逆転バレンタイン×ホワイトデー


 ここは、女王候補のアンジェリーク=コレットの部屋。
 アンジェリークともう一人の女王候補、レイチェルと一緒に話しをしている。
「ねぇレイチェル・・・・」
 アンジェが頬杖をつきながら、レイチェルに話しかけた。
「ン?何?アンジェ?」
「ゼフェル様って、甘いものキライよね・・・・」
 ゼフェルというのは、鋼の守護聖。ぶっきらぼうでも、ほんとは優しい少年だ。
 実は、アンジェとゼフェルは付き合っている。とても仲のいいカップルだ。
「うん・・・あ、そっか!明後日バレンタインだもんね!」
「レイチェルはランディ様にあげるのよね。」
 ランディというのは風の守護聖。明るく爽やかな少年だ。
 ランディとレイチェルも、付き合っているのだ。
「もちろ〜ん!明日手作りしちゃうんだから!」
「ふふ・・・そうね・・私も一緒に作っていい?」
「もちろんいいけど・・いいの?ゼフェル様、甘いものキライジャン。」
 レイチェルがそう言ったとたん、アンジェがいつもより大きな声でいった
「そうなの。それで、提案。私、昔から考えてたことがあるの。」
「ふーん。なに?」
「私、甘いもの大好きでしょ。だからもチョコ大好きなの。」
「ウン。で?」
「・・・バレンタインとホワイトデー、あげるものがいれかわらないかな〜って・・・・。」
 レイチェルは少し考えこんでから、こう言った。
「・・・うん!それいいよ!バレンタインはチョコをあげるのが相場だけど、ホワイトデーって決まってないもんね!」
「そう。だから、甘くないものあげられるじゃない?」
 アンジェがにっこりしながら答えた。
「も〜う!アンジェはゼフェル様にとことん甘いんだから〜!」
「え、甘くないものあげたいんだけど・・・・」
「・・・・もう、ぼけてるんだから!そこが可愛いんだけどv」


・・・・バレンタインの日・・・・
「あ〜!たりーなまったくよ〜!こんなあめぇもん食えるかっつ〜の!」
 ここはゼフェルの執務室。机の横に、チョコの包みの小さな山ができていた。
 守護聖はみんなの憧れ。当然、バレンタインのチョコの数もすごい数になるのだ。
 ゼフェルがいいと言っている人も、聖地にはたくさんいるのだ。
 まぁ、炎の守護聖が1番だろうが・・・・。
 今ごろ、どの守護聖もこの数に困り果てているだろう。甘いもの大好きな緑の守護聖ですら、困るくらいだ。
 甘いものが苦手なゼフェルが、ヤケになるのも分かる気がしないでもない。
 ゼフェルはたった1人の人にもらえれば、それでいいのだが・・・・。肝心のその「彼女」はまだ来ない。
「ったくよ〜!あ〜〜〜!・・・・なんでこねぇんだよ・・・だー!なに考えてんだよ〜。」
 一人で叫んでいると、ノックが聞こえた。
「(やっと来たか?)入れよ!」
 そこに来たのは・・・アンジェではなく、夢の守護聖、オリヴィエだった。
「んも〜!あんたの叫び声私の執務室まで聞こえてきたわよ!おかげでネイルアートだいなしじゃない!!!」
「んだよ!この極楽鳥!人が悩んでる時にっさけぼーが何しよーが勝手だろ!?」
「まぁいいよ。頼みがあるの!あのさ、これ直してくんないかな〜?」
 オリヴィエが渡した物は、水色のオルゴールだった。
「ったく・・・・分かったよ!ほら!はよ渡せよ!」
「ありがとう。あ、そーいえばさっきアンジェがきたよ。」
「なんだと〜〜〜〜〜!!!?」
 がたたたたんっ。
 ゼフェルが椅子からすごい勢いでたちあがった。 
「な、どうして・・・・」
「育成よい・く・せ・い!安心して。あんたの彼女とる気はさらさらないから〜」
「な・・・・てめーにゃかんけーねーだろ〜〜〜〜!!!」
「あ、そーいえば、アンジェからクッキーもらったよ〜。」
「なに〜!?」
 ゼフェルは執務室から飛び出していった。
「なんでチョコじゃないのってきいたの。そしたらバレンタインとホワイトデーのあげるものを逆にしたんだって・・・・ってきいてないか☆」


「だぁ〜〜〜!なんでいね〜んだよっ!!」
(あいつ、オレより先にオリヴィエにっ!アイツはオレの、かっ、彼女なんだかんなっ!!!オリヴィエは心配ないとしても他のやつらはっ!!!)
「あとは・・・・森の湖に・・・!!!」


〜〜〜〜アンジェ〜〜〜〜〜〜
「う〜ん・・・・受け取ってくれるかしら・・・・?」
 アンジェはゼフェルの執務室の前にいた。
 他の守護聖様達には、もう渡した。大目にクッキーを焼いてしまったので、いつもお世話になっている守護聖のみなさんに渡したのだ。
 コンコン♪
「・・・・・・あれ?いらっしゃらないのかしら・・・・?庭園には守護聖様は1人もいらっしゃらなかったし・・・・。・・・あ、そうだ、森の湖。行ってみよう。」


〜〜〜〜〜〜森の湖〜〜〜〜〜〜〜
「ふぅ〜・・・いねーか・・・・ま、ちょっと休んでくか・・・。」
 風がふいていて、汗を乾かしてくれる。
「ふぅ・・・・いるかなぁ・・・・。」
 聞きなれたこの声は・・・・?
「アンジェ!?」
 この声はまさか・・・!?
「ゼフェル様!?」
 2人の間を心地よい風がふきぬける。
「あ、あの、これ・・・クッキーです・・・あの・・・受け取ってください!」
 ゼフェルは、アンジェのいきなりの出現にびっくりして、動きが止まっていたが、少したったらやっと正気にもどった。
「あ、ああ・・・サンキュ・・・?でもなんでクッキーなんだ?」
 アンジェが、このもっともな質問に、赤くなりながら答えた。
「あ、あの・・・今日バレンタインじゃないですか。それで・・・・私昔から、チョコ大好きで、バレンタインとホワイトデーの渡す物が逆になればいいなって思ってて・・・。ゼフェル様、甘い物お嫌いですから・・・・あ、ちゃんと甘さひかえめにしてありますから・・・。」
(・・・・アンジェ・・・・・)
「アンジェっ!!」
 突然ゼフェルがアンジェを抱きしめた。
「ゼ、ゼフェル様!?」
「サンキュな・・・・お返しは、お前の思いどーり、チョコにしてやるぜ!こーゆのもいいかもな!こらからもずーっとこーやっていこーぜ!!!」
「・・・・・はいっ!」
 ゼフェルがホワイトデーにアンジェに渡したものは、ブローチとマルセル様手作りのチョコでしたvvv


〜fin〜