ゼフェルのお返し


 じりりりりりり♪ジリリリリリリ♪
 んっ・・・・うるせぇなぁ・・・・・・・・・・。
 いつものように耳障りな音がする。いつものように朝日がコンクリートに囲まれた窓から差し込んでくる。
 いつものオレなら、こんなランディの野郎が送りつけた時計なんかで起きやしないが、今日はちがう。
 訳?それは、アンジェが2月14日にくれた、オレの大切な宝もんに関係ある。
 2月14日といえば、世にいうバレンタインデイだ。
 はっきり言って、オレは甘いもんが嫌いだ。あの、どろどろしたのどに残るのが、たまらねぇ。まっ、アンジェがくれるもんなら、なんでも嬉しいけどな///////
 でっ、その日にもらったんだなぁ・・・・その・・・・チョコをさ・・・・・/////
 アンジェはその日のために、甘くないチョコっていうのを、調べてオレのために作ってくれたんだ。
 後からレイチェルに聞いた話だけどよ。
「もらった気持ちは返さないと」だとよ、レイチェルがな。
 でも、一ヶ月なんて早くてよぉ、気づいたら明日、ホワイトデイだぜ?
 話は戻るけど、早起きしたのは、その「お返し」のためだ。
 何てったって一日しかないからな。なのにオレは、何をやるかさえ考えてない・・・・・・・・ったくっ何がいいんだよっ。
 まず、アンジェは他の野郎にも贈ってたみたいだから、何贈るか聞いてくるか・・・・・。
 もちろんオレが本命だぜ!!
 おっ、マルセル!!
「おぃ、マルセル!!」
「わっ、ゼフェル!!早いねぇ。あっ、どうしよう執事さんや、洗濯のあばさんに洗濯物取り込むように言ってこなくっちゃ」
「どういうことだよ!!オレが早起きすると雨が降るみたいなこと言いやがって!!だいたい天候なんて女王陛下が決めることだろ!!」
「でもさぁ〜、ゼフェルが朝早いの陛下に見つかると、雨降るじゃないかぁ。日頃の行いだよねぇ。」
「なっ・・・・・・。ってオレはこんなこと言いに来たんじゃねぇ。おめぇさっ・・・アンジェに貰っただろ、バレンタインに・・・・・」
「うん!!可愛くて、おいしかったよねぇ」
「何返すんだよ。ホワイトデイに・・・・」
「んん〜、僕?アンジェが前ピンクのお花が好きだって言ってたから、ピンクのチューリップあげようと思ってるんだ」
「へぇ〜」
 じゃっ、次は・・・・・・・んっオスカーの野郎だ。
「ちょっとぉ〜。ゼフェルどこいくのさぁ〜。もぉ」
「よう坊や、なんだ・・・今日はやけに早いじゃないか。熱でもあるのか(笑)」
「・・・・・・・ったく、どいつもこいつもよぉ・・・・・おぅオスカーよぉ、アンジェにチョコ貰っただろ、バレンタインに。何返すんだよ」
「そんなに知りたいか?」
「・・・・・おっ、おうよ」
「お嬢ちゃんから貰った愛は、俺の愛をもって、返さなけりゃな。デートに誘おうと思ってるんだがどう思う・・・・坊や」
「なっ・・・・////それは絶対許さねぇからな!!アンジェはオレのもんだ!!////」
「ははは、冗談さ。オレはお嬢ちゃんもそうだが、世界中の女性みんな愛しているんだ、バレンタインもたくさん貰ったしな。お嬢ちゃんだけ特別デートなんて、他の女性に悪いだろ?」
「・・・・・・・・/////」
「まだまだだな。それじゃぁな坊や。あっ、そうだ、デートには、森の湖の、花畑がいいぜ」
 そういって炎の守護聖は去っていった。赤くなった鋼の守護聖を置いて・・・・。
 ったく、オスカーの野郎!!・・・・・・・・花畑か・・・・。


in私邸


 はぁ、コレまで聞いたのは、マルセルのピンクのチューリップ・オスカーの花畑でデート・オリヴィエのごっつい宝石がついてる鏡・ルヴァの物語の本・商人のうさんくさい花瓶・・・・・・・・。
 後は・・・・・リュミエールのアンジェを描いた似顔絵・・・・・・・か。
 ますます何がいいのか分からなくなったきたぜー。
 だぁ〜、どうしろってんだよ!!
 ジジジジッ
「ゼフェルサマ、ミネラルウォーターデシ」
 ったく、オレも便利なもん作ったよなぁ〜、オレってすげぇ。
 ん・・・・・・・そうだっ!!やっぱオレってすげぇ〜。


