そりゃあ、ロマンってヤツだ。
栗のおっさんと比べちゃ天と地ほどの差があるが、
おれなりの、さ。



バス






突然の、スコール。
この地域の特色だと知ったのは、少し後のことで。
街に向かう途中だったおれとナミさんは、
街までの距離を考え、船に戻るほうが早いと判断。
急いで走って戻ったものの、
上から下までびしょ濡れ。

水も滴るなんとやら、と笑おうとしたけれど、
ナミさんの不機嫌そうに結ばれた唇を見てやめておいた。
「もう!!アンタが寝癖直らないとか言って出かけられなかったら、
こんなことになったんじゃないッ!もうちょっと早く出てたら、
街で雨宿りも出来たのに」
彼女は上着の裾を絞りながらおれを睨みつけている。
雨に打たれたナミさん・・・ってのも、いいなあv
「ごめんごめん、ナミさんv」
「・・・くしゅっ!!」
くしゃみを、ひとつ。
雨に打たれて体も冷えてる。
このままじゃ風邪ひいちまうなあ。

「とんだ目にあったわ。私お風呂入ってくる」
吐き捨てるように言って着替えを取りに女部屋へ足を早めていく、ナミさん。
今日の船番は、ロビンちゃん。
他の奴らは、まだ当分この雨で帰ってこないだろう。

・・・これは。
いいシチュエーションかもしれない。

おれは咄嗟に男部屋に走って、
タオルや着替えなんかを適当に引っ張り出して、
風呂場へ走った。


そこにはまだ、ナミさんの姿はなかった。
1人で先走ってる自分に、少し笑えた。
すぐにナミさんがやってきて、
驚いたようにこちらを見る。
「アンタ、何やってんの。レディ・ファーストでしょ?」
「いやァ、ナミさん。おれも一緒に入りたいなあ、なんて」
ナミさんはいつも、拒否するから。
恥ずかしい、なんて可愛いこと言っちゃって。

けどさァ。
愛しのナミさんと一緒に風呂に入る。
背中を流し合ったりとか。
まァ・・・その他色々。
それがおれのなんて言うか、
願望、夢、ロマン?
とか、そうゆうことなんだよ。

「いっ・・・・・・いやよ、い・や!!」
案の定、きっぱり断るナミさん。
それは分かってたさ。
「でもさあ、ナミさん。おれもこのままだと風邪ひいちまうし」
少しトーンを低くした声と、
悲しそうな瞳で見てみれば。
悩んでるナミさんが目の前に。
こうゆうとこ、
優しいとこ。
大好きだなあ。
「おれが風邪引いたら、旨いメシも食えたくなるしさ」
「そ、それは、困るけど・・・」
「でしょ?だからさ、ナミさん」
濡れたままだけど、そっとキス。

真っ赤になったナミさんの顔見て、
ややこのまま服を脱ぐとまずいか?とも思いつつ。
そこは堪えろ、おれ。


「こっち、見ないで!!見たら殴るから!!」
なんとか許可を貰ったものの、
脱衣から背中合わせを強制されてみたり。
おれが脱がすのに、って言って既に何発かパンチを頂いた。
タオルで体を隠して、おれに先に入るように促す。
「ナミさん、前は幸せパンチしてくれたのに」
「アレはアレよッ!!」
ナミさん、さすがにあの時は驚いたんだぜ。
あんな大胆なナミさんも好きだけど。
今のナミさんもやっぱり好き。
シャワーの栓をひねって、お湯の温度を適温にする。
「ナミさん、こっち来て」
躊躇してる腕を引いて、
肩からゆっくりシャワーを浴びせていく。
ナミさんの体に当たった雫が飛んで、
おれの体に当たるのが何だか心地良い。

シャワーで軽くお互い体を流して、
早速湯船へ。
狭いそこでは、2人向き合って入るほど余裕はなくて。
つまりは、ナミさんをおれが後ろから抱きかかえる体勢、
で入るわけだけど。

・・・参ったな。
「エロサンジ」
「ははは」
そりゃ、反応しちゃいマス。

ナミさんの腰に手を回して、
肩に顎を乗せる。
少し熱めの水温が体を心から温めていく。
それと同時に、
ナミさんと一緒に入ってるんだなあと感じて、
心も温まる・・・というよりむしろ、
熱くなってきてる。
「もう、ホント、恥ずかしい」
ナミさんは泣きそうな声なんか出してるけど、
それがまたおれを刺激してるって、分かってる?

「ナミさん、あったかい」
もう少し強く抱きしめて、首筋を唇でなぞる。
「サ、サンジ君っ」
「こっち向いて」
少しだけ振り向いた唇に、キス。
さっきは冷たかった唇も、
もうすっかり熱を帯びてる。
シャワーからの水滴が落ちる音だけが響く空間で、
深く、熱い、キスを重ねる。
多分かなり長い間、そうした後に、
唇を離す。荒い息が、口からもれる。
「ナミさん、したくなっちゃった」
「分かってるわよ、言わなくても」
体がこんな密着してちゃ、さすがにばれたみたいだ。
今までは狭いバスタブだと嘆いていたが、
悪くないかもしれない。
肩や背中にキスを降らせているうちに、やっと。

「ん、もう・・・」
くるっと体ごと振り返らせて、
ナミさんはおれの首に腕を回す。

OKの、合図。


最初からこうしようと思ってたわけじゃないんだぜ、
弁解に聞こえるかも知れねェが。
あまりにも、ナミさんが魅力的だったってことだ。

「ん、あっ、サンジくっ、んっ・・・!」
声が響くのがまた堪らなく刺激的で、
なんとか声を抑えようとしてるナミさんなんて、更に。
そんな姿を見ると苛めたくなるのが男ってもんで、
わざと激しくしたり、
じらしたり。

ナミさん、大好き。
最高に、好き。



結局2人とも体は温まったものの、
のぼせて頭がぼおっとして、
風呂場でだらだら抱き合っていたら、
体が冷えて風邪をひいちまった。
ロビンちゃんは笑ってお大事に、なんて言ってくれたけど。


ナミさんがこれから何言っても、
また一緒に入りたくなるだろうおれの頭は、
お大事・・・ではなさそうだ。