珍しくメシでもねェのに、目が覚めた。
太陽の場所からすると、まだ昼過ぎ。
食ってから2時間も寝ていない。

まぁこんな日もあるか。
太陽の次に見るのは、
無意識に探したお前の姿。

甲板でナミと一緒に腰かけて、本を読んでいる。
天気がよく暑いため、
丈の短いキャミソール。
少し・・・露出が多すぎやしないか、と、思う。
ナミなんかはいつもあんな格好をしていて、
クソコックは踊りながら喜んでるが、
アイツがたまにそうゆう格好をするのは・・・
気にかかる。


「ロビーーーン!!ナミ〜〜!!」
大声で叫んで飛んできたのは、ルフィ。
「おれ、サンジの物真似できるようになったんだ!見てくれよ」
「アンタ、またそんなくだらないことやってんの?」
「ふふっ」
本から目を離さないロビンにルフィが後ろから近づく。
「いっつも、何読んでんだよ?」
両手を首の横から伸ばして、
ロビンの持っている本を掴む。
文字を読めもしないのに覗き込んで、
難しそうな顔をした。

おい・・・
近すぎるだろう。
お前。


立ち上がったものの、
文句を言いに行くのも、おかしい。
アイツは何も考えずに行動してるだけだ。
そうさ。
何も問題は、ない、・・・。

「ばーか、あんたにはわかんないわよっ」
「そうね、少し難しいかもしれないわ」
ルフィは不満げに本を離して、その場に座り込むと、
ロビンの背中にもたれかかった。
「おれ、腹減ったーー」
「さっき食べたばかりじゃない・・・」
「サンジ〜〜!!おやつ!」
「早いッ!!!」
後片付けをしているクソコックに代わって、
ナミが持っていた本でツッコミを入れている。

おやつでもなんでも、早く持ってきやがれ。
そいつを満足させて、早く離れさせろ。
おれが触るたびに、
どれだけの決心が必要か分からないだろう。
そんな風に簡単に近づいて、腕をかけて。
おれには出来ないだろうが・・・


「いてっ!!!」
ルフィの横を通り過ぎながら、少し強めに頭を小突いた。
いや・・・力が入りすぎたかもしれない。
「何すんだ、ゾロ!!!」
「ゾロ、あんたどうしたのよっ」
ルフィとナミの非難の声など、どうでもいい。聞こえない。
お前の横顔を、ちらと盗み見る。

こっちに視線だけを向けて、くすりと、笑う。
ちくしょう、余裕を見せやがって。
悔しいのに、
頬が紅潮する自分がいて、
更に悔しくなる。


やってられるか。
もう一眠りして、こんなことは忘れてやるさ。


「ゾローーー!!!!」


「!!」
後ろから、ルフィのパンチが文字通り飛んできた。
なんとか避けて、ルフィを睨む。
「何だルフィ!ふざけんな」
「お前からやってきたんだろっ!!負けねェぞ!」
「待てルフィ、そうじゃねェ、話を・・・」
「ゴムゴムの〜・・・・・・!!!」
「おいっ!!!!」


ルフィの技を避けながら、
お前の笑う顔が、おれの視界をよぎる。
それだけでおれの頭の中は、
お前のことでいっぱいになって、おかしくなりそうだ。

お前のことだけ考えて、
お前のことだけを目で追って、
ルフィやクソコックにくだらない感情を、抱くことも、ある。
どうにも、慣れねェ。
こんなことは。


「剣士さん」
ルフィの攻撃が当たらないように緩やかに歩きながら、
通りすぎさまに、言う。
「頑張って」

「・・・・・・っ!」
また、頬の温度が上がる。
一言でなんてザマだ。
悔しいが、


そんな感情や、お前の声が、
全てがおれを侵食していく。
それが少し心地良いとすら感じてしまうおれは、
もう、
お前に・・・—————