君の事、気になってるんだけど。
 肝心の君は俺の事、どう思ってるんだろうね?





First time 、you say yes 。





 お昼休みに、上忍待機所を覘いてみる。
 彼女がいないかと思って。
 今日もいない・・・・。
 晴れ上がった空とは反対に、俺の心は灰色に曇った。

  「おい、何覘いてんだ?」

 廊下で突っ立っている俺の肩を、後ろから叩いたのはアスマだった。
 珍しくタバコをくわえていない。

  「覘いてたなんて人聞きの悪い言い方、しないでほしいねぇ。」

  「どっからどう見たって『覘き』だろうが。」

  「ちょっと人を探してただけだって。」

  「・・・だろ?」

  「正解。」

 俺の答えに、呆れ顔のアスマ。
 呆れられても仕方が無い。
 俺が毎日バカみたいにを探してるのは皆知ってる。

 
 俺が片思いしてるお相手。
 最近探しまくってるんだけど、なかなか会えない。
 ひょっとして俺を避けてる?
 でも、会えないって事実が会いたい気持ちを余計に煽る。

  「なぁ、アスマ。どこにいるか知らない?」

 少し考えてから、アスマは教えてくれた。

  「そういやぁ・・・さっき見たぞ。火影様の顔岩の所で・・・。」

 急がないとなぁ。
 またどこにいるか分からなくなっちまう。
 アスマに礼も言わずに、俺は走り出した。





 気付かれると逃げられるかもしれない。
 ・・・なんて、まるで獲物を追ってる猟犬みたいだ。
 俺は、獲物を罠に追い込む犬を想像した。
 顔岩の側で、俺は一切の気配を絶ってを探す。
 あれじゃない。
 あの黒い服でもない。
 あっちに座ってるのも違う。


 ・・・・・いた!



 木陰でぼーっと座っている、とても上忍とは思えない隙だらけの
 俺は音を立てないように彼女の後ろへ回った。

  「はぁ・・・。」

 溜息なんかついて・・・俺には全く気付いていないらしい。
 今がチャンスかもね?

  「。」

  「・・・・!!!」

 は飛び上がって驚いた。

  「カカシさん?!」

  「そんなびっくりしないでよ。」

 俺を見るの目は、まん丸になってる。
 そこまで驚かなくても・・・。

  「いや〜、探しちゃったよ。何日も。」

  「何日も探さないで下さい!あー、びっくりしたー!」

 俺は彼女の隣に腰を下ろした。

  「ど、どうしたんですか?」

  「どうしたって訳じゃないんだけどね。の顔が見たくてさ。」

 明らかに挙動不審なは、なかなか俺の方を見てくれない。

  「あ、もうお昼休みも終わりですよね。私・・・。」

  「いいから座って。」

 立ち上がろうとしたの腕を掴んだ。
 細くて、柔らかい腕。

  「急いで行かなくてもいいデショ?今日はもう任務入ってないくせに。」

  「何で知ってるんですか、私の予定。」

 の予定ならちゃんと把握してるよ。
 あ、俺ってストーカーっぽい?

