生やした涼介が自嘲気味に呟いた。

実際、どのくらいの日が経ったのか、ハッキリしなかったからだ。

毎日ボーッと、無気力に過ごす涼介を、”恋患い”
(お相手は美人で年上のお姉さん、はたまたダンナのいる熟女か)
などといった噂が飛び交ったりもしていたのだった。

「啓介と、何かあったのか?」

びっくりした顔をする涼介に、史浩は呟いた。
「こっちもか・・」

(どうして分かった・・・?)
無言の問いに、史浩は、

「お前達兄弟と何年つき合ってると思ってるんだ?」

と、軽口をたたく。

「啓介も、お前のコトで相当悩んでるみたいだな」

「逃げてたって、何も解決しないんじゃないか?」

(史浩らしい言葉だ・・・)
少し、ホッ、として涼介が微笑んだ。

「・・・そうかも・・しれないな・・」

(家に帰ろう)

涼介は初めてそう決心した。

「それでだな・・涼介。実は啓介が来てるんだ。」

「何?」

いたずらっこのように史浩が片目を細めた。

今来ているとなると、話は大分違う。
帰りながらも考えなければならないコトが沢山ある。
今啓介に会っても・・・。

涼介は目を見開いたまま考えを巡らせる。
実は彗星様は往生際の悪いトコロもあった。

「・・・涼介・・・その、目を見開いたまま考えるのやめないか?」

ん?、と気がつくと、周りの人間が怯えた顔をして見ている。

彗星様は何をしても目立つのだ。(笑)




「アニキ・・・」

大学の門の外で、スラリとした金髪の青年がそう呼んだ。

自分の大切な家族、弟でもあり、それ以上に大切な存在。

「啓介、帰ろう」

涼介は、そう言ってニッコリ微笑んだ。




こういう展開になっていくとは・・・
自分でもビックリです。(笑)
○○編としたのは数字つけるのに飽きたので・・(汗)
そして○○編へと続く・・(よかった、あんまり暗くならなくて・・)

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