じっと黙っていても、じんわり汗が額を伝う。
気持ちいいくらい真っ青な雲ひとつない空と、大きな太陽。
夏島が近い。


夏をあなたと過ごすのは初めてだっけ。



夏と







ビーチについた私たちは、
すぐに着替えて海に飛び込んだ。
勿論、
ルフィとチョッパーは飛び込めずに二人で砂山なんか作ってる。

「うひょ〜!夏はやっぱり、海に限るなァ!!」
ウソップは思い切りはしゃいで、
ゾロと泳ぎの競争なんてしてて、
そんなの、
勝てるわけないのに。
とか思うけど。
必死に追いつこうとしてるウソップに、
吹き出してしまう。

そんな私に、
後ろから腕が伸びてきた。

「ナミさん!」
顔いっぱいに笑って、
嬉しそうに首の前で腕を交差させた。
腰元からは水に浸かっていて冷たいのに、
あなたの腕はすごく温かくて、
少し変な感じ。
「やっぱりナミさん、水着似合うなァ」
突然腕なんて回すから、
文句言ってやりたかったけど、
すごく幸せそうだったから。
嬉しそうな、
そんな顔見たら、
別にいっか、って思った。だって、ほら、

夏だし。

夏ってあまりに太陽がまぶしいから、
日差しが強すぎて、
サンジ君が。

何故だかいつもより輝いて見えちゃうのよ。


「あ、ナミさん今おれに見惚れてる?」
ヘラヘラ笑って自分を指差して、
そんなアンタに、前言撤回。
「ンなワケ、ないでしょっ!」
右ストレート、炸裂。
「愛が痛い〜っ」
パンチが入っても、やっぱり楽しそうに笑ってる。
もう、どこまでバカなのよ。

いつの間にか競争を終えたウソップが、
ここぞとばかりに後ろから水をかけてきた。
「!」
「クソウソップ!てめぇ、おれのナミさんになんてことを!!」
「アンタのじゃないわよ!」
海の中に潜って逃げるウソップを、
サンジ君がすぐさま追いかける。
はしゃいでウソップと水なんてかけあって、
ほら、また、その笑顔。

二人きりのときの優しい笑顔も好きだけど、
太陽の下で大きく口開けてさ、
無邪気に笑ってる顔がね、
なんだか分からないけど、すごく好き。
そんなあなたを見てると、
私も楽しいなって、幸せだな、なんて、思うんだ。

こんなこと、
きっと調子に乗るから言わないけど。

でもさ、
夏だから、
ちょっと弾けた気持ちになっちゃっても、いいわよね?


「あ」
サンジ君の背中に向かって走って、
その背に思いっきり飛びついた。
ウソップがサンジ君に危ない、って言うより前に、
私とサンジ君は、海の中。

水しぶきが、
ウソップの目を覆っている間だけ。

水中で、
ほんの数秒だけ、
私からあなたへのキス。


ううん、キスって呼んでいいのか分からないくらい、ただ、触れただけ。
だけどどんなに小さくても、
その場所から私の想いが伝わったでしょ?



「ナミ〜!びっくりさせんなよ!!」
顔を出してすぐ、ウソップからの非難の声。
「アンタのさっきのの仕返しよっ!」
「何ッ・・・うお!?」
海からあがってきたサンジ君が、
ウソップの足をすくって転ばせた。
派手に海中へ沈んでいくウソップを尻目に、
サンジ君はちょっと照れたように笑って私を見る。
「ナミさん、大好き」
「知ってるわよ」
「おれ、グランドライン一幸せな男だ」

たった数秒のキスで、
それだけであなたは幸せになれちゃう、人。
単純だわ。


そんなあなたの言葉や笑顔で幸せになれてる私は、もっと。



また始まったサンジ君とウソップの戦いを、
応援するみたいに太陽はめいっぱい輝いてる。



この夏とあなたと
一緒に私もきらきら出来ますように。