貴方を見ていると、楽しい。
刀を振るっているときは自信に満ちていて、
凛とした姿には目を奪われてしまうほど。
なのに、いざ二人になると、
なんとか私より一歩前に出ようとする。
私が隣にいくと、焦って、足を早める。
それが、楽しい。
前に出ようといそいで、つまづいて。
そんな貴方が、
いてよかった。
限
街に降り立って買物中、
先ほどまで一緒にいた航海士さんは、
コックさんに連れられて、どこかへ。
次の島までは少し時間がかかるみたいだから、
今日はゆっくりお二人でどうぞ。と、笑顔で見送った。
時間は、まだ、午後の2時。
たまには一人で歩くのも、いいかしら。
少し肌寒いけど、天気はいい。
大通りを歩いて、何本目かの通りを右に曲がる。
知らない街を歩くのは楽しい。新しい風景を見られるから。
「あら・・・」
けど、そこで見たのは、
見慣れた人。
の、
見慣れた表情。
「お前っ・・・ナミが、一緒じゃなかったのか?」
剣士さん。
驚いた顔。
貴方を驚かせるのは得意だから、
この表情は見慣れている。
「コックさんと、どこかへ」
「また、あいつか・・・」
「貴方こそ、船長さんと一緒じゃなかった?」
「ああ、メシ食ったら眠くなったとか言って、船に戻りやがった」
「ふふっ、珍しいわね。貴方は眠くないの?」
少し眉を吊り上げて、
「うるさい」
拗ねたように、そっぽを向いた。
街中だから何もしないけれど、
こんなとき、
髪に触れたくなる。
私も背を向けて、言う。
「一人のほうが気楽かしら?」
すぐこう言ってしまうのは、私の癖。
貴方の気持ちをわかっていてもつい、
試したくなってしまう。
「別にっ・・・」
すぐに否定するのに、そのあとの言葉が中々出てこない。
いつものこと。
いとおしいと思う。
とても。
「そう、じゃあ、一緒に歩きましょう」
腕を伸ばして、貴方の左腕にするりと絡める。
貴方がまた、先に歩こうとしないように。
リードしたいと貴方は思っているでしょう?
私はされたいとも、したいとも、思っていないわ。
同じ位置で、
関係していたいと思うの。
腕に伝わるのは、
貴方の鼓動と温度。
まだ腕を組むのすら慣れずに、
硬い表情で、隣にいる。
・・・少し、
唇に触れたい。
もっともっと、貴方を感じたい。
ねえ、
こんなこと思わせられるのは貴方だけよ。