眠るお前の横顔を、もうどのくらい見ているだろう。





久しぶりに二人きりになれた夜。
言葉を交わすより早く、頬を手で覆い、唇をあてた。
「・・・どうしたの?」
小さく驚いてあげた声も聞こえてはいたけれど、
答える余裕もなかった。

目の前で倒れたお前を、
抱きとめる腕しかなかった。
おれが守ってやる、なんざ、
思ったことはなかったが、
それでもあの光景は。
思い出すだけで・・・どこかで、何かが痛む。
おれには似合わない感傷だ。

肌を露わにすると、縦に走る傷跡。
指をなぞるように滑らす。
「大丈夫、痛くはないわ」
気持ちを悟って優しい声で囁いた。
そんなお前を強く抱きしめて、
そのままベッドに倒れこんだ。



そうして、おれは眠れずにいる。
目覚めればまた、
次に何が起こるか分からない毎日が始まる。
船が空を飛んだり島が空を飛んだり・・・
別に、悪くない。
そんな生活も。

だから。
・・・だけど。


今はお前だけを見ていたい。
そう思う。

体は疲れを感じているが、
こんな風に傍にいられるのが次はいつになるか分からない人生だ。
だから今は。
今だけは。


腕を伸ばして、髪に触れた。
長い髪はすぐにおれの手をするりと離れる。
何故だか、たまらなく、
痛みを感じた。

起きるなよ、と心の中でだけ言って、
額へ小さな、キス。

「・・・お前を」

言葉にするのは苦手だ。
正面切って、お前には言えない。
眠っているお前に、
こんな夜だから、
今だから、

「離したくない」

消え入るくらいの声で、呟く。

眠ってまた目を覚まして、
ルフィ達のところへ戻って、
明日の見えない毎日へと出航すれば。

こんな想いをお前に知られることもないだろう。


今だけはここでこうして、
隣で眠るお前の存在を、
感じていたい。