『好きだ』『愛してる』

「やめてよ、言いすぎて擦り切れた言葉なんて、聞きたくない。」

と、彼女は言った。



あ、そ。

じゃ、俺なりの『愛しかた』をお前に見せてやるよ。






Believe Me








雲一つ無い青空が広がっている、気持ちの良い午後。

俺はの部屋の前に立ってドアを叩いた。

、いるんだろ?」

返事は無い。

同僚の休日くらい知ってる。

今日、は家にいるはずだ。

ノブに手をかけて扉を押すと、あっさりと開いた。

狭いワンルームの部屋で、本を読んでいる

入ってきた俺を、ちらっと横目で見る。

「・・・また来たの?」

「ずいぶんとつれない挨拶だなぁ。」

「・・・・何で勝手に入ってきてるのよ!」

「鍵、開いてた。ちゃん、無用心だよ。」

膝の上の本をパタンと閉じて、俺の方を見る。

あ、怒ってんのね。

「カカシ、あなたとは付き合えないって・・・ちゃんと言ったでしょー?」

が付き合ってくれるって言うまで諦めないよ、俺。」

「・・・・何、ワケのわかんない日本語しゃべってるの?」

「大体、俺と付き合えない理由も聞いてないんだよ?」

「理由?」

嫌な顔をしたまま、は何も言わない。

俺は黙っての横に座った。

「彼氏がいる、とか?」

「いないわよ、そんなの。」

「好きなヤツがいる・・・?」

「い、いないよ。」

本当はに彼氏がいない事なんて、もう知ってるんだけどね。

「・・・・俺の事が嫌いだから?」

「嫌いじゃないよ、同僚だしね。」

「・・・・、俺だって理由くらい聞きた・・」

「怖いんだ。」

俺の言葉を遮って、は突然ポツリと言った。

「だって、好きだとか愛してるとか・・・そんなの。嘘・・・。」

「どうして言い切れるんだよ。」

「男の人っていつもそうだよ・・・。」

あ〜、俺もその中に入ってるのかな。

「俺が『愛してる』って言っても、嘘だと思う?」

「・・・今は嘘じゃないと思う。でも、カカシだっていつかは。・・・・・っ?!」

言っても分からない奴には実力行使しかないデショ?

化粧して無くても妙に赤いの唇はすごく柔らかい。

そんな事を思っていた俺は、次の瞬間すごい勢いで突き離された。

「急に・・・なにを・・・!」

動揺してるも可愛いんだけどねぇ。

、顔赤いよ?」

「・・・・・・!」






「なぁ、。俺はお前がどんな恋愛してきたかなんて知らないし、興味もない。
 だけど、これだけは言えるんだ。」









「俺は他の男とは、違う・・・・って。

 だから・・・信じてくれないか?」





黙ったまま、2人で床に座りこんでた。

でも、そのうちにだんだんとの目に涙が滲んでくるのが見えた。

「俺は、お前を裏切ったりしない。
 信じてくれないって言うんなら、信じてくれるまで待つよ。」

「私、一生信じないかもしれないよ?」

「いいよ、歳とって死んでも・・・それでも待つさ。」

「・・・・カカシって、意外と我慢強いんだ・・・。」

「意外とって・・・お前ねぇ・・・。
 ・・・・ま、それくらいの事、想ってるからさ。」

の瞳からこぼれてきた涙を、俺は指でそっと拭いた。

そして、その華奢な体を強く抱きしめた。






「・・・・カカシの事、信じてみよう・・・かな。」

小さな声で、はそう言ってくれた。







怖がらないでよ、

俺はお前が経験してきたクダラナイ恋愛なんかとは

比べ物にならない程

良い恋をさせてやるから・・・・・・一生、ね。






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