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二人で年越し♪
カタカタカタ・・・。 12月31日。夜中、あちこちの家から響くキーボードを打つ音。 それは、年賀メールを作り送っている音である。 年が明けるんだなぁ・・・と改めて実感させられる日である。
「あ、もうすぐ12時になるんだ・・・。」
パソコンに向かっていた北斗は、部屋の時計を見て軽く伸びをする。 織絵と圭介は、下の階で楽しそうにテレビを見ている。 そのテレビの音が微かに部屋の扉をすり抜けて入ってくる。
「みんな、下でテレビ見てきたら?本当は見たいんだろ?」
テレビの音にノっているデータウェポンを達を見て、北斗が誘いの言葉をかける。 その言葉を待っていたかのようにデータウェポン達は、嬉しそうな声を出して階下へ飛んでいった。 それを見て北斗が楽しそうに笑った。
「さてと・・・銀河に年賀メールでも送ってみるかな?」
年賀メールの存在を最近知った銀河に、年賀メールを送ろうと、北斗はキーボードに手を置く。 だが、北斗の手はそこから動かない。
「・・・なんて送ろうかな?」
いつも話したいことは話しているので、特に書くことが無い。 『今年もよろしく』だけだと味気無いし、ありがちなのは好きではなかった。
「う〜ん。何がいいかなぁ?」
しばらく考えたが思いつかない。無意識に腕組みをしてしまう。
12時直前に突然コンコンと、窓を叩く音がした。 北斗が、なるべく寒気を入れないように窓を開ける。 そこには、マフラーも手袋も身に付けていない銀河の姿があった。 自分の肩を抱いて、寒いのを我慢しながら笑顔を向ける。 銀河を中に招き入れ、窓を閉める。
「どうしたのさ?もう年が明けるのに。おばさんたちと一緒にいなくていいの?」 「ああ、母ちゃんたちなら年越しそばを作ってる。いいんだよ。何処で年明けたって。」
そう言いながら、銀河は北斗のパソコンを覗き込む。 北斗が慌てて覆い被さるようにパソコンを隠したが、既に遅かった。
「年賀メールねぇ?しかも俺に。」 「なんだよ、いいだろ?別に。」
ムッとしながら銀河に視線を送る。 その視線に意味が込められていることを感じ取った銀河は、
「どうかしたのか?」
と、優しく声をかけた。 気付いてくれたことが嬉しかったのか、北斗は銀河の肩に軽い拳を入れた。 それは日常のスキンシップであって、特に変わった行動ではない。 が、銀河は、北斗の何かが違うことを理解した。
「銀河への年賀メールに、なんて書こうか迷ってたんだよ。 こういう時に限って書きたいことが思いつかないから・・・。」
それを聞いて銀河が声を出して笑った。
「年賀メールってのは、直接いえない人に送るんだろ? 今ここに俺がいるんだから、別に送らなくったっていいじゃん。」 「あ、それもそっか。・・・もしかして銀河。僕んち来た理由ってそれ?」
図星だったかのように、銀河が苦笑した。北斗が嬉しそうなため息を吐く。
「でもいいや。ほら、12時だよ。」 「お、本当だ。北斗、明けましておめでとう。」 「銀河も・・・明けましておめでとう。」
くすぐったい挨拶が終わり、二人は向かい合って笑いあった。
「銀河と年越すなんて思ってなかったよ。」 「俺はそのつもりで来たんだけどな。」 「え・・・?」
銀河の言葉が心に伝わるのに時間がかかった。 理解した途端、北斗は顔を真っ赤に染めて俯いた。 そんな北斗の頭の後ろに手を当て、自分の方に引き寄せた。
「じゃ、来年も一緒に年、越そうぜ?」
こつん、と北斗の額と銀河の額がぶつかる。 赤面したまま、北斗は小声で
「うん・・・。」
と、一言返事をした。 銀河が北斗から手を離し、少し大人びた笑顔を見せた。
その笑顔を見る度に思うことが、北斗にはあった。
自分は、本当に銀河のことが好きなんだなぁ・・・と。
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新年に向けて書いた小説です。 製作時間は短いですが、ほのぼのになってますよね?? キスすらしないほのぼのって結構難しいかもしれません。
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