White Christmas



 冬。ふゆ。winter。ウィンター。
 今年も例年通りの寒い日が続き、辺りは白い雪に包まれている。
道にはイルミネーションの赤や黄色、青が光り輝き、街の景色は慌ただしく変わっていく。
その日が近づき、音井家は大忙しだ。

「おい、カル…」
「シグナル君!それはそうではなくて!!」
「え?あ、ごっめんー」
「おい、カル……」
「ねぇ、カルマー。これ、ここでいいと思う?」
「クリスさん、こちらに飾ったほうがよくありませんか?」
「それもそーねー。うん、そーするわ」
「……カルッ…!」
「信彦さん、お友達をお呼びになるんですか?」
「ううん。呼ばないよ。親父達もいるし、家族だけでするんだ!」
 “音井家”といっても、すごく忙しいのは約一名だけ。
カルマ。音井家の家政婦的存在の彼だけだった。
「カルマ、カルマ」と引っ張りだこである。
 その対極にいるのがパルス。
何もしないと言うわけでもないのだが、ほっておけば一日中寝ているのではないか、と疑いたくなるぐらい寝ているので、そんなに用を頼まないのである。
「……はぁ」
 大きな溜息をつき、先ほどまで呼びかけていた彼に背を向ける。
グッドタイミングかバッドタイミングか、カルマがようやくパルスに気付く。
「あ、パルス君、何か用ですか?」
 忙しそうに体を動かしながら、顔だけはパルスのほうを向いていて笑顔だ。
 仕事を中断させたいのだが、それもできず、パルスは「いや、なんでもない」と答えるだけだった。
 元々こういう催し事や行事は苦手なのだ。だから、別に良いのだが……。
とついつい考えてしまうのであろう。パルスは恋人の側を離れた。
 事の始まりはクリスにカルマとパルスの関係がばれてからだ。
 誰にもばれない自信がパルスにはあった。
なのにクリスにばれたことは、パルスの一生で一番の失敗だろう。
 何げなく外に出、玄関の段になっているところに腰掛け、手に持っていた紙袋をじっと見る。
 なぜこれを、これだけのモノを渡してしまえないのか。
 クリスにこづかれながら、買ったモノ。
カルマへのクリスマス・プレゼント。
「これぐらいしなきゃ、すぐ逃げられるわよ!!」と言われ、そんなことはない、と思いながらも初めて買った恋人へのプレゼント。
中身は、自分でも笑ってしまうほど、変なモノだ。
だが、それしか思い浮かばなかった。
カルマに似合いそうな赤と緑のチェックのエプロン。
「もっと家事をしろっ」と、言っているようで何度捨てようかと思ったことか。だが、その度に思いとどまったのは、他に良いプレゼントが思い浮かばなかったからだ。
パルスは、このときばかりは自分の固い頭を恨んだ。


「おや、珍しい。今日は起きてるんだねー」
 上から振ってきた声にビックリして顔を上げと、スーパーの袋を両手に抱えている正信とみのるがいた。
「あら、その袋なぁに?」
 可愛らしい動作で首を傾げると、みのるはにっこり微笑んだ。
「これは、その……」
「大切な人へのプレゼント?」
「はぁ、まぁ……」
 言った後でハッとし、パルスは正信の顔を伺う。
「おや、今日はやけに素直だね。どうかしたのかい?」
 何もかも知っている、と言うようにニヤニヤ笑う正信の顔に、パルスはぞっとした。
 この人だけは、絶対敵にまわしたくない。そう思ってしまうのはパルスだけではないだろう。
「あ、そうそう」
 わざとらしく思い出したように言う正信に、パルスは体を硬直させて「なんでしょう?」と答えた。
「プレゼントも渡せないような人に僕の大切な兄さんを渡せないよ?」
 耳元まで近づいて小声でボソッとそう言うと、正信はみのると仲良く家に入っていった。
「若先せー……」
 一番気付かれたくなかった人に気付かれたショックで、パルスは項垂れた。


「パルス君?パルス君!」
 ぼんやりと瞳を開けると、一瞬にして金色が瞳の中に広がる。
それは段々形付いて、人の輪郭をつくった。
「……んっ、カルマ——?」
 パルスはぼんやりとしている瞳をこすった。
「こんなところで寝て、寒くありませんか?」
 くすっと笑うカルマは、何故かとても楽しそうだった。
 もう辺りは暗く、窓越しに見えるクリスマスツリーの灯りと、カルマの金髪だけが色づいている。そんな感じさえした。
「私は、寝ていたのか——?パーティーはどうした?」
 リビングに電灯はついていない。パルスには今が何時かさえも解らなかった。
「もう終わりましたよ。正信が『パルスなら部屋で寝てるよ。起こさないでくれって言ってたから、起こさなくても良いよ』って言っていたものですから……」
 若先生……。パルスは天を仰いだ。
「なのに、部屋へ行ったら貴方が居ないから。捜しましたよ」
「すまない……」
 玄関にいたのだからすぐわかりそうなものなのだが……、パルスはそう思ったが、口にはしなかった。
「いえ、別に良いんですけどね。こうして2人きりになれましたし。何を大事に抱えてるのですか?」
 パルスは、自分が何を抱えているのだろうと、手のほうを見る。それはあの紙袋だった。
「これは、……お前へのプレゼントだ」
 一瞬ためらった後、パルスはカルマへ紙袋を差し出した。
「私に、ですか?開けても良いですか?」
 意外そうな、でも嬉しそうな顔でカルマはパルスと紙袋とを交互に見る。
「あ、……ああ、いいぞ」
 パルスの返事と同時に、カルマは紙袋をごそごそと探る。
中から出てきたモノを見て、にっこりと笑った。
「ありがとうございます。これをつけてパルス君のために美味しいモノ、作りますね」
 カルマらしい返答に、パルスは笑った。
「ああ、楽しみにしている。今度は起きて待っているから」
 喜んでもらえた——。それがこんなにも嬉しいことだとは、パルスは思ってもみなかった。
自然と顔が笑顔になる。
「あっ!!」
 突然カルマが大声を出した。
「ど、どうした?」
「パルス君へのプレゼント、用意してませんでした!どうしましょ——!!」
 唇に自分以外の温もりを感じる。
それは、砂糖よりも甘く、気持ちの良いモノ。
「……っプレゼントは、しっかり頂いた」
「パルス君っ!!」
 もうっ、と言いながらも、カルマの顔は優しかった。
「あ、雪……」
「ホワイトクリスマスか。こう寒くてはサンタも大変だな」
 そうですね、と笑いあいながら二人は家へと入っていった。


「あ、そうそう。パルス君」
「なんだ?」
「ずっと私だけのサンタで居てくださいね」
「……ああ」


Fin



1500ヒットのリクスト、パルカル、甘くラヴラヴで……のハズなんだけど(死)
脱兎、脱兎、脱兎。
これしかありません。これに尽きます。(爆)
なんか、異様に楽しみにしてたみたいだけどもさ、こんなので御免。碧月。
これがわたしの精一杯。テヘッ(可愛くしてみたから許して/謎)
これは、奥ではカルパルですね。きっと(笑)カルマ君は攻めです。正信氏相手以外は(笑)
では。お粗末様でした。感想求むv



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