小さな星が流れた。
あっ、と気付いたけれど、
願い事をするにはあまりに瞬きが短い。

雲ひとつない、夜空。
その中心に光る星は、川の形。

今日は、
7月7日、天気は快晴。



七夕








こういうロマンチックなイベントは、あのプリンスだかなんだか・・・
は、一番、好きそうなクセに。
昼間にルフィ達とはしゃぎすぎるもんだから
(たまに、子供みたいに、バカ騒ぎすんのよね、アイツ)
12時になるより前にぐっすり就寝。

私はこうして、一人、星を見ながら見張りってわけで。
別に、いいんだけど。

読みかけだった本をまた開いて目を通して、
静かな夜を過ごしていく。
そうしていて、どのくらいたったんだろう?
小さく、かたん、と音がして。
誰か、目が覚めたのかしら。
何となく話し相手が欲しい気になって、見張り台を降りていく。

船尾のほうで、動く影。
その姿を追うと、見えたのは、黒く、長いまっすぐな髪。
—そういえば七夕の話に出てくる"織姫"って、
黒い長い髪の毛の女の人だったっけ。
ふとそんなこと考えて、声かけようと思ったら、

「あなたには・・・七夕伝説、なんて似合わないわね」

・・・え?

反射的に柱に身を潜めて、様子を伺った。
まさか、私に言ったとは思えないから。
ロビンの横にいるのは、足元に腰を落ち着けた・・・
まるで、"彦星"の絵とは程遠い、緑色の髪の剣士。
つまらなさそうに鼻で笑って、ロビンの腕を引いた。

何、なに・・・・どうゆうこと?

「似合わねェ奴に会いに来るお前も、相当だな」
「ふふっ。そうね」
ロビンは引かれるままにゾロの首に手をかけて、
頭を抱きしめるように寄り添う。

ちょ、ちょっと。
そうゆう関係だってことはわかったわ。
で、でも!!
私が見張りだって分かってるでしょ?
もしかしたら見られてるかも、とか思わないわけ?


私のそんな気持ちなんて、分かるわけもないのよね。

「いい天気。星が綺麗」
「あァ。会えただろ、多分」
「そうね。こうして・・・ね?」

愛しそうに頭を撫でて、
頬に一度、
そして唇に一度、優しいキス。
大人のキス。
私には、出来ない。

生ぬるい気候なのに、火照った自分の頬には涼しく感じられるくらい。

って。
ゾロ、顔赤いし。
私と同じような反応して、どうすんのよ。

「・・・ねえ」
降ってくるような星の光に照らされた、
美しい微笑みで、ロビンはそっとゾロを呼ぶ。
「何だ」
「あなたからキスをして」
「ん、な・・・・・・」
「私から、わざわざ会いに来たのよ。ほら、この前は出来たでしょう」
「ばッ・・・!!!」

そうなの!?ゾロ!
アンタ、意外と頑張ってるじゃない。
——じゃなくて。

観念したゾロは空を仰いで目を閉じ、一呼吸置いてから、
まるで真っ赤なままのカオで、
ロビンの背中に右手を回してそっとその場に倒していく。

左手の親指でロビンの唇をなぞって、
ゆっくり、
壊さないように。
少し強く目を閉じたまま、
唇を重ねる。
最初は軽く、
やがて、深く。

幾度となく、キスを交わしているのに、

あのプリンスとは、全然違う。

静かなキス。

とても見ていられなくて、目を離した。
音を立てないように、
奮える足を抑えて見張り台に戻る。


ゴーイングメリー号の中の、七夕。
魅惑的な織姫と、
やや?不器用で・・・努力家な彦星。
そんな二人。


今日は晴れだから、
七夕だから、
1年に1度しか会えないって、
そんな日だから、
見逃してあげる。