スレイヤーズとの出会い

                                  

第1ステージ 誤解

 直接の出会いは数年前。よく憶えていないのだけど、今思うとどうやらNEXTが終わった頃、TRYが始まるまでの間のことだったらしい。妹がスーファミ版スレイヤーズを手に入れてきたのが始まりだった。
 当時の私が「スレイヤーズ」なるものについて知っていることといえば、原作が小説で、たいそう人気があって、サブタイトルはひらがな表記で、主人公がリナという名の娘であるというくらいで、要は何も知らなかったのである。知らなくてもゲームは(ふつう)できるようにつくられているものだが、原作つきなら話のあらましとかを知っておきたいタイプである私は、ゲームを始めるにあたってスレイヤーズを知っている妹に聞いてみた。
私「リナってどんな子なの?」
 妹はちょっと考えて、
妹「ほら、ファンタジー系ってよく塔とかのてっぺんにラスボスが居たりするじゃん」
私「うん」
妹「下から登っていくよね、ふつう」
私「そうだね」
妹「リナは塔ごとラスボスを吹っ飛ばすの」
私「・・・・」
 これが喩えでなかったことを私が知るのは後のことになる。
 この調子であれやこれやと聞いた私。客観的に物事の本質・特質を言いまとめるのに長けている妹は、容赦ない一言で本編とすぺしゃるのあらすじや人間関係などを教えてくれた。ただ彼女は興味のないものについては無意識のうちに記憶力を働かせずに済ませることができるという合理的な感性の持ち主で、真性ゼロスファンで、ゼルガディスとアメリアに興味がない。そして注意していただきたい。私はこの時点でスレイヤーズに関する活字を何ものも目にしたことがなく、全て妹の声から情報を得ていたことを。
妹「あとゼルガディスっていう男がいてー、顔に岩がくっついててー」
私「岩が?!」 ←姿を知らないので話が読めない
妹「なんか合成されてるらしいよ」 ←すごくどうでもよさげ
私「ふーん。ゼルガデスねー」 ←深く考えない人
 かくして私は、非常に広範囲に渡るゼロスについての知識とこの手のあやまった情報とともに、スーファミのコントローラーを握ったのだった。
                
 ちなみにこの後一年ほど、私はずっとゼルガデスだと思っていました。TRYを観ていてなおゼルガデスだと気づかなかったですよ。ええ・・・・
                    
 しかしほどなく私は自分の致命的な失敗を気づくに至っていた。
 魔法が、まほうがわからない!!
 ファイヤーボールとかフリーズアローとかリカバリィならまだいい。字面で効果が予測できるからである。が、エルメキアなんとかだのダイナストなんたらだのはいったい何?何のことなの!?
 さも当然のようにずらりとならぶカタカナオンリーの魔法の数々。そう、このゲームは魔法やアイテムの説明などが一切つかない、本当にファンの人向けのゲームだったのだ!!
 ていうか簡単な説明or漢字表記ぐらいつけて欲しかったなバンプレストさん・・・・
 原作その他を知らない私は当然スレイヤーズの魔法体系を知らず、おまけになまじ平凡なゲーマーであったために「ケアル・ケアルラ・ケアルガ」あるいは「メラ・ヒャド・パルプンテ」といった魔法体系が頭に入っていたりする。魔法という同じ呼び方に騙され、この既存体系がスレイヤーズにもあてはまると無意識のうちに考えてしまった。もちろんあてはまるはずがない。混乱する私。しかし混乱しながらファイヤーボールだけでも進めていけるところがスレイヤーズである。
 そしてその頃、テレビではTRYの放送が始まっていたのだった。

                    

第2ステージ 顔合わせその1

 ある夕方。
 何気なくテレビをつけた私の目に飛び込んできたもの。それは土煙を蹴立てて黄金のピラミッドへ走り込むオレンジの髪の少女の姿。
 ・・・・なんじゃこりゃ?
 なんだかよくわからない。けど面白い。原作・前作と比較して好き嫌いが別れるところなのは今となっては重々承知だが、私はこういうノリが好きな人である。わからないままぼんやり観ていると、リナだのなんだのという言葉が耳に飛び込んできた。聞き覚えのある名前のような気がする。なんだっけ。考えても思いつかなかった。のんびり進めているゲームではまだガウリイまでしか本編キャラは出ていなかったし、リナの髪型も衣装も違う。「スレイヤーズTRY おわり」というお子さま向けのロゴを観てはじめて、それが噂に聞くスレイヤーズのアニメ版であることを知った。そしてそれがゼルガディス・アメリアとの初顔合わせでもあったわけである。

