あの夜の、君の笑顔。
 良くできた、作り物の笑顔。





2.『噂』





 (・・・・・か。)

 暗部の人間なら、カカシは知っている。
 だが、『』という名前は聞いた事がなかった。
 その名前が気になってか、最近のカカシはうわの空だ。
 上忍の待機所にいても、ぼーっとしている。

 「『』かぁ・・・・。」

 「誰だ?それ。。おめぇ、何かあったのか?」
 見かねてアスマが声をかける。

 「・・・アスマか。いや、別に・・・・。」

 「別に・・・って。」

 「うーん、そんなたいした事じゃないんだけどねぇ。」

 「たいした事だろうがよ?こんなにぼーっとしてるカカシは初めてみるぜ?」

 そう言って、アスマは部屋を出るようにと促した。








 「何があったか、言えよ。」

 空は綺麗に晴れて、太陽が眩しい。
 アスマはタバコに火を付けた。

 「・・・・・・『』って名前、知らないよなぁ?」

 「・・・・・・・!?」

 タバコを吸う手を止めて、アスマは一瞬驚いた顔をする。
 その表情をカカシは見逃さなかった。

 「知ってるのか?」

 「・・・・まぁ、な。」

 今度はカカシが驚く。
 アスマは話を続ける。

 「おめぇ、ナルト達と波の国へ行ってただろう?その時期に配属になったらしいぜ。」

 「でも、なんでアスマが知ってんの?」

 新しく暗部に配属になった人間の情報など、そう簡単に伝わるものだろうか?と
 カカシは考えを巡らせた。

 「『』って奴、久々の大型新人らしい。それで、結構噂になってる。
  おめぇみてーに、噂に全く興味の無い奴は知らなくて当然だろうな。
  まぁ、そんな俺も紅から聞いただけなんだが・・・・。」

 (あの子、そんなに実力があるのか?)

 確かに、能力があるのならば、噂になるのも納得できる。
 カカシの頭の中には、ほんの数日前に見たの顔が浮かぶ。
 あの華奢な体つきからは想像がつかない。
 考え込んでいるカカシに、アスマから横槍が入る。

 「で、その『』がどうかしたのか?」

 「・・・・いや、この前の夜、偶然会っただけなんだ。」

 「そんだけの事で、何でそんな気にするんだ?・・・・まさか、おめぇ・・・・。」

 アスマはタバコを落としそうになった。
 当のカカシは再び遠くの空を眺めている。

 「俺自身も、なんでこんなに気になるのか分からない。」

 カカシのその一言に、アスマは思わず吹きだす。
 アスマの笑い声が青空に響いた。

 「そーゆーのを、惚れたっていうんじゃねぇのか?」

 アスマの言葉が、妙にひっかかる。

 「変な奴だな。自分の気持ち、わかんねぇのかよ?」

 カカシには、自分から誰かを好きになったという記憶が無い。
 これまでに付き合ってきた女は、全て女の方から言い寄ってきた。

 「いや・・・・・。」

 返す言葉を無くして、カカシは黙った。

 「もう一回、会ってみたらどうだ?はっきりするだろ?」

 そうかもしれない。とカカシは思った。
 
 (彼女を探して、もう一度会ってみたらいい。
  ・・・・・・・・・・・いや、俺はもう一度彼女に会いたいんだ。)

 「付き合わせて悪かったな。ありがとう、アスマ。」

 「・・・・おう、まぁ、頑張れよ。」

 まだにやにやとしているアスマを残して、カカシは待機所へと戻って行った。
 

 2本目タバコを取り出して火をつけると、アスマは大きく煙を吐き出した。


















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なんだか短い&ヒロイン登場しない(汗)
う〜ん、今回は私のアルコール摂取量が少なかったか?(笑)
酔っ払って書くなんて、失礼な奴ですm(__)m
』の事が頭から離れず、
もやもやするカカシを書いてみたかった・・・。
そんだけです(笑)




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