改めて、
あなたのことを考えました。



My Sweet Day



今日の私は、機嫌がイイ。

「ナミさ〜んっケーキ持ってきたよォ〜!」
笑顔でやってきたサンジ君に、笑顔で返す。
「ありがと」
忙しいと顔も見る余裕もなくて、
日誌に向かいあったまま返事をすることもある。


朝から天気も良くて、航路も予定通り。
日誌もたまってた分書き上げた。
それに。
それにね。
「豪華なケーキね」
「そりゃあ、もう。今日は特別に、クソゴム達の分減らしまくって、
ナミさんのケーキだけに力注いだからさ」
今頃、ルフィ達は不満でも言ってるのかな。
まあ・・・ルフィに、味の違いが分かるとも思えないんだけど。
睡眠薬入れられても、気付かないくらいだからね。

皆には悪いけど、今日は多めに見て。

ふわふわのスポンジに、ほんのり桃色がかった生クリーム。
バニラビーンズと小さなブルーベリーが散らばって、
真ん中にはラズベリーがふたつでイチゴがひとつ。
サンジ君の作るデザートは、いつも可愛くて、
フォークを入れるのが勿体無い。
横でキラキラした目で、「食べて、食べて」って訴えかけられるものだから、
手を伸ばさざるを得ないんだけど。
口に入れたら、いっぱいに甘くて柔かくて、
すごく幸せな味が広がってく。

サンジ君だから、こんなに美味しいものが作れるんでしょ。
私にだから、作れるんでしょ?
「おいし」
「良かった」
イスに座りながら、背もたれに腕をかけて、
ずっとにこにこしながら私の食べてる姿を見るのがすきな、
サンジ君。
だから私はとびきり美味しそうに、食べるの。
今日は、特に。
最後の一口を口の中に入れて、
喉を通って、紅茶を飲んで。
「ご馳走さま」
って言って。
サンジ君がどういたしまして、って言う前に、
まだ甘い唇で、キスをした。
「っ・・・・・・!」
自分からはすぐそうしてくるくせに、
私からすると、びっくりして赤くなる。
私はそんなサンジ君の顔を見て、笑うんだ。
「ナ、ナミさん」
「お礼」
いつもはこんなこと、してあげないわよ。
今日は機嫌がいいの。
それだけ。
ただ、ちょっと特別なだけ。


たまに1人で寝る前とか、考えたりする。
船が思うように進まなかったり、
ルフィがみかんつまみ食いしようとしてるのを発見したり、
私がいくらイライラしてて、
サンジ君のこと相手にしなくても。
アンタは毎日毎日、
飽きずに懲りずに笑顔で三時にやってくる。
それって、すごいことなんじゃない。
私のこと、もしかして、
すごく好きなんじゃない。
そうじゃないと、そんなことできないでしょ。
いつも笑顔で。
時にはちゃんと危険から守ってくれて。
具合が悪いと心配してくれて。
たまに、情けないところも、見せるけど。
なんかさ。
そんなサンジ君が、
なんだか。
私も、すっごい好きかも、
って思うのよ。

そっと腕を回して、もう一度、キス。
唇を合わせるだけの、軽いキス。
もう一度。もう一度。
それから、
ぎゅって、抱きしめてみる。
そしたらサンジ君の腕も腰に回されて、
強く抱きしめられて、
サンジ君やっぱりあったかいな。って、思う。
好きって思う。
 

今日で、半年ね。
貴方と付き合って、半年。
別に、わざわざ口に出したりしないわ。
お互い分かってるから。
半年なんて、ただの通過点に過ぎないし。
けど、改めて、考えたの。
好きだなって。
好き。
サンジ君が好き。
出会ってから時がたったけど、
きっとこれからも、
ずっとずっと好きって、
根拠もないのに思うのよ。
だからさ、サンジ君もそうだといいな。
そうじゃなきゃ、困るな。

好きでいてね。

って。
思っただけだったはずなのに、
声に出してた??
サンジ君、笑って、
「当たり前」
そう言って額に口付けた。
おかしいな、言ったつもりはなかったのに。
それともまた、
私の思ってること分かっちゃったのかな。
こんなに好きだってことも。
ずっとあったかいサンジ君の腕の中にいたいことも。
こうして、
「ん・・・」
優しいキスを繰り返していけたらいいな、ってことも。


「サンジ〜〜!!妙な魚が釣れたぞっ!!!」
雰囲気も何もない、ウソップの叫び声。
それに続いてルフィとチョッパーの奇声も聞こえてくる。
この船に乗ってる限り、これは必須なわけで。
それも、仕方ないんだけどね。
いいけど。
「あいつらは・・・空気を読めてねェな」
呆れた声で、眉間に皺を寄せて、
不機嫌を露わにするサンジ君が、おかしくて。

この人は変わらないな。
ずっとこうだわ。出会ったときから。
私との時間、めいっぱい大切にしてくれる。

ここにいてもすぐ見つかっちゃうから、
サンジ君はコックさんの時間。
もう一度だけキスをして、
「また」
って、名残惜しそうに去っていく。
一日何回キスしても、
離れるときはそうなんだから。
バカね。
けど、そんな貴方だから幸せ。
安心して、いっぱい好きになれる。

サンジ君じゃなきゃ駄目だから。
だからサンジ君も、
そのままでこれからも、
傍にいて。
笑顔を向けて。
抱きしめていて。
好きでいて。
それだけでいいから。