太陽に照らされた大海原の中でも、
暗闇に包まれた夜の中でも。
我が道を行く
そう、強く物語るようなまっすぐな瞳に、
私は魅入られた。













もう生きていく理由など、どこにもない。
そんな絶望から無理やり、あの船長さんに助けられた日。
もう一度、新しく始まった人生。
あの時までの私とは、違うのだと今はっきり、分かる。
それは恐らく、この人の瞳のせい。

「どうかしたか」
じっと見つめる私の視線に気付き、問い掛けてくる。
ぶっきらぼうな口調ははじめのうちは冷たく感じたけれど、
今は、ただ不器用なだけだと知っている。
「見ていたかっただけ」
照れたように困った顔をして、そっぽを向く。

10歳ほど、年下の彼。
けれど、そんなことを私を感じさせないように・・・
いいえ、彼自身のプライドのために、かしら?
どちらでも、構わないのだけれど。
そのために、私に追いつこうと、
そして追い越そうとする様子。
おれについてこい、と言わんばかりの背中。
でも、ついていくと迷子になってしまうのよね。
それが分かっていても、ついていきたくなるわ。
結局私がリードして、悔しがる貴方もやはり、堪らなく愛しいのだから。

背中に腕を伸ばして、そっと、頬を寄せる。
本物の、腕で。
貴方と2人きりのときは、
能力なんか使わない、只の私。
貴方とは、駆け引きなしでまっすぐぶつかりたいから。
そうでないと、貴方の瞳には映らない。

「あたたかい」
従うことは得意だった。
命令を聞いて、着実にこなす。
ただ、それだけ。
頼ったり、甘えたり・・・
そんなこと、私にはあるはずもないのだと、悟って生きてきたのに。
こんなところで知るなんて。
広くて、あたたかい背中。
触れていたい、ずっと、追っていたいと、思うなんて。

振り返ってそっと、頬に触れる手。
傷だらけで、ごつごつした硬い手だけれど、
私にとって今は何より心地良い。
何も言わずに、唇を重ねる。

お前を信用したわけじゃない。
彼はそう言った。
初めて、私に触れた日に。
まっすぐな瞳で。私はそれに、魅入られた。

お前を、好きなだけだ。

どうしてその言葉だけで、
あんなに嬉しかったんだろう。
それ以来そんな言葉は、口が裂けても言わないと、
口をつぐんでしまうけど。

生きていくのも、悪くない。
貴方の、瞳に映っていられるなら。