「カルマ、寝かせ…く……」 保健室の扉を開けるやいなや、黒髪の青年はずるずると床に倒れ込んだ。 窓を開け、学校の近くにある紅葉の紅葉[こうよう]を眺めていた校医は「やれやれ」と苦笑いしながら来客に近づく。 「パルス君、こんなところで寝たら風邪ひきますよ?」 返事がないことを解っていてもついそう言いたくなる。 男子校の校医、カルマは自分より幾分長身生徒を抱き起こし、保健室に二つしかないベットに運んでいった。 今年、カルマがこの学校の校医に就任してからパルスとカルマはずっとこうだった。 最近、変わったことと言えば、2人の関係。 パルスが「好きだ」と、想いを告げたこと。カルマもその想いに答え、2人が恋人同士となったことだ。 カルマは、この男子校に来てから次々と何人もの生徒から告白されていた。その度に断っていたのは、生徒と先生という関係のこともあるが(もちろん男同士というのも)、多くはパルスがいたからだ。 パルスとカルマは、前からの知り合いであった。 パルスの兄とカルマが友人でその関係でパルスとも面識はあったのだ。 だが、たまにパルスの家で顔を合わせた時に、カルマが話しかけてもパルスは気のない返事をし自室へと姿を隠してしまう。その繰り返しだったので、あまり仲が良かったわけでもない。 しかし、カルマがパルスが通うこの学校に校医として就任して以来、既に保健室の常連だったパルスとよく話すようになり、関係は向上していき、今に至る。 「貴方は高3……。後5ヶ月、ですね」 そっとパルスの手を握り、寝ている彼に微笑みかける。 「後5ヶ月したら、堂々と街を歩きましょうね」 カルマの言葉が聞こえたのか、寝ている筈のパルスが、笑顔を作った。 「約束、ですよ?」 その笑顔を一人クスクスと笑いながら、カルマは幸せそうに眺めていた。 「パルス君、授業に戻らなくて良いんですか?」 あれから30分ぐらいで目覚めたパルスに、“先生”の立場のカルマは言った。 「それが二人分のお茶を入れながら言う言葉か?」 パルスは笑いながら、カルマの急須を持つ華奢な手に視線をやる。 自分と同じ男でありながら、こうも違う、綺麗な手。その綺麗な手が自分の恋人の手だということを、パルスは自慢に思った。 「一応、先生ですから。パルス君も高3の大事な時期でしょう?」 どうぞ、と入れたばかりのお茶を差し出す。 開いた窓から入る秋の風が、カルマの金の髪を弄ぶ。 「私には授業よりカルマに会うことのほうが大事だからな」 パルスは茶化すように言うが、その瞳の輝きが真実だと語っていた。 「パルス君……」 カルマもそれを解っており、不謹慎だと解っていても嬉しさで胸をいっぱいにする。 「あ、あの頃、貴方の家に遊びに行ったりしていた頃、どうして話をしてくれなかったんですか?」 長い間不思議に思っていたことを尋ねる。それは、カルマが寂しく思っていたことでもある。 「あの頃から、お前のことが好きだったんだ。それで——」 そこまで言って黒髪の青年は照れくさそうに下を向く。 「あの頃から、私のことを?」 「ああ」 予想もしなかった答え。 真実を告げ、照れている彼をカルマはとても愛しく感じた。 「迷惑、だったか?」 「いえ、ありがとうございます。なんか…嬉しくて…びっくりして……!」 一瞬のうちにカルマの視界が暗くなる。すぐに最愛の人に抱きしめられていることに気付いた。 パルスの鼓動と温もりが心地よく感じられた。 「カルマは——、授業中に来られると迷惑か?」 上から振ってくる言葉に、カルマは腕の中から答える。 「いえ、秘密の恋をしているみたいで、楽しいです」 その言葉に、パルスは意外そうな顔をして、からかうように言った。 「“みたい”じゃなくて、秘密の恋をしているのだろう?」 「そうでしたね」 授業中の静かな廊下に2人の笑い声が優しく響いていく。 誰にも気付かれぬよう、2人で静かに確かめあって 離れずに 離さずに 秘密の恋でも 本物の恋だから Fin |
1808のリクエスト小説。 パルカル、甘々いちゃいちゃ、学園モノ。 またもやリクこなしてませんね。碧月、だから甘々かけないって(笑) 君の甘々はすっごい甘いんだ。(お゛い゛)俺はこれが手一杯。(爆死) というか、やっぱりカルマ攻め……(爆)ああ、書きながらも色々つっこみたくなる私はお馬鹿?(謎) あい、修行不足です。ごめんなさい。 なんか、謝ってばかりでごめんなさい(笑) |