2  リナゼルアメガウ                  IrekawarunZ

    

             

 ゼルガディス、のほほん。
 ガウリイ、ムスッ。
 どちらも普段あまりお目にかかれない表情だ。
「どうする。このまま町を出るのか?」
 ガウリイが普段の彼からは想像もつかないどこか皮肉げな眼差しでリナを一瞥した。一方のゼルガディスはうって変わって春先のそよ風なみに温和で爽やかな笑顔を浮かべている。
「俺は別にこのままでもいいぜ。全然知らない体って訳でもないんだし、どうせ長くても1日なんだろ?」
 そんな二人をリナとアメリアはなんともいえない表情で見比べていたが、申し合わせたように顔を見合わせ、
「気持ち悪いわね(ですね)、やっぱり・・・」
「ハモるなっ」
 ガウリイは傍の机を叩いて、
「事態を把握しとるのかお前らは!」
「あんたとガウリイが体入れ代わったんでしょ。見れば判る、つーかさ・・・」
 こめかみに当てた指をリナは「ガウリイ」に向けた。
「あんたはねー。まだいいのよ、もとがガウリイだから仏頂面も結構サマになってるし。問題はこっちなのよねー・・・」
「ん?なんだなんだ、どうしたんだ?」
「うわ。気色わる・・・その台詞をゼルの顔と声で言わないでガウリイ」
「そんなこと言われてもなあ」
「そーですよガウリイさんっ」
 アメリア、なぜかガッツポーズでぐっと拳を握りしめ、
「こんな陽気で呑気でお人好しそうなゼルガディスさんなんてゼルガディスさんじゃありません!そりゃあほんとにゼルガディスさんじゃないですけどっ」
「アメリア・・・」
 ガウリイ、もといガウリイの中に入ってしまった正真正銘ゼルガディスはじろりとおかっぱ頭を見据えて、
「それはつまり、普段の俺が陰気で苦労性の根性悪だと、そう言いたいわけか?」
 ずざざさざっ。
 音を立てて退くリナ。
「?」
「なに、あんた今まで気づいてなかったの?自分のそーゆー性格!」
「・・・・」
「この世界随一の「残酷な魔剣士」実は「お茶目な魔剣士」、とことん運無し甲斐性無しの貧乏くじ引きまくり人生男、女装と受難の似合うキャラ部門の輝ける第1位なんてあんた以外にいるわけないじゃないの!」
 微妙に表現が違う気がするけど・・・そこまで言うか(笑)
「・・・・(怒)」
「ち、違います違います!そうじゃなくって、わたしがいいたかったのはですね、その、あの・・・いつものゼルガディスさんのほうが、か、かっこいいな、って・・・あれ?」
「とにかく今日はこのまま待機よ。いい?」 
 頬を染めて俯いてしまったアメリアを尻目に、リナはふふんと鼻を鳴らして、
「試供品、とゆーことは利用者の声を求めてるに違いないっ。経過をバッチリ記録して本社に送れば、ごほうびもらえること請け合いだもんね(はあと)」

             

「なーリナー」
 ゼルガディスは情けなさそうに腹をさすりながらベッドから起き上がった(ここから先、しばらくはガウリイとゼルガディスが入れ代わったままだと承知の上で読んで下さい)。
「飯食いにいかないかー?俺、腹減っちまった」
 ベッドに背を向けて机で経過を書き綴っていたリナがゆっくりと振り向く。その顔には縦線が・・・。
「いーかげん声には慣れたけど・・・・いざ見るとやっぱ・・・・不気味ねー」
「ん?」
「なんでもないなんでもない。さっき軽食持ってきてあげたでしょ。もう食べたの?」
 (ごほうびをわんさかせしめるため)綿密に観察を行いたいというリナの主張で、パーティは二手にわかれて宿屋の部屋に缶詰めになっているのだ。ゼルガディスは枕許に置かれた皿の山(もちろん空)を恨めしげに見やり、
「サンドイッチ7人前じゃあなあ。・・・うう、も、もう限界・・・」
 しおしおと細い体がへしゃげ込む。放っておいたらほんとにそのまま萎び果ててしまいそうだ。
「しょうがないなー」
 リナは肩を竦めて壁時計を見上げ、
「ま、そろそろ夕食時か。そうね。あの子達も呼びにいきましょっか」
 キシャーン!
 瞳を輝かせ、とたんにゼルガディス完全復活。
「さんせーさんせー!!よーしっ。リナー!行くぞー!!」
 緊急時のため武器だけは本来の持ち主に揃えてある。うれしげに大振りの剣を掲げ、埃を蹴立てて一目散に廊下を走り去っていくゼルガディスの後ろ姿を、リナは、
 リナは・・・・
 無言で見送った・・・・。
「なんか・・・やっぱついていけないわ、あのノリには・・・」
       

        

         
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