1限めはやる気の民法(全2巻)
1996年〜2001年MAGAZINE BE×BOY・同人誌掲載


「1限目はやる気の民法」は私が1番最初に読んだよしなが作品です。
最初のページの「帝能大学ア法学部」にまず笑い、その後出てくるチャライゼミに自分の学生時代を重ね合わせ
そして何より温和で押しの弱い藤堂兄に魅せられました。
2巻読み終えてユーモアと優しさとH満載なよしながワールドに完全に捕まり、その後怒涛のように全作読み漁ったわけです
・・。



(1巻) 1限めはやる気の民法

 法学部の田宮は付属上がりの生徒が巣くう超ド楽ゼミに入ってしまい、新歓コンパで「人間ホルマリン」を強要されることに・・同じ3年の藤堂にキスで助けられます。
 お金持ちのぼんぼんばかりの乱れたゼミで田宮は一人だけ勉強に励み、その上まともな金銭感覚を持つため浮いた存在となります。が、藤堂はマイペースな彼に魅かれて行きます。
 ある日政治家である藤堂の父親が収賄で捕まり、友人達の態度が一変。そんな中、田宮だけは藤堂を助け、テストを切り抜けます。ノートを投げつける田宮に優しく微笑む藤堂と
「俺、田宮のそういうとこ好きだなあ」と言うコメディ顔の彼が可愛いです。
 藤堂は田宮に同じゲイの匂いを感じて誘いますが、田宮は自覚することができずに拒絶・・。それでも「友情」は序々に深まっていく彼らなのでした。

2限めはあぶない刑法

 田宮は代理でやって来た池田先生に淡い恋心を抱きますが、ゼミの女子生徒と交際していることが判り見事に失恋。これがきっかけで自分がゲイだと自覚します。田宮はショックのあまり藤堂に関係を持とうと迫ります。
 先生の事ばかり口にしていた田宮にイヤな顔一つせず、優しく涙をぬぐってあげる藤堂の手が印象的です。
 結局、事に及ぼうとした途端ひるむ田宮ですが、ここから藤堂が男らしいです。
「好きにしろって言ったのは田宮でしょ」は強引でかなりカッコイイ・・・。ところがやる時はやるのかと思いきや、田宮だけ気持ちよくしてネンネさせてお終いでした。その上翌朝はお粥まで作ってあげて・・藤堂、優し過ぎ。
 自分の醜態を詫びる田宮に惚れ直す藤堂ですが、何故か株は上がらず、
「今まで通り友達でいてくれな」とお願いされてしまいます。「あれ?」と言っているトホホな藤堂が可笑しいです。

3限めはけだるい商法

 4年に進級した2人の周囲は親のコネで就職しようという人間であふれ、相変らず軽いノリ。
 2人の関係は大きな進展は見せないものの、田宮は少しずつ藤堂に心を開いているため、ある夜熟睡している彼に悪戯をしかける藤堂・・。背後から抱きしめながら
「うわー何だかこれって寂しい変質者みたーい」と呟く彼は可笑しいですが、田宮の気持ちよさそうな寝顔を見て、それ以上進まないのがこの人のイイところ。その上翌朝は美味しい朝食まで用意する健気な乙女ぶりです。

 ある日2人の共通の友人である寺田さんが彼氏にH写真を投稿されてしまいます。そして何故か寺田さんの彼氏が藤堂だという噂が流れ、田宮は藤堂に
「信じてるから」と言いつつも心中は複雑です。

 「1限め・・」1巻の影の主役はこの寺田さんです。才色兼備で空きが無いように見えますが、乱れたこともできるバランスの取れた人。付属上がりでも地に足がついていて、人の痛みも判るイイ女です。こんな弁護士さんが身近にいたら頼りになって最高〜。彼女の
「あたし達3ケ月後には学生じゃなくなるのよ、それってけっこうすごいことよ」は大きく頷ける台詞でした。
 
 ワンマンな父親のせいで、藤堂には自分の将来を決める自由がありません。これに対し司法試験に合格し、どんどん男を上げる田宮はゼミでもモテモテ。突然態度を変えた仲間にムッとした田宮は藤堂の膝で甘えます。それなのに札幌の実家に帰ることを匂わすため、藤堂は寝ている田宮に悪戯をしかけます。が、今度は気付かれた上に睨まれたので行為を中断。 翌朝豪華な朝食で田宮のご機嫌を取る彼の気の小ささは可愛くて、田宮が序々に女王化しているのも笑えます。
 藤堂は田宮の餌付けに熱心ですが、前日から買い物に余念がないのが凄い!あのメニューなら献立をかなり考えているのは確実です
(ズッキーニのオムレツ・アボガドのサラダ・ライ麦パン等々・・おしゃれ!)
 それにしても田宮の寝つきのよさは天下一。あんなイイ男が添い寝しているとゆーのに熟睡とは・・・ほんとにゲイなのか田宮・・? 

