手袋を買いに。




前日に降った雪は、昼近くになっても解けていなかった。

日の光を反射して、雪はきらきらと光っている。

「う〜、寒い・・・。」

は、かじかんだ手をこすりながら雑貨屋へ向かった。

雪を踏む、ザクザクという音が聞こえる。

任務用の手袋は買ったのに、

今年はまだ私用の手袋を買っていない。

忙しくて買いに行く暇がなかったからだった。

(折角の休みなのに・・・。)

はぁ・・・と吐き出した溜息が、白くなって青い空へと消えていく。





「溜息なんかついちゃって、どーした?」

驚いて振り向くと、コートを着た男が立っていた。

「あ・・・・。」

一瞬、はその男が誰なのか分からなかった。

、おはよ。」

「お、おはようございます。カカシさん。」

の片思いの相手、はたけ カカシ。

見慣れない私服のせいなのか、いつも職場で見るカカシとは少し雰囲気が違う。

同じなのは、あの口布だけ。

珍しく額宛はしていない。

「どーしたの?ぼーっとして。」

そんなカカシを見て、は惚けていた自分に気付いた。

「・・なんでもないです。」

「そっか。で、はどこ行くの?」

「カ、カカシさんこそ、どこいくんですか?」

「ん〜、ちょっとね。」

(「ちょっと」って・・・彼女の所に行くのかなぁ・・・。)

そんな事を考えて、は少し気分が沈んだ。

「買い物?」

黙ったままのに、カカシは笑顔で話しかける。

「手袋が無いから・・・その・・・買いに行く所です・・・。」

カカシの笑顔にどきどきしてしまって、上手く喋れない。

「お前、まだ買ってなかったの?もう2月だよ?」

「だって、仕事が忙しくて・・・休みもなかったし・・。」

「あ〜、確かになぁ。お前忙しそうだったもんな。」

「あの・・・、じゃ、じゃあ、私行きます・・・。」

好きな人を目の前にして、は完全にあがってしまっていた。

「雑貨屋さん、こっちデショ?俺も同じ方向だから、一緒に行こ。」

「は・・・はい。」




真っ白な雪に足跡を刻みながら、2人はしばらく黙って歩いた。

通りのあちこちには、雪かきで集められた雪が山積みになっている。

「・・・カカシさんも、今日はお休みなんですよね?」

「ん?そうだよ。久しぶりの休み。」

「どこか行く予定なんですか?」

「ま、予定というか・・・。」

曖昧なカカシの答え。

「・・・・か、彼女の家とか?」

おそるおそる、は聞きたかった質問を口に出した。

「あ!。雑貨屋・・・・。」

「へ?」

カカシの事が気になって回りを見ていなかったは、その一言で我に帰った。

「あ・・・・・・。」

家を出る時には予想もしていなかった事態。

雑貨屋の扉は閉まっていて、「定休日」の看板がかかっていた。

「お前、ついてないねぇ。」

そう言いながら、カカシは笑った。

「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!」

「ごめん、ごめん。」

「あ〜、ほんと、ついてない・・・。寒いの我慢してここまできたのに〜・・・。
 次の休みだって、いつとれるか分かんないし・・・。」

がっくりと肩を落とす

「ま、仕方ないデショ。」

「はぁ・・・。そうですよね・・・じゃぁ・・。」

雑貨屋が休みだった事とここでカカシと別れなければならない事で、の足は重い。

来た道を戻ろうとは踵を返した。

、家に帰るの?」

「え?えぇ、他に予定もないので・・。」

「今日は彼氏とかに会ったりしないんだ?」

「あいにく、カカシさんと違って恋人なんかいないので・・・。」

「俺だっていないよ。」

「え??」

カカシの意外な答えに、は驚いた。

「だってカカシさん、もてるし・・・。色々噂聞いた事も・・・。」

「あー、噂・・・ね。どっからそんな話がでてくるんだろ。」

「じゃ、そのウワサは嘘なんですか?」

「・・・まぁ、好きな女はいるけど。」

『今日は厄日だ』とは思った。

手袋は買えないし。

その上失恋?

自然とまた溜息が出る。

「・・・そうですよね。変な事言っちゃってごめんなさい。じゃぁ、私はこれで・・・。」

まだ何か言おうとするカカシを無視して、すっかりへこんでしまったは、歩きだそうと足を前に出す。

とたんに、ぎゅっと手を掴まれた。

「カカシさん?!」

にこにこと微笑むカカシ。

「まぁ、そんなに慌てて帰らなくてもいいだろ?」

「?」

「ん〜。に1つだけ、聞きたいことがあるんだ。」

「は? な、何ですか?」





「俺の彼女になってくれる?」




「え?!」





「『ちょっと待って』とかはナシ。『はい』か『いいえ』だけ答えて。」





に聞こえてくるのは自分の鼓動だけ。

見えるのは、カカシの瞳だけだった。





「・・・・はい。」





の答えに、カカシは満足気に微笑む。

、手出して。」

「は、はい。」

カカシは、まだ動揺しているの手と自分の手を繋ぐ。

そして、自分のコートのポケットに入れた。

「お前の手、冷たいなぁ。霜焼けになっちゃうよ?」

「ご、ごめんなさい。」

「家、帰るんだろ?」

「え? ・・・はい。でも、カカシさん、どこかへ行く予定だったんじゃ・・?」

「いいよ。最初からお前の家に行こうと思ってたんだからさ。」

そう言い放って、カカシは歩き出した。

も一緒に歩き出す。












「あ、手袋は今度俺と一緒に買いに行こうな。」

「は、はいっ。」

















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4444HIT。様へ。
毎度毎度の駄文で申し訳ないです(汗)
甘く書いたつもりですが・・・・。
カカシ、強引だなぁ(笑)
そーいやぁ、「手袋を買いに」って小学校の国語の教科書にあったような・・・。



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