さわって かわって


肌の感触が好きだと思う。
いつまでも撫でていたくなるような極上の肌。
時々くすぐったそうに眉を寄せるのも、男としてはソソられる。
まぁ、そんなこと言ったら怒られて殴られるのがオチだけどね。でもいいんだ。
ナゼってそんな顔も好きだったりするから。あ、これ、ここだけの話しね。
その肌に触れられるだけで幸せなのに、密の手のひらが俺の体を撫でてくれたりしたら。
本気で涙が出そうになる。好きだなって思う。
ほら、今日も。

「密、好きだよ。」
突然みたいに抱きしめられた。先程から抱き合ってはいたのだけれど。
自分に触れてくる人の体温を確かめるために手を伸ばして、体のパーツを確認するように撫でた。そうしたら、突然きつく抱きしめられたのだ。
「俺、密にさわられるの、大好き。」
素直な言葉を都筑は微笑みながらこぼした。
密にはその笑顔が今にも泣き出しそうな表情に見えて、抱き返すようにして、都筑の首に腕を回した。
少し、体温が上がる。

丁寧に首筋から耳朶を舐め上げられて肌が粟立つ。
でもそれは、嫌悪からじゃなくて…。
「最近、さ…」
「え…?」
突然話し始めた都筑の声に、薄く瞳を開いた。
「密、その顔色っぽい。痛て。ん、最近、密触られるの嫌がらなくなったなーと思って。」
それは。密は危うく言葉に出しそうになったのをすんでの所で堪える。
「俺以外の人には触られるの嫌がっていいよ。」
都筑は冗談みたいにして笑うけど、少しだけ本音が混じっていたりするのは密にはお見通し。
ぎゅっと耳を密に掴まれて、都筑は支えていた腕のバランスを崩しそうになる。
「…お前がいっぱい触るからだろ。ばか。」
都筑は時々怖いくらいに察しのいい大人のオトコだったりするから、そんな言葉の真意も簡単にくみ取った。
「じゃあ、もっと変わって。」
キスはチョコより甘かった。

「つづ…き…」
「密の肌、気持ちいい。」
そう言いながら指が脇腹を撫で上げた。密の体がびくんと跳ねる。
息を吹きかけながら、その肌を味わう。指での愛撫もやめない。
胸の突起を唇で弄ぶと密から甘い声があがる。
「んぅ…あ、やぁ…んっ」
「ここ、気持ちいい?」
素直に頷く密を見て満足そうに微笑む。
もっと触って。もっと変わって。
二人とも言葉にしないけど、きっと同じ思い。
触れる都筑の指で、甘くとろけていく密の声。甘い密の声で熱を生む都筑の体。何もかもがお互いに作用しあって、二人を高みに押し上げる。
切なそうに震える密の両脚の間に手を伸ばし、すっかり張りつめているそれに愛撫を加える。
「やぁ…都筑ぃ…あぁっ…」
一際高い声で都筑の名前を呼んで密は達した。
荒く息をつく密の髪を撫で、額に口づける。まだ、熱の引かない潤んだ瞳で見つめられるとなけなしの理性が散っていく。
「密…していい?」
ちらりと視線を動かして、瞳を伏せると赤い顔の密は小さく頷いた。
ゆっくり、時間をかけて解して自身を密の中に押し進める。
淫猥な音と、甘すぎる密の声にクラリと酔いしれて密の体を貪った。
やがて体が痺れるような感覚を伴って、熱を解放する。

しっとりと、情事の名残を残す密の肌に自分の体を密着させる。
「苦しい…」
胸の辺りから聞こえた声に少しだけその力を緩めた。
「ひそか…。」
「なに…」
「呼んだだけ。」
「ばか…」
そう言いながらもぎゅうっと抱きついてくる恋人が可愛くて、またキスをする。
何度も何度も、くりかえし。
「ね、密。俺な、密とキスできるようになってからキス好きになった。」
「……」
密の顔だって前よりも柔らかくなったって知ってる?
出会ってからお互いたくさん変わったみたい。だからもっと、触って?
心の底から幸せだって、思えるから。

変わることは怖がらずに。ねぇ、さわって。

 

fin.

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最後の一文が変態ぽいです(泣)