  「まあまあ。、座って。」

 を見てると、どうしても口元が緩んじゃうんだよな、俺。
 自分でも知らないうちに笑顔になってる。
 しぶしぶ座ったは、やっぱりこっちを見てくれない。

  「最近見かけなかったけど、忙しかった?」

  「・・・別に、仕事で忙しいってわけじゃないですよ。忙しいというか・・何というか。」

 下を向いて、小さな声では言った。
 そーゆー所も可愛いんだよねぇ。

  「じゃ、デートの約束が入ってて忙しいとか?」

  「で、デートだなんて。そんなのは無いですけど・・・。」

 に彼氏がいないのは勝手に調査済みだけど、改めて俺はほっとした。

  「ひょっとして、俺の事避けてた?」

  「・・・とんでもないです。避けてなんかない・・・。」

 ちょっと意地の悪い言い方しちゃったかな?
 は落ち着かない様子でぼそぼそと喋る。

  「じゃ、好きな人でもできたとか?」

  「好きな人・・・ですか?・・・いない事はないですよ。」

 あ、俺、ちょっとショック受けたかも。
 柄にもなく心臓がバクバクしてる。

  「、そーゆー人いるんだ。」

  「え?えぇ、まぁ。」

 ま、それがどんな奴だろうと俺は諦めないけどね。
 ついでだから聞いてみたい。

  「の好きな奴って、どんな人?」

 下を向いたまま、は言いにくそうにしているけど、
 俺はその答えを聞くまで黙ったまま。

  「・・・・どんな人・・・って。うーん、優しくて。」

  「優しくて?」

  「強くて。」

  「・・・強いんだ。」

  「何考えてるのか、よく分からなくて・・・。」

  「なんだよそれ。」

  「あと・・・表情もよくわからない。」

 聞けば聞くほど分からない。
 どんな男なんだよ、それ。

  「で、そいつはの事好きなの?」

  「・・・そんなの分からないですよ。私の事なんて何とも思ってないのかも・・・。」

 そう言ったの顔は少し苦しそうだ。
 聞いてる俺も、その誰だか分からない奴への嫉妬心で結構つらいけど。

  「・・・。そいつって格好良いの?」

  「ええ。顔ははっきりと見た事ないですけど、かなり格好良いって噂です。」

 顔もはっきり見てないのに、好きになれるもんなのかなぁ?
 人柄に惚れた・・・とか。

  「カカシさん。なんで聞くんですか?」

  「あ・・・いいや。ちょっと気になってね。」

 怪訝そうな
 今、俺の頭の中はその正体不明の男のことで一杯。
 考えるとむかむかしてくる。

  「俺の知ってる奴?」

  「え?・・・・知ってると言えば知ってますよ。」

 の曖昧な答えに、俺は混乱してきた。
 俺の知り合いでそんなのいたかなぁ?

  「そいつの名前、教えてよ。」

  「名前ですか・・・い、言えないです。」

 はますます下を向いて、その髪が可愛い顔を隠してしまった。
 くそっ!いらいらするなぁ。
 こんなにいらいらするの初めてかもしれない・・・。
 こーなったら誰なのか、絶対に突き止めてやる。

  「じゃあ、特徴だけでも教えてよ。」

 食い下がる俺。
 しつこいかな?
 でも気になるから仕方ない。
 幸い、も喋ってくれそうな雰囲気だし。

  「特徴・・・ですか。うーん・・・背が高い。」

  「背が高い奴なんてたくさんいるよ。」

  「銀髪。」

  「・・・銀髪は・・・あんまりいないよなぁ?」

  「口布してて・・・。」

  「そっか、だからはそいつの顔全部を見た事ないんだ?」

  「左目は額宛で隠れてて・・・。」

  「変わった奴だなぁ。」

 俺がそう言った時、はちょっと笑った。
 くすくすと笑いながらは続ける。

  「写輪眼らしいですよ?その左目は。」

  「・・・うちはの一族?でも、もう里にはサスケしかいないしなぁ。」

  「ビンゴブックに載ってるみたいなんですけど・・・。」

  「え?そんなに強い奴なの?!」

  「なんでも、『コピー忍者・写輪眼のカカシ』って言われてるらしいです。」

 どこかで聞いた名前だ。





 え?




 今度驚いたのは俺だった。






  「。それって・・・俺?」






 は頷いた。
 そして、大笑いした。

  「あははっ!カカシさん、意外と鈍感なんですね。」

 鈍感って・・・。
 今の今まで、俺は違う男を想像していた。
 嫉妬心が俺の思考をストップさせていたのも原因。
 まさか・・・・それが俺だなんて。

 笑うのを止めて、は悪戯盛りの子供みたいな目で俺を見た。

  「カカシさんは、私の事嫌いですか?」

 今日、俺はという獲物を追ってここまできたけど。
 罠にはめられた獲物は、実は俺の方だった・・・のかなぁ。

 俺は言葉で返事をするかわりに、口布を下ろしての柔らかい唇にキスをした。





  「もう一度、俺からきちんと言うよ。、俺と付き合って。」





  「はい。」





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