目覚め


(いつもより早く目が覚めちまった・・・・・)
外はまだ薄暗い。
何故こんなに早く目が覚めたのか・・・昨日の夜を思い返してみる。

(・・・そういえば、昨日は早く寝たんだっけ・・・)
ボンヤリと思いだし、大きなあくびを一つすると、
啓介は、ぼさぼさの頭を掻きむしりながら、ベッドを出た。


顔を洗ってサッパリしたところで、啓介はすることがなくて困ってしまった。
(アニキは起きてっかな・・・?)
静まり返った廊下を音を立てないようにゆっくり歩いた。
(起こしたら大変だよな。)
珍しく、啓介は静かに、涼介の部屋のドアを開けた。
「アニキ・・・。」
小声でそっと、言ってみたが、応答はない。
(やっぱ寝てんだな・・・。)
ふと、普段、ほとんど見せたことのない兄の寝顔を
見ていこう、という好奇心から、啓介は、ベッドにいる涼介の顔を覗き込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・」

(疲れてンだろなァ・・・。グッスリ寝てるぜ・・。)
涼助の、黒曜石のような瞳が閉じられている、
・・それだけなのに、元々端正な顔立ちが、際立って見える。
長い睫毛や、うっすらと桜色に染まっている唇も、何故かとても色っぽい。
(・・・・アニキって、美人だったんだ・・・)
啓介は、兄の顔に惚れ惚れと魅入って、ため息をついた。
そして、無意識に、兄の柔らかい前髪をそっとかき上げたりしているうちに、
啓介の指は、瞼や頬をなぞるように触れると、唇にたどりついた。
(・・・アニキ・・・)
キスをしようとして、涼介に触れる瞬間に、我に返った。

(俺!!アニキ相手に何やってんだよ!?)
カーッ、と、頬を赤く染めると、啓介は急いで部屋を出た。





(・・・・・・・・・・・啓介・・)
慌ただしく啓介が部屋を出た後、涼介はゆっくりと目を開けた。
・・・本当は、啓介が来た時から、目が覚めていたのだ。
(・・・お前をおどかしてやろうと思っていたんだがな・・)
思わず、目に手の甲をあてて目をつぶると、前髪をかき上げた。
啓介があまりに熱心に自分の顔を見ているので、
起きるに起きられなくなってしまったのだ。

(まさか、こんな事になるとはな・・・)

啓介の気配が少しずつ近づいてきたとき、弟のしようとしているコトに
気づいていながら、涼介は何もしようとしなかった。
(・・・・・どうかしてるぜ。俺も・・・)

本当は、啓介がしたいと望んだコトを、
自分も望んでいたのかもしれない。

・・・・そんな気がした。

男にせまられたコトは、一度や二度ではない。
けれど、いつだって嫌悪感を感じていたし、相手には、 それ相応の報復をしてきた。(・・・らしい・・)

(・・・だが、さっきは全然嫌じゃなかったんだぜ・・?)
それどころか、啓介が行ってしまったことを残念にさえ思っている。
「・・・啓介・・・」

これからどうなるのか・・・、
そんな想いを抱えて涼介は、目を閉じた。




最初の頃に書いた小説です。ほんと節操ないヤツですみません。
啓涼だと暗いなぁ、とUPするのためらってたんですが、
”どこでもいっしょ”UPしてから吹っ切れました。(笑)

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