 
 
ゼミ仲間4人に一人20万で卒論代行を頼まれた田宮は「ガッコなめんのもたいがいにしろよ!」とスパーッと断ります。つきあって欲しいと告白された女の子にも「女とセックスする気になれない」とカミングアウトして、とにかく男らしいです。正論をはっきり言える真面目君はとても魅力的で、藤堂はますます田宮にはまります。が、いきなり実家に帰ると宣告されて、田宮にディープキス・・。結局その夜2人は関係を持つことになりますが、今ひとつ恋に踏み切れない田宮を尊重してか藤堂は深追いしません。
 キスする前に口を大きく開ける藤堂にドキッとさせられます。普段低姿勢なために田宮を攻める彼には突然「男」を感じ惚れ惚れです。このHシーンは台詞無しで進んで行くため、お終いの
「さよなら」はとても効果的で切ないものでした。

 大学卒業後、田宮は大学院に、藤堂は親と決別して本当に進学したかった理工学部に編入します。偶然学内で鉢合わせした2人の
「セックスしていい?」「友達としてなら」は今後の進展を予想させられます。
 学部を変わっても藤堂のいかれたポニーテールは健在でしたが、こんな髪型でも「攻」が様になるのはこの人くらいのもの・・。ラストの「どうして俺ってどこまでいっても世間の水が甘いんだろう」にも笑いを誘われました。

 「帝能大学」はおそらくK大がモデル・・、ウヨウヨ居そうですね、変な金持ちが。とにかく付属上がりの甘ちゃん達がリアルで面白い作品でした。



(2巻)その後どうした田宮と藤堂

 前巻から7年が経過。田宮は大学の先生に、藤堂は引き続き院に残っています。
 2巻の藤堂は田宮に対する愛がフルパワー全開なのでかなりのアホタレぶりが披露され、田宮は女王ぶりが板につき、ますます美しくさに磨きをかけています。
 2人は同棲していますが、驚いたことに田宮は7年間Cを拒否。かなり低姿勢に挿入をお願いしても断られる藤堂・・。それでも
「ごめん田宮、確かに俺だけの都合だ」と引いてしまう彼は本当に人間出来ていて優しいです。
 ある日、自分のために藤堂が研究者にならない道を選んだと誤解した田宮はきちんとセックスすることに積極的になります。2人の密着キスシーンと○○中の藤堂の眼差しがかなりツボで、その上笑えたのが
「けど俺はお前の女房じゃねーっつうのー・・っ!!」と絶叫しながらいく田宮でした。
 その他、Hシーンからいきなりキリッとする田宮の「業務用!」とホモ疑惑にうっとりする女子学生も爆笑できました。

藤堂のレーゾンデートル
 
 藤堂はゲーム会社を始めて大忙しの毎日。田宮は相変らず寝つきがいいので夜の生活もすれ違い。そして激務の藤堂に代わりに家事を始めた田宮は、料理の上達ぶりも華々しく何でもそつなくこなします。藤堂は自分が尽くすことで安心を得ていたので、手料理で田宮を喜ばすことができなくなった彼は存在理由に不安を覚えます。
 ところが、ある夜自分の名を口にしながら一人Hする田宮を目撃。俄然自信を取り戻し、超鬼畜になることを決意します。鬼に挑む藤堂のストリップシーンは目つき・ポーズ共に爆笑で、訳の判っていない田宮も可愛くて最高です。
 結局焦らしに焦らす攻めで散々田宮を泣かしてしまった藤堂は蹴りを入れられてしまう始末・・。涙目から怒りに転じる田宮の表情は頭が冷えていく感じがよ〜く出ていて抜群でした。

 このお話で初登場の足立君はとてもイイ味を出していて、彼の藤堂理解度と冷めたもの言いには拍手を贈りたい。そして2次元キャラしか愛せないという所に妙に共感・・・2次元は素敵です。色あせないし、衰えない(笑)。

 
大学教授は優秀な学生に恋をするか?

