もっと速く。

 早く。

 君の元へ。



Heart・Break



 木陰で、膝を抱えて座っている

 華奢な君を、やっと見つけた。

 晴れた午後。

 人気の無い、丘の上。

 気持ち良い風が吹く。

 君は、何か嫌な事があるとここへ来る。

 泣いている理由だって、俺は知ってる。



  「カカシ?」


 俺の気配に気付いて、振り向いた。

 その目は、赤く、涙が溢れる。


  「また、ふられちゃった。」


  「そんな事だろうと思ってた。」


 そう、憎まれ口を叩いた俺を、

 いつもなら思いっきりひっぱたくのに。

 今日の君はそんな元気もないんだ。


 

 何でふられたのかは、よく分かるよ。


 君は強いから。


 そこら辺の忍じゃ、全然相手にならない。


 
  「自分より強い女は嫌なんだってさ。」


 
 馬鹿な男もいるもんだ。




  「いっつも、そう。最初はいいんだよね。

   でもさ、だんだん私の方が強いって実感してくると・・・

   そしたら、もうダメなんだよね・・・。」



 はは・・・、やっぱ自覚してんのね。



  「男って、下らない事でプライド傷付いたりするんだね・・・。」


 
  「俺だったら、そんな事で別れたりしないなぁ。」



  「そんな慰めなんて、いらないよ・・・。」



 んー、こりゃ相当ヘコんでるなぁ。

 さて、どうしますかね。




  「あのさ。」


  「何よ?」


  「付き合う相手が悪いんだろ。」


  「どーゆー事よ?!」


  「つまり・・・・だな。自分より強い男と付き合ったら・・・・・。」


  「そんな奴、なかなかいないもん。」




 うーん。ここにいるんだけどねぇ。


 、俺の気持ちには全然気付いてない。


 ずっと前から君の事・・・想ってんのになぁ・・・・。





 少し泣きやんで、真っ赤な目で俺を見る。




 気の強い、里でトップクラスの忍。

 何度か一緒に任務をこなすうちに、

 俺はに惹かれていった。



 強気な部分と、たまに見せる、弱い部分のギャップ。

 笑った時の顔。

 よくしゃべる所。

 探せば、に惹かれた理由なんて、

 いくつでも見つかるんだろう。




 でも、人を好きになるって、理屈じゃないんだ。


 理屈じゃなくて、とにかくが好き。




  「カカシ・・・・。」


  「何?」


  「何か喋ってよ。黙ってると・・・・つらい。」



 そっか、じゃ、何か話そうか。






  「あのさ。


   、俺と付き合ったら一生ふられないですむよ。」





 ポカンと口を開ける

 次に出た言葉は。



  「馬鹿じゃないの?」



 あー、言ってくれるねぇ。ばっさりと。



  「カカシみたいな、軽そうなのはイヤ。」



 俺って、どーゆー風に見られてるんだろうね。



  「あのねー。俺、真剣に言ってるんだけど。」



  「人がヘコんでる時に、からかわないでよ。」





 赤くなった君の横顔が



 余りにも可愛くて。








 後ろから、抱きしめた。







  「ちょっとー!変な冗談やめてよ!」







  「終わった恋なんて・・・・忘れろよ。

   俺はずっと、の事想ってた。」






 柔らかな風が吹いて


 の長い黒髪が、俺の方へなびく。


 
 静かに時間が流れる。






  「バカ。」






  「カカシ、告白のタイミング悪すぎ。」


 が、俺の手を解いて立ち上がる。


 そして、俺に背を向けた。






  「・・・・まだ、時間かかるから。」




  「え?」




  「今はまだ、カカシと付き合うなんて考えられないからって意味!・・・・鈍感!」




  「あの・・・ちゃん。『まだ』って事はさ・・・・。」




  「先の事はワカンナイよ。」




 はぁ。結構がんばったのよ?俺。



 自分から想いを告げた事なんて、無いんだからさ。








  「・・・・・カカシ。」




  「ん?」




  「・・・・待っててよね。」





 待ってるも何も。


 俺はに惚れてるんだから・・・・さ。




  「が俺の方に振り向いてくれるまで、諦めないよ?」




 フッと、は消えていった。


 その顔が少し笑ってたのは、俺の見間違いかなぁ。




 後に残ったのは、サラサラと風に吹かれる草の音と

 もうすぐ沈んでゆく太陽。

 両手に残る、君の温もり。








 今は振り回されっぱなしだけど、

 いつか振り回してやるから、待ってろよ?





+Back