夏の初め。

 晴れた日の午後。

 私は縁側に座って、

 木々の間からこぼれる柔らかい光を見ていた。

 時折、心地よい風が

 そっと木の葉を揺らして。

 降り注ぐような蝉の声だけが、耳を支配する。




蝉時雨




 首筋から、私の浴衣の胸の辺りまで汗がつたう。

 (冷えたお酒があったら、最高かも。)

 なんて親父臭い事を思いついて、自分でも可笑しくなった。



  「ーーーーー!」


 聞き慣れた声が、割って入る。



  「カカシ?」


  「なーにびっくりした顔してんの?
   俺が来たの、そんなに意外だった?」


 彼の綺麗な顔は、いつ見てもはっとさせられる。

 今日は会えないと思ってたから、余計に。



  「だって、今日はナルト君達と任務じゃなかった?」


  「あー、あれは任せてきたよ。Dランク任務だしね。
   それに、に会いたかったし。」


 『会いたかった』なんて、さらっと言ってのけて

 彼は私の隣に腰を下ろした。



  「いいの?そんな事して。」



  「だいじょーぶ。」



  「だいじょーぶ・・・・って・・・。」




  「はい。これ、お土産。」


 差し出した彼の手には、冷たそうなお酒の瓶。



  「、飲みたいって思ってたデショ?」


 
  「・・・・そんな親父臭い事、思ってないもん。」


  「ウソ。」


 イヤになる位、いつも先を読まれる。


  「・・・・ごめん、飲みたいと思ってました。」

 あきらめて、素直に認めた私を見て、

 彼は笑った。

  「だって、暑いしさ。風流だと思わない?」

 そう言って、私も笑う。





  「、俺の前以外では、酔っ払っちゃダメだからね?」




  「・・・私って、そんなに酒癖わるいの?」


  「ほら、覚えてないだろ?この前、アスマ達と飲んだ時の事とか。」


  「・・・・うーん・・・・。お、覚えてない。」


  「それにさ、


   酔ってる時の、可愛いからさ


   ほかの奴には見せたくないよ・・・・・。」





 ぼーっと惚けている私に



 彼の顔がフッと近づいて




 次に、私の唇には、


 彼の柔らかい唇の感触。






  「・・・・!?」




 私の口内に広がる、冷たい液体。

 アルコールの香り。





  「お酒、飲みたかったんでしょ?」



  「だからって、何も口移ししなくたっていいのに。」


 
 同時に笑みがこぼれる。



 少しの間の後、彼は私の腰に手を回した。




  「エロカカシ!」



  「が、浴衣なんて着てるからわるいんだよ。」






 彼が私の体を抱きしめて。

 私は彼の体の重みを受け止めて、

 そのまま、縁側にゆっくりと倒れる。



  「ここじゃ、体痛くなっちゃうって。」



 カカシの銀髪が、鈍く光る。



  「いいの。このままで。」






 長い口付け。

 まだ冷たいであろうお酒の瓶には、

 水滴がついて、そして流れ落ちる。




 何故かほっとする彼の香り。



 夏の午後。



 外は蝉時雨。




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