 二人に対する私の第一印象は月並みで(もちろんその時はふたりがゼルガディス・アメリアという人物であることを知らなかった訳だが)、「戦隊物の怪人面したにーちゃん」と、「甘えんぼタイプのかわいい女の子」であった。
 この時私の中で一番衝撃だったのはアメリアなる少女の役を鈴木真仁さんがやっていたことだった。うちは基本的にりぼんっ子で、「赤ずきんチャチャ」のギャグっぷりをこよなく愛していたがためにアニメになったおりにはめいいっぱい期待して観、ショックのあまり轟沈したクチである。日高さん・・・一人で浮いてた・・・ほんとうに・・・。そしてアメリアはチャチャ・・・。
 でもアメリアはとても似合ってて可愛かったです。今さらいう間でもないですけれど(笑)
 ただ少々意外ではあった。聞いていたアメリアのあらましは「いわゆるロリ系。胸がおっきくて正義を語っては敵を殴り倒す。職業は巫女。身分は姫」といったもので、そこから私なりに漠然とアメリア像なるものを考えていたのだけれど、思っていたよりずっとしっかりした元気な子でした。ゼルガディスについてはほとんど前情報がなかった(妹が彼にまったく興味を持っていなかったため彼についてのほとんど情報を持っていなかった)ので彼の顔にほんとうに岩がついていることに素直に感心しただけですんだけど、妹はゼルガディスの声優さんがテイルズオブディスティニーのリオンと同じ人だと知ってなにやら衝撃だったようです(笑)

                    

第三ステージ 顔合わせその2

 スーファミの旅はマイペースにのんびり続く。ゲーム中盤、ゼロスにおいてけぼりにされたリナとガウリイ(と私)は、おそるおそるダンジョンの中へ。すると・・・
 居る。
 何か・・・何かいる!!
 スーファミのカクカク画面で見えにくいのだが、なにやらダンジョンの一角にぽつねんと、何をするでもなく人影が正面を向いたままつっ立っている。
 敵だ、とスレイヤーズ慣れしていない単純な私は考えた。こちとらあんましレベルが高くない。おまけにアイテムもさほど持っていない。できる限り接触したくない。しかし自慢ではないが私はコントローラーの操作がものすごく下手である。
 にゅっ
 とおりすがりざま思いっきりリナを人影に突っ込ませる私。
私「ひ!?」
人影「リナ!」 ←リナじゃないの、とかだったかもしれない。

 アメリアでした・・・・。
 そしてこの時初めて私は、原作とアニメでアメリアの設定にかなりの違いがあることを知ったのだった。ちょこちょこ覗くようになっていたネットのページによく「アニメのゼルガディスとアメリア」とかいう注意書きが添えられてあってどういうことなのだろうと思ったりしていたのだけれど、なるほどこういうことであったのか。私などはアメリアに関してはアニメから入ったので、リナにため口をきくアメリアというのがなんだか不思議でしょうがなくて、この違和感は正直今でもあったりするのだけれど、でも「ただの姫でいるより人生太く短く!」というアメリアも、パワフルでカッコ良くて私はとても好きです。特種攻撃が正義の鉄拳というのもグー(笑) 
 それにしてもゼルガデス(この頃はこう憶えていたですよ)が出て来ない。アニメでも小説でも一応レギュラーらしいし、ゲームでも「その道では有名なキメラ」とか前ふりがあったので出てくるはずなのに、未だ影も形もない。
 訝しく思いつつもフラグーンをうろうろする正義の仲良し三人組。強いザコ敵に悩まされていた彼ら(と私)に、こんどは突如横合いからするりと駆け寄ってくる白髪モンスター!!!
 もはや何も言うまい・・・・。
 ゼルガディスでしたさ(爆)
 そしてそのステータス画面を見てようやく、私は彼の名がゼルガデスではなくゼルガディスであることを知ったのだった。そしてそして、彼に関しては顔もカラーリングも雰囲気も原作とアニメでほんとにかなり違うと言うことを、この時初めて知ったのです。
 アメリアはリナとため口をきく・・・・
 ゼルガディスはゼルガデスではなくゼルガディスで、かつつぶらな瞳の白髪男・・・・
 それがスーファミを通して私が学んだスレイヤーズのもう一つの真実でした。
                
 リナをはじめとする破天荒なキャラ達の豊か極まりなき(?)個性と、独自の社会体系魔法体系を確実に持ちながらこういったパラレルな面白さや自由さも合わせ持った謎の世界に惹きこまれるよーに、それから私はなし崩しにスレイヤーズにはまっていったのです。フフフフフ。

                        
                              

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