あなたの優しさは、心地がいいわ。 


優しいヒト








ふと、目が覚めた。横を見ると、
ロビンがこちらに背を向けて眠っている。
なんとなく寝付けなくて、
起こさないようにそっと扉を開けて、外に出た。
空には雲がかかっていて、星の姿は見えない。

でも見たいのは、星じゃない。
・・・やっぱり。

こんな暗い夜の闇の中でも、
映える金色の髪。
それは、
タバコの小さな灯りのせいで私の目に映っているせいかもしれないけれど。

そんなにタバコ吸ってばっかりいたら、肺が悪くなるわよ。

寝付けなかった理由なんか分かってた。
あなたが見張りだって知ってたから。

「サンジ君」
なるべく驚かないように、小さな声で話しかけたけど、
サンジ君はやっぱりちょっとびっくりしたカオで、私を見た。

「ナミすわ〜ん!こんな夜更けに、どうしたんですか」
私に駆け寄ってきて、
当たり前のように彼が使っていた毛布をかけてくれる。
「ちょっと、眠れなくて」
「それはそれは。じゃあ、ホットミルクでも持ってきますよ」
少しだけ交代、といってキッチンの中へと消えていく。

『男の人って、さりげなく優しい人が好きだな私』
ビビは何度か、そう言ってたっけ。
誰のことを言っているのかは教えてくれなかったけど
(多分、アイツのことよね)。
私もそうねって、頷いてた。でも・・・

「お待たせナミさん。熱いから気をつけて」
「ありがと。ごちそーサマ」
ずっとアーロンの下でがむしゃらに生きてた私にとって、
この人の優しさが、心に染みる。
どう反応したらいいか分からなくて、
恥ずかしくて無視しちゃったり冷たくあしらっちゃったりするけど。
でも、全くくじけないんだもの。

「今夜は星も見えなくて、見張りもつまんねェや」
またタバコをくわえて火をともし、
サンジ君は煙を吐きながら呟いた。
「うん。この分だと明日はもっと冷えるね」
「じゃ、朝飯は体が温まるようなメニューにするかな。
ナミさんの大事な体を壊されちゃ困るし」

女だから優しくしてくれてるだけだとしても。
それでも構わないわ。

「暗闇の中でもナミさんの美しさは衰えないなあ」
「何言ってるの」
「いや、ホントに。ずっと見ていたいなあ」

あなたがそうやって冗談でも、本気でも、
私の傍にいたいって思ってくれるんなら。
私もあなたの優しさに、
甘えてみるのも悪くないわね。