同じ船に乗ってて、
毎日顔を合わせるのに。
アンタはいつでも、私に優しい。

そんなの、
疲れない?


温暖化







「面倒くさく、なんない?」
突然の問いかけにも、
ユルイ笑顔で振り返る。
「ン、何のこと??」

風が強くて、
今日はずっと部屋で海図を書いてた。
ひと息ついたときに、
見計らったかのようにアンタはやってきて、
「デザートです、レディ」
なんて。
この人が来てから、
ずっとこう。
毎日毎日。


「こうゆう、気遣いとか」
いつも笑って、
スキスキって言うこと、とか。
「まさか」
大げさに首を振って、
サンジ君はまた微笑む。
「そんなこと、思ったこともないさ。
おれはナミさん大好きだから、
ナミさんに尽くすのが生き甲斐なんだよ」

こうゆうことを、平気で言う。
よくワカラナイ人。

私の育ってきた世界には、
アンタに似た人がいっぱいいたわ。
調子のいい言葉を並べるだけ。
ただ・・・

アンタみたく、長続きしないし。
ずっと、
優しい表情を見せてくれることもなかったけれど。


けど、
それだけで簡単に、心を許したりなんかしない。

「アンタの言う、好き、って」
もう、部屋を出た後。
誰もいない空間に向けて、呟く。
「どの、好き、なのよ・・・」


女全般への好き?
挨拶代わりなんでしょう。
どんな人にでも、そう言うんでしょ?
それとも、私と寝たい?
体が欲しいだけなら、好きだなんて言葉は、邪魔だわ。
面倒なことになるのは嫌なの。


・・・


そう思うのが当然でしょ。
だから思い切り、
流しているのに。
なのに、アンタは。


冷たくしても。
「ナミさん、この味は好み?」
笑顔を、返さなくても。
「ナミさん、寒くねェ?」


私の気持ちを、
アンタに向けなくても。
「ナミさん、好き」



もうたくさんだわ。
そんな言葉をいくつも、
毎日投げかけられたら。
優しい笑顔を向けて、
暖かい声で言われたら。

コイゴコロ、
なんていう、
私の奥で冷え切ってた感情が。



どうにかなっちゃいそうじゃない。