今夜、お前に会えるんなら、

俺はどんなに遠くへだって行けるよ。

お前がいない部屋なんか、

俺のいる場所じゃないから。






1000 MILES.





こんな感情がある事を、今まで知らなかった。

初めてだよ。

26年生きてきて、色んな恋をしたけど

ここまで俺をオカシクしたのはお前が初めてなんだ、

今夜はどうしてもお前に会いたい。

そう思ったらいても立ってもいられなくて。

がいない、静かな部屋を飛び出した。

もう1ヶ月もまともに顔を見ていない。

お互いの任務が忙しいのは分かってるけどさ。

大蛇丸の企んだ「木の葉崩し」以降、

俺もも任務ばかりで、一緒に食事する事もなかった。

でも、どうやら俺の我慢の限界も今日までらしい。

たとえが任務の最中でも、

今夜はどうしても会いたいんだ。





がどこにいるのかって、大体の見当はついてる。

後はただそこを目指して走るだけ。

そしたら、お前に会える。

静まり返った森の中を、俺はひたすら走った。










人工的な音は一切無い。

風に揺れる木々のざわめきが聞こえるだけ。

月明かりに照らされて、ぼんやりと影が見えた。

木の上で、俺は気配を探る。






人数は・・・・・2人。





ぶつかり合う刃物の、鋭い音。

戦闘中らしい。

時折、激しく煙が上がる。

片方が何か術を使ったんだろう。

炎の塊を避けた忍が、後方に跳びのいた。

月の光に照らされて顔が見える。

それは紛れも無く、俺が探していた・・・





俺は気配を殺したまま、どこの誰だか分からない忍の背後に回りこんだ。

「・・・・っ!」

ほんの一瞬の隙。

俺はそいつの背中にクナイを突き刺した。

男は大声を上げる事すらなく、そのまま地面に倒れこむ。

倒れていく男の向こう側に、の顔が見える。

。」

「・・・・誰?」

「お前ねぇ、久しぶりに会えたのにそんな言い方はないんじゃない?」

「か・・かかし?!」

大きな目を更に大きくして、がこっちを見てる。

「ナニ?びっくりした?」

精一杯の笑顔で、冷静を装って。

俺はに笑いかけた。

「驚くに決まってるじゃない!何でここに?!」

血の付いたクナイを放りだして、俺はを強く抱き締めた。

「なんでもいいだろ?」

「ちょっと、なんでもよくないって。どうしたの?」

「・・・会いたかっただけ。」

「それだけ?!」

「そ、それだけ。お前に会うのに、他に理由がいる?」

「だって、私任務中だったんだよ?」

そう言って、が俺の腕を振り解こうとするから

俺は更にその体をぎゅっと抱いた。

「ごめん。いつもの俺ならこんな事しない。

けど・・・今夜はどうしてもお前に会いたかったんだ。」

「・・・・カカシ。」

の細い手が、俺の背中に回されて

華奢な指が俺の背中をしっかりと掴んだ。

「・・・・私だって、会いたかった。」

俺を見つめるの瞳が、ゆっくりと閉じる。

口布を下げて、俺はの柔らかそうな唇に

少し乾燥した自分の唇を重ねた。

冷たい風が森全体を揺らして通り抜ける。

月の蒼白い光が木の間から漏れてくるみたいだった。

そっと唇を離して、改めてお互いの顔を見る。

「今日カカシに会えるなんて思ってなかったよ。」

嬉しそうに微笑む

、任務は・・・これで終わり?」

「うん。報告は明日でいいし。」

「そっか。じゃ、一緒に帰りますか。」

「・・・カカシ。」

「なに?」

言いにくそうに少しためらって、は遠慮がちに言った。

「帰る前に・・・もう1回。キスして。ここで。」

潤んだ瞳で、恥ずかしそうにそうねだる。

「・・・、俺の理性が吹っ飛んでもいいワケ?」

「大丈夫だよ。カカシはそんなタイプじゃないって知ってるもん。」

「・・・分かってないなぁ。俺だって男なんだよ?」

「だってカカシ、今だって全然平気そうな顔してるじゃない。」

「バカ。こう見えても、俺、我慢してんのよ?」





それでもが動こうとしないから、

俺は軽く触れるだけのキスをして、

の体を抱き上げた。

「カカシ!自分で歩けるから!下ろしてよ!」

「だーめ。このまま俺の部屋へ直行。」

「私、もう帰って寝たいんですけど・・・・。」

「ナニ言ってんの?。今夜は寝させてやんないよ。」

「カカシ・・・それだけは・・・。」

抵抗しようとするを、俺は無理矢理抱えて走り出した。

月の光が妖しく森の中を照らす。







、お前が悪いんだよ?

分かってるデショ?

俺の理性なんて・・・

お前の顔見た時に、もう吹っ飛んじゃってるんだからさ。






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