 このお話から藤堂弟が登場です。ヒロちゃんは無暗やたらにカッコよく、むさ苦しい兄に比べると色気も10倍増し。頭のよさも抜群で3年生で司法試験に合格・・でも兄に似てゲイ、しかも老け専なのでした(笑)。

 この藤堂弟の優秀さに目をつけた伊藤先生はゼミに残ってもらいたがため、藤堂弟の願いを聞き入れます。望みはなんとセックス・・。で、この条件をあっさりと呑んでしまうイトキューにはビックリですが、更に驚きなのが無事○○できてしまうこと・・嫌悪感とかためらいとかないんですか?それとも元からゲイの素質が・・?!そしていたした後ゼミに残る誓約書を藤堂に書かせ、ルンルンなお花ちゃんに・・。あげく
「僕があんまり悪辣なことするんで失望した・・?」ときたもんだ!悪辣なのは弟だと思うのですが・・とにかく擦れてなくて可愛くて真っ直ぐで、「次回に期待させていただきましょう」と最上級の微笑みを先生に贈る藤堂の気持ちがよく判ります。

 この優秀な弟の存在を知った田宮もヒロちゃんの頭脳に惚れ惚れ・・藤堂兄と××に没頭しても、終わった直後に弟の存在を思い出すほど。振り出しに戻ったことになげく藤堂兄が爆笑です(P.106)

愛ある生活
 
 「愛ある生活」はヒロちゃんの虜になってしまった伊藤先生がひたすら乙女で可愛いお話です。
 2人の関係は条件付きで始まったために、本気になりつつある自分をイトキューは持て余しています。
 ある日藤堂と電話中、背後で親しげに
「ヒーロちゃん!待った?!」と声をかける男の声を聞き、先生は思わず電話を切ってしまいます。焦った藤堂弟は電話ごしの声は兄であったと誤解を解きに行き、本気で先生を好きだということを告白します。
 藤堂弟から「兄」だと告げられた時の先生と
「勝ってに好きになっちゃったりしてごめん・・」の涙はもう絶品!可愛いことこの上ないです。
 ××中のヒロちゃんもひどくカッコよくて、フェラされながらて
「つ」ていう表情は最高・・。「愛してる久雄」はズッキューンな殺し文句でした〜。
 藤堂弟は無表情で冷静に見えるので、こーゆー情熱的なところを見せられるとハマリます。兄を
「おにーちゃま」と呼んでいるのも意外で可愛いし、イトキューが年甲斐もなくヘロヘロになるのは当然です。

言えないけど好き
 
 7年たっても田宮ラブな藤堂はいつも直球。でも言葉で愛を返してくれない恋人にちょっと不安を抱いています。田宮に愛をしつこく確認した藤堂は逆に怒られてしまい、弟と足立君に泣きつきます。ところが2人にも藤堂の乙女な態度は「うっとうしい・重い・くどい」と非難され、それでも愛を深めたい兄は髪をスッキリ切って田宮好みの飲み屋で待ち合わせ。そんな藤堂を見ても田宮は始終無愛想。焦った藤堂の「こらえなきゃ貴明、泣いちゃダメ」と、結局こらえきれない「だはー」は爆笑です。
 田宮は髪を切ってパリッとした藤堂に惚れ直していただけで、結局とても照れ屋さんだったということが判ります。本当に好きじゃなきゃ××行為はできないと言う田宮の言葉はもっともで、7年も一緒にいて不安になる藤堂は本当に純粋で乙女・・・泣いてる姿は女っぽいし、なんでこの人が「攻」なのかという疑問は残りますが、田宮も
「愛してるよ健介」で真っ赤になってしまうあたり(←名前を呼ぶのが重要らしい)お互い様でした。
 それにしても健介、美しい顔とは裏腹に下言葉が直球ー!全ては「照れ」のなせる技。

彼は美しい人だった
 
 高校1年のヒロちゃんは2つ上の先輩(もち男)と只ならぬ関係。可愛くて献身的なヒロちゃんと佐々木先輩は最初はいい雰囲気ですが、年月を経るにつれ先輩の態度は酷いものに・・。佐々木は自分の司法試験が上手くいかない鬱憤を藤堂で晴らしていて、鬼畜攻にされるヒロちゃんは可哀想です。当然2人は別離となりますが、その後佐々木はノイローゼとなり大学を辞めてしまいます。
 伊藤から先輩の噂を聞いた藤堂はお見舞いに行きますが、全く普通の会話はできません。
 佐々木は藤堂に対して「体だけの関係」という顔をずっとしてきましたが、正気でなくなって初めて
「好きだったんだ」と本音を呟きます。プライドが高く藤堂の優秀さにも怯えていた彼が、狂ってしまってから素直になるこのシーンは物悲しいです。
 帰宅途中、藤堂が伊藤に電話をかけながら言う
「大好きです」は、伊藤との関係を大事にしようとする誠実さの表れで、可愛い年上君に出会えた幸運が伝わってくるラストでした。
 でもこれで藤堂家のお家断絶は決定!薄情そうな父にちょっと同情します(笑)。

 佐々木に高校時代借りた刑法の本は著者が伊藤久雄・・・縁があったんですね。

TOPへ