LOVEナースマン


「ゼフェル〜!大変だよ!!」
 執務室の扉が開いて、緑の守護聖マルセルが飛び込んできた。
「なんだよ、うっせーな。いま忙しいんだよ。」
 執務をサボってチビメカのメンテに夢中になっていたゼフェルは顔も上げずにいう。
「そんなことやってる場合じゃないよ!アンジェリークが怪我したんだって!!」
「なにっ!!ほんとか!」
「ほんとだって。今頃は寮に戻って手当てを受けてる頃じゃないかな?ああ、大丈夫かな、アンジェリーク。僕お見舞いに行かなきゃ。ゼフェルはどうする・・・てあれ?」
 マルセルが気がついたときにはゼフェルはもうすでに出て行った後であった。


「アンジェーーー!!!」
 アンジェリークの部屋の扉がいきおいよく開いてゼフェルが転がり込んできた。
「!ゼフェル様!?」
 ゼフェルはベット脇に立っていた誰かをつきとばしてベットに横たわっているアンジェリークの元へ駆け寄った。
「アンジェ、どうしたんだ?どこ怪我したんだ!?そ、そうだ、医者、医者には見せたのか?痛むか?ちくしょー、オレがついてりゃ・・・!」
「ゼ、ゼフェル様落ち着いてください。ちょっと足をくじいただけですから・・・」
「・・・え、そうなのか?」
 その時、くすくすという笑い声が聞こえてゼフェルが振り返るとそこには感性の教官セイランが立っていた。
「!なんでおめーがアンジェの部屋にいるんだ!?」
 自分の慌てている姿を見られたことに気づいてゼフェルは真っ赤になる。
「やれやれ、やっと気がついてもらえたようですね。なぜ?といわれても僕の目の前に彼女が階段から転げ落ちてきたものでね。放っておけるほど僕は冷たくないつもりですよ?ゼフェル様。」
「・・・ちなみにワタシもいるんですけど。」
 ゼフェルに突き飛ばされたレイチェルも腰をさすりながらぶすっとしていう。
「・・・あ、わりぃ、オレ気が動転してて・・・」
「ふふ、普段は素直じゃない鋼の守護聖様も、アンジェリークのこととなるとこんなに取り乱すんですね。さあレイチェル行こう。僕たちはお邪魔のようだから。」
「・・・そうですね。ゼフェル様、アンジェに変なことしないで下さいよ!」
「(///)するか、ばか!」
 やっと、二人っきりになれたのでゼフェルは改めてアンジェの方を向いて心配そうに
「アンジェ、本当に大丈夫か?なんかして欲しいこととかねーか?」
 という。アンジェリークはふんわり微笑むと
「ほんとに大丈夫です、ゼフェル様。心配かけてごめんなさい。ちょっとくじいただけなのにこんな大げさなことになっちゃって・・・あ、今お茶を・・・」
「ばか、おめーは動くなって。・・・そっか、よかった。オレおめーに何かあったら・・・」
「ゼフェル様・・・(真っ赤)」
 なんだか照れるセリフをいってしまった自分に気づき、
「あ、いやそのなんだ、それにしても階段から落っこちるなんてドジだなー。ぼーっとしながら歩いてたんだろ。ったく気をつけろよ。」
 と照れ隠しにわざとぶっきらぼうにいう。
「ぼーっとしてたんじゃありません。ゼフェル様のことを考えてたら・・・」
 むきになって言い返したアンジェだが、うっかり口を滑らせたことに気づいて『しまった』という顔をした。
「オレのこと?オレがどうしたんだよ?なあ、アンジェ?いえよ。」
 ふんふんと鼻息も荒くゼフェルはアンジェリークに詰め寄る。
「きゃー、ゼフェル様、あんまり寄らないで(///)・・・いいます。いいますから!」
『二人っきり・ベットの上』というちょっと危ないシチュエーションの上(笑)鼻息も荒くゼフェルに接近されたものだからアンジェリークは真っ赤になって布団を鼻の上まで引っ張り上げて顔を隠しながら白状した。
「えと・・・あの、明日は何の日だかわかりますか?」
「明日?今日はえーと、6月4日だから・・・あ、オレの誕生日・・・か?」
 アンジェリークはこくんとうなずくと
「そうです。私ゼフェル様のお誕生日に差し上げるプレゼントのことを考えてたら階段に気がつかなくって・・・もう明日なのになんにも浮かばないんですもの。」
 ちょっと涙目になりながらぽつりという。ゼフェルと仲良くなりたい為にせっせと商人の店に通ってはゼフェルの気に入りそうなものをプレゼントした。その甲斐あって今はラブラブなのだが、メインイベントの誕生日にあげるプレゼントがなくなってしまった。大好きな人のために何をプレゼントしたらいいかずっと考えていて階段から落っこちたのだった。
「そうだったのか・・・。いいんだよ。プレゼントなんか。もういっぱいくれただろ?」
「そういうわけにはいきません!それじゃ私の気持ちが・・・お誕生日は特別なんですよ?私・・・ゼフェル様の喜ぶ顔が見たいんです。」
 アンジェリークがまた真っ赤になってそういうと、しばらく考え込んでいたゼフェルだったが、やがてにんまり笑うとアンジェリークの方を見た。そのいたずらを思いついたかのような笑顔にアンジェリークはちょっとたじろいだ。
「・・・オレの喜ぶ顔がみたいんだよな?」
「え、はい。」
「じゃあ、ものじゃなくてもいいよな?」
「えっあの、どういうことですか?」
 ゼフェルはにやりと笑うとこういった。
「明日1日、おめーの看病させろ!」
「・・・・・・は?」
「おめー、どうせ明日は育成とかできねーだろ?その足じゃ何かと不便だろうし、1日おめーのそばにいて面倒見てやるってことだ。」
 呆然とゼフェルの顔を見ていたアンジェリークだが、はっと我に返って
「え〜〜〜!!そんな、この怪我はたいしたことないし!それにそれとこれとは・・・あ、痛たたたた!」
 アンジェリークはあわててゼフェルの思いつきを否定しようと無理に動いた為、痛めた足を思いっきり動かしてしまった。
「ほら、まだ痛いんじゃないか!やっぱ、オレがついててやんねーと。よーし、明日1日オレが看病してやっから安心しな!あー最高の誕生日プレゼントだぜ!決まってよかったな。なっアンジェ!?」
 ゼフェルは勝ち誇ったかのようにそういうと、アンジェリークの方を向いてにかっと笑った。心底嬉しそうなゼフェルの笑顔を見て、嬉しいとは思いながら『何かちがう』と複雑な心境のアンジェリークは、泣き笑いのような顔をして喜ぶゼフェルの顔を見ていた。


 ゼフェルの誕生日当日。
 アンジェリークの部屋には嬉々として彼女の世話をするゼフェルがいた。
「ほら、アンジェ、あーんしな。」
「(////)・・ゼフェル様〜〜勘弁してください〜〜〜」
 足の痛みはよくなったが、かわりに恥ずかしさのあまり熱が出てしまったアンジェリークだった・・・。


〜fin〜