雨が降っているのに気づいたのは車のライトが照らしたからだった。
虎鉄大河(17)は窓を開けて湿っぽい空気を胸一杯に吸い込んだ。
とにかく何かが果てしなく途方もなくどうしようもなく遠い気がして
それが何かすら判らないのってどうなのとか気がするだけだとか
こういうのってちょっとモラトリアムぽくていいよなとか色々考えた。
考えて笑おうとしたけど笑う方が苦しい気がしてただぼんやりと苛ついていた。
先刻から耳鳴りは止まらないし煙草なんかを吸う気にもなれない。
遠くからゆるく照らされた道路だけ雨が降っているようにみえた。
腕を伸ばすと柔らかな冷たさに肩の辺りまで不快な鳥肌がたつ。
窓の縁にだらしなく体重をかけていたので脇が灰だらけになって、幾度目かの溜息をついた。
何してるかな。
ふいに気の抜けた笑顔が浮かんだ、なんだか腹が立って、手の中に弄んでいた日の丸の
煙草ケースを握りつぶして叩きつけた。少し惜しい気もした。
明日、
部活行って、
猪里にあって、
猪里と話して、
猪里に怒鳴られて、
そんで、

いつのまにか瞼が閉じているみたいだった。
俺が、こんな風に、一緒に居ない時でも、居る時のことを考えてるなんて、
多分あいつは知らないだろう。知っても、まぁ多分、笑うか、そんなところ。

閉じた瞼を強くつむって暗いのを再確認した。
さ、生きよ。
もたれていた壁から体を引き剥がした。
















冬だよ。これ、かいてたの。
「生きよ」は、もののけ姫のあれでなくて、
「さ、帰ろっと。」みたいなノリのそれです。