 そして、当日。


 おはようございます。アンジェリークです。
 今日は日の曜日。育成とかできないけど、これから外に出てみようと思うの。
 だって、とっても、イイお天気なの!!
 ガチャっ。
 バタンッ。
「おはようございます。アンジェリークさん。」
「あっ、おはようございます」
 コレは、寮でお世話をしてくれる、お姉さん。とっても、いい人なの。
 噂好きで、可愛い物が大好きな、レイチェルととても気が合うお姉さんなの。
 きっと私にお姉さんがいたら、こんな人だと思うわ。
「おはようございます。アンジェリークさん。オリヴィエ様から荷物が届いてますよ」
 コレは、この寮のおばさん。朗らかないい人なの。
「あ、はようございます。荷物ですか?」
「えぇ、持ってきましょうか?」
「あっ、いいです。見てきます」
 何だろう?誕生日でもクリスマスでもないし・・・・・。
 わぁ、お化粧セットだわ!!あっ、カードが入ってるわ!!
<アンジェリーク、バレンタインのチョコありがと★そのお返しだよ♪今日ホワイトデイだってこと分かってる?そのお化粧セット持ってくれば、いつでも、お化粧の仕方教えてあげるからね☆今日は出張でいないからだめだけどいつでもおいで☆>
 ホワイトデイ・・・・・そうだったんだ。
 ありがとうオリヴィエ様。とっても可愛いvvvvv


 それから私は、歩くたびに色々貰ってしまって(皆さんありがとう)まだ、お昼なのに一度寮に戻りました。
 わぁ、一杯ある。この商人さんの花瓶、お花を入れると、何もしなくても、六ヶ月も、お花が元気なんですって!!すごいわ!!
 ルヴァ様の本も、面白そう。オスカー様ったらこんなにすごい真っ赤な薔薇!!
 マルセル様のチューリップも可愛らしいし、ランディ様のも、リュミエール様のも、みぃ〜んな素敵!!
 コンコンッ。
 ・・・・・?何かしら。
「私ハ、ゼフェルサマノ私邸デ、働カセテイタダイテオリマス、ロボットデス。ウチノ主人カラデンゴンデス。<夕方、森の湖の花畑にきてくれ>トノコトデス。デハ」
 ジジジジッ。
 ジジッ。
 ゼフェル様から?・・・・・・・夕方に・・・・・。


in森の湖の花畑


 やべぇ〜、送れちまった。つい、あれを作ってるうちに、夢中になっちまった。
 おっ、アンジェ。やっぱ来てるぜ。
「おい。アンジェ!!」
「あっ、ゼフェル様(にこ)」
 /////なんて顔して笑うんだ。かっ・・・可愛い///
 赤い夕焼けが、二人のシルエットを作り出す。
「おめぇに来て貰ったのはだな・・・・・今日ホワイトデイだろ・・・・・」
「はい・・・・・・・・・」
「ほらっ、これ(包みを渡す)やるよ」
「・・・・?何ですか?」
「開けてみろよ/////」
「はい。(がさがさ)わぁ〜可愛いvvvvvvvv嬉しいです!!一生の宝物にしますね」
 うっ・・・・/////可愛い。さっきの笑顔よりかわいいぜ。
 そぉ、それは間違いなくこの日最高の笑顔でした。見た人誰もを優しい気持ちになれる・・・・。
「・・・・・・・・・・?」
 がばっ シルエットの片方がもう一人に抱き付いた。
「ぜっ・・・・・ゼフェル様!?あの・・・・・・」
「おめぇって、すっげぇ可愛いな!!」
「//////大好き・・・・です///」
「///オレも・・・・・愛してる」
 いつの間にか夕日のシルエットから月明かりのシルエットになっていた。
 優しく月光が二人を包み込んでいた。


 後日アンジェリークの部屋では、ゼフェルの贈った、お手伝いロボットが元気に花の水やりをしていた。

 

〜fin〜