Can you Feel this Christmas ?


 私には同じ年の妹が2人いるの。
 見た目は両親だって間違えたくらいそっくりなんだけど、性格は全然違う。
 私は2人が羨ましかった…。


「ねぇねぇ、もうすぐクリスマスだね。アルカディアには雪は降るのかなぁ。」
 に話しかけてる。
 私たちはなぜか3人で聖地に呼ばれた。
 それから始まった女王試験。
 月日は流れ、私たち3人は女王となり、共に試験を受けたレイチェルは補佐官として新宇宙でなんとか平和に暮らしてたんだけど…。
 突然、ここアルカディアの地に吸い寄せられるようにして集まった懐かしい人々
 いつ消滅するかわからないけど、とりあえず今は陛下やロザリア様、守護聖様方やいろいろな方の協力を得て育成するしかない。
 私たちは3人で1つ。
 生まれた時からそうだった。
 誰かが誰かを支えて、助けて…。

 でも、今日は土の曜日。
 もうすぐエルダの封印も解けるんだろうけど、その前に訪れる聖夜には心惹かれてるみたい。
「ん…アルカディアは雪は降るけど…クリスマスに降るかなぁ?」
 は、オリヴィエ様からいただいたマニキュアを塗っている手を止めての方をみる。
「絶対降るよ。」
 核心めいた口調では言うけど、どうなんだろう?
 は何とも言えないような笑みを浮かべてる。
「ねぇはどう思う?」
「ん〜?そうねぇ…どうかしら?」
 曖昧なわたしの答えには少し頬を膨らませる。
「まぁ、降っても今年はそれどころじゃないかもね。」
 がちょっと冷たく言う。
「どうして?クリスマスだよ?」
「ったく、いい加減自分の立場考えなさいよ。」
 はマニキュアを塗り終わったのか、その手を広げたままじっと己の爪を見つめながら言う。
「そんなこと言ったってどうしようもないじゃない。」
 は、の顔を覗き込むが、は視線を合わそうとしない。
「だから?」
「だったら今を楽しまなきゃ。」
 本当にらしいなぁ。思わずクスクスとした笑いが込み上げてくる。
 これが最近の私たちの日常。


 次の日、私たちは別々に過ごした。
 は今日はロザリア様に用があるって朝早くにレイチェルと出かけたし、はどなたかを誘うって言ってたっけ…
 多分、あの様子だとクリスマスを一緒に過ごしたいって方のところかな?
 そんなところは可愛いなって思う。
「んだよ?どうかしたのか?」
「えっ…きゃぁ…っ!!」
 現実から離れていた私は思わず石段につまずいてしまう。
「っと…ったく大丈夫か?」
 そっか…ゼフェル様とデート中だったっけ…
 ぎこちなく笑ってるわたしにゼフェル様は心配そうな顔をする。
「おめぇ何かへんだぞ?」
「そんなこと…」
 ないです。と言いかけて言葉を失ってしまった。
 ゼフェル様の肩の向こうに見える2つの姿。
「??」
 ゼフェル様は、私がじっと見つめている視線の先を辿る。
「オスカーじゃねぇか。隣は…」
…」
 私は小さくその名を口にして、ゼフェル様の服をきつく握ってしまっていた。
「なっ…どうしたんだよ?!っ!!」
 ゼフェル様の声を頭の上に聞いた。多分真っ赤になってるんだと思う…
 でも、そんなこと考えてる余裕なんてなくて…
「…別の場所に行きませんか?」
「…別に構わねぇけど…」
 俯いたままの私の心にゼフェル様の言葉は優しく響いてた。


 その日の夜の事は覚えていない。
 ただ、誰かが少し寂しそうな顔を見せていたんだ…


 クリスマス当日。
 でも、今日も育成をしなくちゃ…。
 なのに、朝からオスカー様が尋ねてこられた。
「オスカー様っ!!」
 は嬉しそうな笑顔でオスカー様を迎えた。
「よぉ、お嬢ちゃん今日は…」
「オスカー様、日向の丘に行きませんか?」
 オスカー様の言葉を遮って、は半ば強引に彼の腕に手を回して出て行こうとする。
「お嬢ちゃん?!悪いが…」
「何ですか?」
 にっこり笑うにオスカー様は再び言葉をなくしてる。
…」
「何?。」
 どうしてそんな必要以上に笑顔なんだろう。
「何って…今日オスカー様が誰を誘いに来られたのか…」
「今日はクリスマスだよ?大丈夫、夜には戻るから。」
 私の言葉も遮ってはオスカー様と部屋から出て行った。
 オスカー様は仕方なさそうな笑みを浮かべていたんだ。
「…はいつも…ってっ?!」
「何?」
 私はそこで初めての気持ちに気付いた。
「…何じゃないよぉ。姉だからって気を使ってどうするの?ほら、早く追いかけなよ。」
 珍しく大きな声を出してる私には驚いてる。
「でも…っ…」
らしくないよ。後悔したらどうするの?」
 ね。っと笑いかけてを外に出したあと、部屋の扉を閉める。
 パタパタという足音が完全に聞えなくなった時、私の瞳から雫が生まれてた。
 温かく頬を伝って、私の心を乱してる。
 足に力がはいらなくて、そのままそこに座り込んでしまった。
?」
 突然名を呼ばれて、反射的にドアから離れるとそこにいる人。
「ゼフェル…様…?」
「なっ…おめぇ、何で泣いてんだよ?!」
 私を覗きこんでくる彼にすがりつくようにして泣いた。
 声を殺して泣くのは辛い。
 でも、私の頭に置かれた手は温かくて、抱き締めてくれる腕は優しかった。
「今日クリスマスだろ?陛下が雪降らせるっつてたからよ、おめぇにも見せてやりたいなって思ったんだよ。」
 言葉は温かくて、口調は優しい。
「ゼフェル様ぁ…私どうして…」
 泣いてるんだろう…
 分からない。
…俺はおめぇが好きだ。」
 囁かれる言葉。
「おめぇが誰を好きでも、ぜってーあきらめねぇからな。」
 そのまま額に落される熱。
 彼の顔を覗き込むと真っ赤に染まっていて、思わず笑ってしまう。
っ?!何笑ってんだよっ?!」
 そっか…私…私もオスカー様のこと好きだったんだ…
 でも。
「ゼフェル様、待ってていただけますか?」
「できるだけ早くしろよ。」
「はい。」
 にっこり笑う私の唇に甘い温もり。


 窓の外には白い白い粉雪が静かに降り積もっていた。
 誰の上にも降りてくる幸せの欠片のようか雪が—————

おしまい?