その胸の中は、誰にも見えない。





You need a・・・.  『新月』





 任務を終え、カカシが帰路に着いたのは、もう遅い時間だった。
 そろそろ日付も変わろうかという時刻。
 夜空には綺麗な月が出ている。
 しかし、今歩いている繁華街は、まだ賑わっている。
 居酒屋から聞こえる大きな笑い声。
 立ち並ぶ店から出てくる人達。
 吸い込まれるように、裏路地へと消えてゆく男女。
 何も予定の無い夜ならば、カカシもそんな人々の中の1人だったはずだ。

 (ま、早く帰って寝るか・・・。)

 ナルト達の担任になってからは、あまりなかった『上忍』としての任務。
 久しぶりだったせいか、今日はいつもより体が重い。





 不意に、カカシの足が止まった。

 (・・・誰だ?)

 誰かの視線を背中に感じ、振り返る。
 視線の主と、目が合った。
 少し離れた場所に、女が立っている。
 黒い細身の、シンプルなロングドレス。
 着ているものと同じ黒の、長い、綺麗な髪。
 灰色の瞳。
 整った顔立ち。
 目が合ったのは、一瞬の事で、女はすぐにカカシから視線を外した。

 (・・・誰だったっけ?俺、女の名前なら結構覚えてるんだけどねぇ?)

 何故か気になって、女の名前を思い出そうとしたが、一向に出てこない。

 (ま、いいか。)

 そう思って、再び歩き出したカカシだが、気にかかって仕方ない。

 (あー、何でこんなに気になるんだよ!?)

 そして、その足は自然と先程の女の後を追っていた。





 女が、裏路地へと入った所でカカシは彼女に追いついた。
 しかし、カカシ自身、何故この女の後を追ってきてしまったのかよく分からない。

 「あ・・・・、あの〜・・・。」

 いつものカカシならば、女に声を掛けるなんて造作もない事なのだが。
 今日はどうしてなのか、上手く言葉が出てこなかった。

 女は振り返り、言った。

 「カカシさん・・・?」

 「・・・・・・・?!」

 女はカカシの事を知っているようだった。
 だが、カカシは彼女の事を思い出せない。
 一瞬考えて、ようやくわかった。
 カカシは彼女の事を「思い出せない」のではなく、「知らない」のだった。

 「今、任務の帰りですか?お疲れ様。」

 同じ忍の仲間が言うのと同じように、彼女はさらっと「お疲れ様」と言った。

 (この子、忍なのか?・・・でも、詰め所でもアカデミーでも見た事ないし・・・。)

 「あの、ごめん。変な事聞くけど・・・。」

 「何ですか?」

 彼女は微笑んでいるが、その灰色の瞳はどこか冷たい雰囲気を持っている。
 そして、そこからは感情は全く読み取れない。
 

 「君は、俺の事知ってるんだよね?」

 「ええ、だって有名じゃないですか。」

 カカシの間の抜けた質問に、彼女は笑って答えた。

 「同じ忍なら、誰だって知ってますよ?」

 (忍。やっぱり同業者だったのか〜。)

 「・・・・俺は、君の事知らないんだ。名前、聞いていいかな?」

 「知らないのは当たり前ですよ。里には忍なんて沢山いるんですから。それに・・・。」

 「それに?」

 「私の名前なんて、聞いても仕方ないですよ?」

 そう言われても、カカシは彼女の名前がどうしても知りたかった。
 どうしてなのかは、わからないまま・・・。
 そして、知らなければ後悔するような気がして。

 「いや、知りたいんだ。君の名前。」

 そうカカシが言ったと同時に、彼女は近くの建物の屋根に目をやった。

 「・・・・ごめんなさい。私、行かなきゃ。」

 彼女の視線の先に、カカシも目をやる。
 屋根の上には、3人の忍の姿が見えた。

 「あ〜あ、遊びすぎたかなぁ?こんな格好してて、その上また遅刻。怒られるの確定かも。」

 そのままの格好で、彼女は屋根の上に飛び上がろうとする。

 「ちょっと待って。俺、君の名前まだ聞いてないよ?」

 彼女は微笑んで、言った。

 「。」

 生暖かい風が吹いて、彼女の長い黒髪を揺らす。
 彼女は、肩にかかった髪を払う。
 その肩には、刺青。
 カカシには見慣れた模様。

 「オヤスミナサイ。」

 はそう言って、屋根の上へと消えた。

 (あの、刺青は・・・・。)

 




 それは、カカシの肩にあるものと同じ。



 ・・・・・・・・・・暗部の印。











******************************
うへぇ。
これ、続けられるのかな?(笑)
頑張れ、私。
カカシ先生、なんだか間が抜けててすみません。
いつものカカシじゃない・・・(汗)
ヒロインの名前、あんま出てないし。
こんなんですが、感想とか頂けると嬉しいです♪
てか、カカシの肩には今でも暗部の刺青あるんでしょうかねぇ?
確認しないまま書いてるので、そこら辺は突っ込まないで(笑) 


 

 

+Back