好きって言われて、
好きって応えて、
これって、
つまり、
・・・・・・


両想い




しかも、ついさっきのこと。
どういうカオ、すればいいんだろう。
もう間もなく、
彼がデザートを持ってやってくる。
ああもう、どうしよう。
嬉しいわ、嬉しい、けど。
ドキドキしすぎて、
心臓が壊れそうなのよ。

もう、ビビ、何でいないのよ、こんなときに。
何してるのよ。
また、「Mr.ブシドー」と、会話?
いいじゃない、寝かせておきなさいよ。
私のピンチ、助けてよ、ビビ。

コン、コン。
2回、ノックの音。
午後3時を、少し過ぎた合図。

きっと片手にデザートを持って、
いつもより余計笑顔増して、
私の返事を待っているんだわ。

・・・なんて、言えばいいのよ。
今までなんて言ってたのか、思い出せない。
顔が上気して、赤くなるのがわかる。

「ナミさん?」
今日はいいわ、いらない。
もう十分よ、甘いものは十分。

カチャリ、と音がして、
ドアノブが回されて、
外の光が部屋に差し込んでくる。
—な、何で??
あ・・・鍵、閉め忘れてたっ
開いてから閉め忘れたことに気付いても、
もう遅いのは当然。
心配そうな顔をした彼が、
こちらを覗き込む。
真っ赤になってる私を直視されて、
すぐに目を逸らす。

「入って平気?」
ダメよ。
ダメに決まってるじゃない。
撤回するわ、前言撤回。
好きだなんて、冗談よ。
ほら・・・ノリとか、そういう。

コト。
お皿を、テーブルに置く音。
あなたの気配が近くなってくるのを、
空気が伝えてくれる。
ダメって、言ったじゃない。
・・・言って、ないけど。

言ってやらなきゃ。
冗談だって。

「サンジくっ・・・!!」
振り返ると、
もうあと数センチの距離に、
サンジ君の顔。
伸ばした両腕が、
私の首元にするりと回される。

何。

「照れてるナミさん、最高に可愛いな」
もっと、
ヘラヘラした顔で言いなさいよ。
それならいつもみたいに、
パンチだって飛ばせるのに。
何で、
そんな、
優しい顔で言うのよ。

息すら、出来なくなる。
冗談だなんて、とても、言えない。

距離が少し、狭まるのを感じて、
硬く目を閉じる。
力を入れすぎて震えてくる。
頬に、
温かな、
柔かい感触。
「緊張してンの?ナミさん」
小声でも十分すぎるくらい、
あなたの声が聞こえる距離。

するわよ。
緊張するわ。
何もかもが、初めてなんだから。

「おれも、してる」
「・・・ウソ」
「ホント」
首に回された腕、
そう言われれば、
少しだけ、
震えてる。

「・・・あはっ」
「ナニ、笑ってんの」
「らしくないじゃない、サンジ君。
いつもは、何かあればおれの胸に飛び込んで来い、
って言うくせに」
「いやァ・・・それは、サ」
腕が背中まで下りて、
さっきのみかん畑のときみたいに、
体がぴったりくっつく。
「本気で、大好きだから、いざとなると、
めちゃくちゃ緊張する」
そう言って、
また頬に優しく口付ける。
鼓動が早くなる。
「ナミさんはウソだって言うかもしれねェけど、
マジ恋愛は初めてで。けど・・・
最高に幸せにするから、おれのこと安心して好きになって」

・・・嬉しさに、顔が緩む。
涙腺も緩んじゃって、
こんなことで、
涙が出そうになる。
なんて、
単純なの、私。
そう、単純な女よ、私。
だからアンタのその言葉、
信じるわよ。

冗談だなんて、ウソだなんて言わないわ。
こうなったら、
とことんまでこのキモチ、育ててく。

・・・アンタのことが、
・・・サンジ君のことが。
好き。
・・・って、キモチ。