Promise

Written by 琴姫


愛なんて、俺には縁のねぇ言葉だと思ってた。
幸せなんて、自分の手で掴みとるもんだと思ってた。
けど、いつからか、俺の中で何かが変わり始めていた。
愛は、あいつの為にある言葉。
幸せは、あいつなしには語れない。


聖地に季節はないが、その日は少し肌寒い日だった。
コンコン。
ここの所毎日と言っていいほど同じように執務室のドアがノックされる
「こんにちは、ゼフェル様」
予想通り、女王候補・アンジェリークだ。
「今日は天気が良いので、もしよかったらお出掛けしませんか?」
「おい・・・、いくら天気がいーからって結構寒いぜ。」
「大丈夫。朝寒いのはお昼に暖かくなる証ですもの。」
そう言って、アンジェリークは鋼の守護聖ゼフェルを執務室から連れ出すことに成功した。
(そんな理屈、どこにあるんだ・・・?)
半ば強引なアンジェリークにゼフェルは戸惑う。
いつもの、彼女と違う・・・。
「お見せしたいものがあるんです。」
2人は公園にある約束の木の下へ向かった。

「ほらね、木漏れ日が綺麗でしょう?」
木の下に着くと、アンジェリークはにっこりと微笑む。
まるで、欲しいものを手に入れたかのような笑顔だ。
「おめー・・・今日はどうしたんだよ。用があったんじゃねーのか?」
別に、その日は他に用事があった訳じゃない。
急いでいた訳でもない。
どうしてかわからない。
今にも彼女が消えてしまいそうな錯覚に陥るのは何故だ?
木漏れ日が、アンジェリークに降り注ぎ、くるりと舞った瞬間。
彼女の背中に翼が見えた。
「翼」は女王の証。
ゼフェルは直感した。
『アンジェリークは女王になる』
それは、同時に別れをも意味する。
アンジェリークはそれを悟っていたのだ。
無意識のうちに、ゼフェルはアンジェリークを、きつく、抱きしめていた。
「ゼ・・・フェル様・・・?」

公園も静かな、木の曜日の午後。

2人は何かを確かめ合うように
失ってしまわないように
そっと
唇を重ねた

「俺だけのおめーでいろよ・・・。」

その週の土の曜日、アンジェリークは新宇宙の女王となった。
皆に見送られて、次元回廊を渡るとき、彼女はゼフェルの前で呟いた。
「約束します」
それは、他の誰にも聞こえない、2人だけの・・・


愛なんて、俺だけには不要な言葉。
幸せなんて、俺だけには欲しくない。
「おめーがいなきゃ・・・」
愛は、あいつの為にある言葉。
幸せは、あいつなしには語れない。

END